春分の日とは?2022年はいつ?決め方は?旬の食べ物・慣習まで解説
2021/11/16
「春分の日」は、日本の国民の祝日の一つ。
2021年の春分の日は3月20日、2022年は3月21日です。
春分とは、昼と夜の時間の長さがほぼ同じになる日のこと。またこの日を境に夜よりも昼の時間が長くなっていきます。
そして、春分の日の前後3日を合わせた7日間を「お彼岸」と呼び、先祖のお墓参りをする風習があります。
今回の記事では、「春分の日ってなに?」「春分の日はどのように決められるの?」といった疑問にお答えするだけでなく、「秋分の日」との関係性や、旬の食べ物・慣習、さらには、海外での春分についてもご紹介します。
春分の日とは?いつ?
春分の日とは、国民の祝日の一つで、昼と夜の時間の長さがほぼ同じになる日です。
日本では、太陽が春分点を通過する日「春分日(しゅんぶんび)」を春分の日として祝日とすることが、国民の祝日に関する法律(通称、祝日法)において定められています。
春分日は国立天文台の観測に基づくため、春分の日は、毎年、3月20日~21日頃と、決まった日ではありません。なお、春分の日が日曜日の場合は、翌日の月曜日が振替休日となります。
国立天文台の発表によると、2020年~2022年の春分の日は以下のようになっています。
2020年3月20日(金)
2021年3月20日(土)
2022年3月21日(月)
春分の日の意味とその由来
日本の祝日法において、春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」と定められています。
また春分は、1年を24の季節に区切った二十四節気の4番目にあたり、生き物が冬眠から目覚め、草木や花が芽吹きはじめる季節のはじまりの日。自然や生き物の尊さを確認しながら、春の訪れを楽しむ日といえます。
この日は1948年に「春分の日」と改称されるまで、「春季皇霊祭(しゅんきこうれいさい)」という祭日でした。「春季皇霊祭」は、天皇や皇族の霊を祭る儀式で、現在も「春分の日」に行われています。
昼と夜の長さがほぼ等しい日
春分の日には、太陽が真東から昇って真西に沈むため、昼と夜の長さがほぼ同じ になります。
そして、この日を境に、夏至に向けて、昼の時間が夜の時間よりも長くなっていきます。
しかし、厳密にいうと、春分の日であっても、実際には昼の時間の方が少しだけ長くなっています。観測する緯度によっても異なりますが、日本では、毎年、10数分程度の誤差が生じています。
これは、太陽の上辺が視える地平線または水平線に一致する時刻を、日の出・日の入りの時刻と定義されていることから。つまり、昼の時間は「日の出から日の入りまで」と考えられているためなのです。
日の出は、太陽が地平線(水平線)から少しでも出てきた瞬間のこと、日の入りは、太陽が完全に地平線(水平線)に沈みきった瞬間のことをいいます。そのため、太陽1個分の大きさだけ、昼の時間の方が長くなっているのです。
また、地球には、大気があります。その大気の中を通る光の屈折によって、地平線上の太陽が少し浮き上がって見える現象が起こります。その分、日の出は早く、日の入りは遅く見えることも、昼の時間方が長いことの理由の一つであるといえます。
前後3日は「春彼岸」
春分の日とその前後3日は「お彼岸」として、お墓参りをして先祖を供養する日でもあります。
お彼岸は、1年に2回、春と秋にあり、それぞれ「春彼岸(はるひがん)」「秋彼岸(あきひがん)」と呼びます。春分の日と秋分の日がお彼岸の中日(ちゅうにち)にあたり、その前後3日を合わせた計7日間がお彼岸の期間です。
では、なぜ春分の日と秋分の日がお彼岸と呼ばれるのでしょうか。
「彼岸」とは、祖先がいる極楽浄土(あの世)のことを指しています。そして、私たちが生きている世界(この世)を「此岸(しがん)」と言います。
仏教では、彼岸は西の方角、此岸は東の方角に位置すると考えられています。春分の日と秋分の日は、太陽が真東から昇り真西に沈みます。そのため、彼岸と此岸が最も通じやすい日と考えられているのです。
「春分の日」を英語で言うと?
