「勤労感謝の日」とは?意味や新嘗祭との関係、過ごし方や英語での表現の仕方について解説
2022/04/03
「勤労感謝の日」が祝日であることは、広く知られています。しかし、勤労感謝の日がどういう意味を持った日なのかを的確に説明できる人は少ないのではないでしょうか。
今回は、毎年11月23日に訪れる勤労感謝の日の意味や由来、子どもと楽しむ過ごし方や英語での表現の仕方など幅広く解説します。
勤労感謝の日はいつ?ハッピーマンデー制度の対象?
勤労感謝の日は、11月23日です。ハッピーマンデー制度(3連休以上の休みを増やすため、一部の国民の祝日を特定の月曜日に移動する制度)の対象ではないので、勤労感謝の日の日付が移動することはありません。
ちなみに、現在ハッピーマンデー制度の対象となっている祝日は、成人の日(1月第2月曜日)、スポーツの日(10月第2月曜日)、海の日(7月第3月曜日)、敬老の日(9月第3月曜日)の4つです。
勤労感謝の日とは?
勤労感謝の日は、支え合って生活している私たちが、お互いの働きやそれによって作り上げられたものに感謝をして過ごすための祝日です。
このことは勤労感謝の日の由来や歴史などを知ることで解釈できます。
勤労感謝の日の由来や歴史
1947(昭和22)に皇室祭祀令が廃止されるまで、11月23日は「新嘗祭(にいなめさい、しんじょうさい)」が行われる祭日として普及していました。しかし、翌年の1948(昭和23)年に「国民の祝日に関する法律」が制定されたことで、11月23日には「勤労感謝の日」という新しい名前が与えられました。
国民の祝日に関する法律では、勤労感謝の日について「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう。」と定めています。
また、昭和23年に参議院文化委員会が報告した「祝祭日の改正に関する調査報告書」では、勤労感謝の日の「感謝」について次のように説明しています。
「国民が毎日生活を続けていられるのは、お互いがお互いを助け合っているからである。従って、ここにいう感謝というのは、すべての人がすべての生産とすべての働きとに感謝し合うのでなければならない。この感謝の心もちは、今日のような世相のけわしい時には最も必要なものであるが、世の中が落ち着いた時にも常に大切なものである」
国民の祝日に関する法律や祝祭日の改正に関する調査報告書の内容をふまえて考えると、勤労感謝の日は、支え合って生活している私たちがお互いの働きやそれによって作り上げられたものに感謝をして過ごす日だということがわかります。
勤労感謝の日と新嘗祭
勤労感謝の日である11月23日がもともとは新嘗祭の祭日であったことは前述のとおりです。それでは新嘗祭とはどのようなお祭りだったのでしょうか?
実は、新嘗祭は現在も毎年行われている宮中祭祀のひとつ。新嘗祭では稲の収穫やその他の穀物の実りを祝って感謝する儀式が行われ、天皇は新しい穀物を天地の神々に献上するとともに自らも新穀を召し上がります。新嘗祭は日本最古の歴史書『古事記』にも記されている、最も大切な宮中祭祀です。
新嘗祭の「新」の字は「新しい穀物」を、「嘗」の字は「お召し上がりいただく」ことを意味しています。新嘗祭は宮中祭祀としてだけでなく、11月23日に全国の神社でも行われます。
勤労感謝の日とアメリカの祝日
勤労感謝の日に似た祝日がアメリカにもあります。その2つを紹介しましょう。
Labor Day
「労働者の日」と訳されるアメリカの「Labor Day」は、9月の第1日曜日です。1894年、連邦政府によって労働者を称える祝日として定められました。Labor Dayには毎年労働者を称えるパレードや演説が行われます。アメリカの多くの子どもたちは、Labor Dayの翌日が新しい学年の始まりとなります。
Thanksgiving Day
「感謝祭」と訳されるアメリカの「Thanksgiving Day」は、11月の第4木曜日です。ヨーロッパからの開拓者がアメリカ大陸に渡り、初めての収穫を神に感謝して、七面鳥や鹿肉などを食べたことが始まりです。Thanksgiving Dayは1789年から祝日に制定され、日付は何度か変更されましたが、1941年に今の11月第4木曜日となりました。
勤労感謝の日は英語で何という?