春分の日は、英語で“Spring Equinox Day”もしくは“Vernal Equinox Day”と言います。
“equinox”とは昼と夜の長さがほぼ等しくなるときのこと、つまり春分・秋分を指す言葉です。これに“spring(春)”や“vernal(春の)”という単語をつけると「春分」という意味になります。
ただし、海外には「春分の日」と呼ばれる祝日はありません。そのため、単に“The first day of Spring(春の最初の日)“と表現されることが多いようです。
春分の日と秋分の日の関係性
春分の日とあわせて覚えておきたいのが、「秋分の日」です。
秋分の日は、春分の日と同じく、昼と夜の時間の長さがほぼ等しい日のこと。太陽が秋分点を通過する「秋分日」が採用されており、例年、9月23日頃となっています。
この日から冬至へ向かってだんだんと夜の時間が長くなっていきます。また、秋のお彼岸の中日であることから、「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ日」として国民の祝日に関する法律(祝日法)にも定められています。
どちらも「二十四節気」の一つ
春分と秋分は、どちらも「二十四節気」の一つです。二十四節気とは、古くから中国で使われている暦で、1年を「春」「夏」「秋」「冬」の四つの季節に分け、さらにそれを6分割し、計24等分したものです。
立春から始まる二十四節気のなかで、春分はその4番目、秋分は16番目にあたります。
春分点と秋分点
天文学的にも「春分の日」と「秋分の日」は密接にかかわっています。
春分の日(春分日)とは、太陽が「春分点」と呼ばれるポイントを通過する瞬間を含む日のことです。
皆さんご存じの通り、地球は、太陽の周りを1年かけて1周しています(これを公転といいます)。地球から起点に太陽を見ると、あたかも太陽が星々の間を移動しているように見えます。その太陽の通り道のことを「黄道(こうどう)」と呼びます。
一方で、地球の赤道を天まで伸ばした円を「天の赤道」と呼びます。この黄道と天の赤道が交わる2つのポイントが、すなわち「春分点」と「秋分点」です。
図:春分点と秋分点
地球が太陽の周りを1周まわるのにかかる日数は、じつは365日ちょうどではなく、数時間のずれがあります。
そのため、太陽が春分点を通過する瞬間も、毎年、少しずつタイミングがずれます。たとえば、2021年の春分の瞬間は3月20日18時37分でした。2022年は3月21日0時33分です。
このように、春分の日はその年ごとに、その日にちが変わることになるのです。
地球の動きと太陽の関係で春分・夏至・秋分・冬至を理解
二十四節気の中で、「春分」「秋分」「夏至」「冬至」の4つの季節のことを「二至二分(にしにぶん)」と言います。これは、夏至・冬至の「二至」と、春分・秋分の「二分」を合わせた言葉です。
夏至は、例年6月21日頃、北半球において昼の時間が最も長くなる日です。
そして冬至は、例年12月22日頃、北半球において昼の時間が最も短くなる日です。
これには、地球の地軸(自転軸)の傾きが関係しています。
図:地球と太陽の関係性から見た春分・夏至・秋分・冬至
地球の地軸は、地球の公転軸に対してやや傾いた状態で太陽の周りをまわっています。夏至になると、地球の北極側が太陽の方向に最も傾いた状態になるため、日本を含む北半球では日照時間が最も長くなります。一方で、冬至になると、地球の南極側が太陽に向けて最も傾いた状態になります。そのため、北半球では日照時間が最も短くなるのです。
さらに、春分と秋分は、地軸の傾きが太陽に対して平行になります。そのため、昼と夜の時間の長さがほぼ同じになります。
図:日本から見た春分・夏至・秋分・冬至
日本から見ると、夏至の日に太陽が最も高く見え、冬至の日には太陽が最も低く見えます。
このように地球の動きによって太陽との関係性が変わることから、季節が移り変わってゆくのです。
秋分の日と春分の日の日の長さは違う?
「春分の日」と「秋分の日」の昼と夜の長さは、ほぼ同じになります。
以下の表は、2021年の「春分の日」と「秋分の日」の日の出、日の入りを比較したものです。
春分の日と秋分の日はなぜ祝日?
春分の日と秋分の日は、国民の祝日です。しかし、夏至や冬至は、国民の祝日ではありません。
これには歴史的な背景があります。
日本では、春分の日と秋分の日には、明治時代から「皇霊祭(こうれいさい)」という宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)が行われ、現在も続いています。
皇霊祭とは、歴代の天皇や皇族の霊を祭る儀式で、お彼岸に由来するものです。そして当時の法令「休日ニ関スル件」により、「春季(しゅんき)皇霊祭」「秋季(しゅうき)皇霊祭」として、戦前までは祭日に定められていました。
それから戦後、1948年に「国民の祝日に関する法律」が制定された際に、「春分の日」「秋分の日」という名前に改称され、現在も国民の祝日として残っているのです。
一方で、夏至や冬至が祝日ではないのは、歴史的に重要な出来事や儀式がなかったためと考えられます。
春分の日の食べ物「ぼたもち」。 「おはぎ」との違いは?
春分の日に食べるものと言えば、ぼたもち。
古くから、赤い色の小豆には邪気を払う力があると考えられてきたため、お彼岸のお供え物のお菓子として用いられるようになりました。
似たものに「おはぎ」がありますが、その違いをご存じでしょうか。
じつはこれらは、ほぼ同じもの。春分の日に食べるものを「ぼたもち」、秋分の日に食べるものを「おはぎ」と言います。その名の違いは、それぞれ季節の花に由来して、春の花「牡丹」になぞらえて「ぼたもち」、秋の花「萩」になぞらえて「おはぎ」と名付けられたそうです。さらに、夏は「夜船(よふね)」、冬は「北窓(きたまど)」とその呼び名が変化します。
また、ぼたもちは「こしあん」、おはぎは「つぶあん」で作るという違いもあります。その理由は小豆は秋に収穫されるため、春には小豆の皮が硬くなってしまうことから、皮を取り除いてつぶしたこしあんを、ぼたもちには使います。
春分の日の頃に旬を迎える食べ物は?
つくし
春になると、川原の土手や野原に顔を出すつくし。
これはスギナという雑草の一種の胞子茎(ほうしけい)で、先端の筆のような部分に胞子があります。
最近では実際に食べる機会が少ないという方も多いかもしれませんが、食用も可能です。味はすこし苦みがありますが、春を感じられる食材。お浸しや佃煮、きんぴら、天ぷらなど、いろいろな楽しみ方があります。小さなお子さんには、苦みがまろやかになる卵とじがおすすめです。
はっさく
はっさく(八朔)は、広島県の因島で生まれたミカン科の柑橘類。
パリッとした食感と、すっきりとした酸味、ほのかな苦みが特徴の果物です。
12~2月頃に収穫した後、酸味を落ち着かせるため1~2ヵ月ほど寝かせてから出荷されます。つまり春分の日のある3月はちょうど食べごろ。免疫力を高めるビタミンCが含まれているので、風邪を引きやすい季節の変わり目にぴったりです。
真鯛(桜鯛)
春の風物詩といわれる桜鯛。
桜の咲く季節になると、真鯛は産卵のため浅瀬へと集まります。そしてこの頃に獲れる真鯛を「桜鯛」と呼びます。この季節、産卵を控えた雌鯛は鮮やかな桜色に色づき、雄鯛には花びらのような斑点が現れることから、こうした呼び名が付けられたという説もあります。
真鯛は縁起物の魚として、お祝いごとには欠かせない食材です。代表的な刺身や塩焼きのほか、鯛めしやアクアパッツァにもおすすめ。クセのない淡白な味わいなので、和洋中どのような料理にも合います。
春分の候とは?いつまで使える?