日本の勤労感謝の日は、アメリカにおけるLabor DayとThanksgiving Dayの2つの意味を兼ね備えた祝日です。
そのため、勤労感謝の日は英語で「Labor Thanksgiving Day」と表現します。
勤労感謝の日を子どもに伝えるなら
勤労感謝の日を子どもに伝えるなら、このように表現するとよいでしょう。
「毎日楽しく生活できるのは世の中のみんなが支え合っているからなんだよ。おいしい食事が食べられるのは、お米や野菜などを作る人、お店に届ける人、買って料理をする人、いろんな人が協力して働いているからなんだよ。勤労感謝の日には、働く人みんなに感謝しようね。」
勤労感謝の日に家族に贈るプレゼント
社会はみんなが助け合うことで成り立っていますが、これは家族でも同じことがいえます。勤労感謝の日には、お互いの働きに感謝してちょっとした贈り物ができれば素敵ですね。とはいえ、そんなに高価なものを贈る必要はないでしょう。気持ちを伝えるためのものなので、手作りのものや、お互いの仕事で使える小物などを準備するのがおすすめです。
夫婦間で贈るプレゼント
身に付けるものであれば、ネクタイやネクタイピン、スカーフ、ハンカチなどが高価になり過ぎず贈りやすいでしょう。仕事中に使える質のよいボールペンや名刺入れ、家事に役立つ小物やエプロンなどもよいかもしれません。仕事中にふと目に入って頑張ろうと思えたり、気持ちが和んだりするものがよいですね。
また、勤労感謝の日にはお互いの好きな料理を作ったり、少し奮発して外食に出かけるのもよいでしょう。
子どもから家族へのプレゼント
勤労感謝の日の意味を知った子どもは、感謝の気持ちを伝えたいと思うかもしれません。そのときは、働いている両親の姿や、日頃からお世話になっている祖父母や地域の方、習い事の先生などの姿を絵に描いて贈るように提案してみましょう。
また、字が書けるのならメッセージを添えたり、簡単な手紙を用意するのもよいでしょう。感謝の気持ちを伝えるにはどういう手段があるのか、子どもの発達段階にあわせて提案し、一緒に考えることが大切です。
勤労感謝の日に家族で楽しみたい食べ物
ここからは、勤労感謝の日に家族で楽しみたい食べ物を、新嘗祭の「ご神饌(しんせん)」にちなんで紹介します。ご神饌とは、お祭りなどで神様にお供えする食事のこと。ご神饌のお下がりをお祭りの参列者がいただくことを「神人共食(しんじんきょうしょく)」といい、神と人との結びつきを強めるための儀礼として古くから行われてきました。
新嘗祭のご神饌には、その年に取れた新米や秋に収穫される魚や野菜、果物など10品目以上の食べ物が選ばれます。ご神饌に選ばれる食べ物は栄養価の高いものが多いので、ぜひ勤労感謝の日の食事に取り入れてみましょう。
お米
新嘗祭にまつわる習わしのひとつに、「新嘗祭までは新米を食べるのを慎む」というものがあります。そこで、11月23日にはその年初めての新米を食べるのはいかがでしょうか?みずみずしさと豊かな香りが魅力の新米を家族でゆっくり味わってみましょう。
また、11月23日は一般社団法人赤飯文化啓発協会が定めた「お赤飯の日」でもあります。赤飯はビタミンBを豊富に含むため、仕事の疲れを癒すという意味でも、勤労感謝の日にぴったりの食事といえるでしょう。
旬の魚
勤労感謝の日には、秋が旬の魚を食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか?
鯛には旬が2回あり、春の鯛は「桜鯛」、秋の鯛は「紅葉鯛」と呼ばれます。紅葉鯛は脂ののりがよいのが特徴なので、お刺身やしゃぶしゃぶにすると上品なおいしさが際立つでしょう。
また、「秋鮭」と呼ばれる秋冬の産卵期のあたりで取れる鮭は、脂が少なめであるかわりに旨みとコクがつまっています。バターを使ったムニエルやホイル焼きにすれば子どもも喜ぶでしょう。
旬の野菜、果物
秋から冬にかけて旬が訪れる大根や、柿、栗などを取り入れるのもよいでしょう。
食べ物の消化を助ける酵素が豊富な大根は、煮物にしたり大根おろしにしたり、いろいろな楽しみ方ができます。
また、柿や栗は栄養価が高くビタミンやミネラル、植物繊維が豊富です。柿は食後のデザートに、栗はオーブンで素焼きにしたり栗ご飯にしたりして楽しみましょう。
勤労感謝の日は何をする?子どもと楽しむ過ごし方
勤労感謝の日を子どもと楽しむにはどのような過ごし方があるでしょうか?親子で楽しく感謝の心を学ぶためのおすすめの方法を2つ紹介します。
お父さんやお母さんへのプレゼントを製作する
お父さんやお母さんへ手作りのプレゼントを製作してみましょう。感謝の気持ちを込めて働いている姿を絵に描いたり、手紙を書いたり、発達段階に応じて提案するとよいでしょう。
気持ちを込めて製作するためには、お父さんやお母さんが日頃どのように働いているのかを知ることがとても大切です。普段の仕事内容を、子どもにわかるように具体的に説明してあげることで、子どもは自然と「ありがとう」の気持ちが湧いてくるでしょう。
食べ物や生産者に感謝してルーツをたどる
その日の食卓にあがった食材のルーツをたどってみるのもよいでしょう。食材が料理に生まれ変わるまでには、生産者や配送者、販売者、調理者などの多くの人の手に渡っています。その一人ひとりが自分の務めを果たして働いたからこそ、おいしい料理をいただくことができるのです。
このことは料理だけでなく、洋服やおもちゃなど全ての物にいえるでしょう。子どもど一緒に身の回りの物のルーツをたどっていくことで、社会の成り立ちについて学びながら感謝の心を育むことができます。
まとめ
新嘗祭は、『古事記』にものっているほど古くから行われてきた伝統あるお祭りです。新嘗祭が行われた11月23日は、戦後に勤労感謝の日として生まれ変わりました。
社会も家族もお互いが助け合っているからこそ成り立っています。勤労感謝の日には、支え合う人々の働きや、それによって利用することができる身の回りにあるさまざまなものに対して、感謝の心を忘れずに過ごしたいですね。