「春分の候(こう)」とは、手紙などで使われる時候の挨拶。
「桜が咲きはじめ、暖かい陽気を感じられる季節」といった意味で、ビジネスや目上の方への手紙で使われる、あらたまった丁寧な言葉です。
この挨拶は、二十四節気の「春分」にあたる季節にのみ使用することができます。年によって変わりますが、毎年3月20日頃(春分の日)~4月3日頃(清明の前日)となります。
おおむね3月下旬の挨拶と覚えておけば良いでしょう。
例文
・春分の候、貴社におかれましては、ますますご発展のこととお慶び申し上げます。
・春分の候、皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
春分の日にはお墓参りをしよう
春分の日は、お彼岸の中日です。お彼岸にすることといえば、お墓参り。「暑さも寒さも彼岸まで」という言葉もあるように、過ごしやすい気候になるため、お墓参りにも最適です。遠方でお墓参りに行くのが難しい場合は、仏壇にお祈りしましょう。大切なのは、先祖や故人に思いを馳せることです。
子どもと楽しむ春分の日の過ごし方
せっかくの祝日、家族でゆっくり過ごしたいと考える方が多いのではないでしょうか。ここでは、お子さんと一緒に楽しめる「春分の日の過ごし方」をご提案します。
ぼたもちづくり
材料2つで簡単!ぼたもち
子どもと一緒に、ぼたもちづくりにチャレンジしてみましょう。
もち米を炊き、あんこで包み込めばできあがるシンプルなお菓子です。
完成したら、お供え物として仏壇にそなえ、冷めてからいただきましょう。
ピクニック
自家製のぼたもちを持って、ピクニックに行きましょう!
春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」ですから、お子さんと一緒に春の草花を探してみるのはいかがでしょうか。ぜひ、夕飯の食卓用につくしを採ってみてください。
旬の食材を楽しむ
夕飯には、春分の日ならではの春の旬の食材をいただきましょう。
たとえばちょっぴり苦味のあるつくしも、自分で採ったものであれば、お子さんも喜んで食べてくれるかも。
また、桜鯛を使った一品があれば、食卓が一気に華やかになりますよ。
海外での春分は?
ここまで日本での春分についてご紹介してきましたが、続いては海外での春分についてもご紹介します。
メキシコ「チチェンイッツァ遺跡」での春分
メキシコの「チチェンイッツァ遺跡」は、毎年、春分と秋分の日に起こる「ククルカンの降臨現象」で有名な遺跡です。チチェンイッツァとは、世界遺産にも登録されているマヤ文明の遺跡のこと。そして、ククルカンとは羽を持つヘビの姿をした古代マヤの最高神です。
春分の日と秋分の日、太陽が真西に沈むとき、チチェンイッツァにある巨大ピラミッドの階段が夕陽に照らされると、その影がまるで蛇のように見えるのです。これが、ククルカンが天から舞い降りる瞬間とされています。毎年この現象を見るために、世界中から多くの人が集まります。
イランの新年「ノウルーズ」
春分の日は、イラン暦の新年にあたります。新年は「ノウルーズ」と呼ばれています。ペルシャ語でノウは「新しい」、ルーズは「日」を意味します。イランでは、新年のお祝いは13日間続き、13日目には家族そろってピクニックにでかけます。
じつは、イランのお正月には、日本との共通点が多くあります。たとえば、年末には新年を気持ちよく迎えるために大掃除をして、新年になると正月飾りを飾り、親戚みんなで集まるといったように。また、年賀状やお年玉といった文化もあります。
キリスト教の春のお祭り「イースター」
春分の日の後、最初の満月を迎えた日の次の日曜日が「イースター」です。
日本語では「復活祭」と呼ばれるこの日は、イエス・キリストの復活を祝う日であると同時に、春の訪れを祝うお祭りでもあります。
キリスト教にとって、クリスマスと並ぶ重要な行事であり、アメリカやイギリスをはじめとする多くの国で盛大に祝われます。
イースターのシンボル「イースターエッグ」が有名ですが、これは卵は新しい命が生まれることから、生命や復活の象徴とされています。
ヒンドゥー教の春のお祭り「ホーリー祭」
ヒンドゥー教には、春の訪れを祝うお祭り「ホーリー」があります。インドやネパールにおいて、春分の日の後の、最初の満月の日に行われます。
ホーリーでは、カラフルな色の粉や水をみんなで掛け合います。もとは豊作祈願のお祭りでしたが、その後、悪魔払いの伝説などが混ざり合い、現在のような形のお祭りになったようです。
まとめ
春分の日は、冬の厳しい寒さに終わりを告げ、暖かな春が本格化するとき。その由来や慣習を知ることで、より有意義な一日を過ごせるはずです。
ご先祖に思いを馳せつつ、大切な人とともに春の訪れを楽しみましょう。