「お母さんたちは、もっと自分を大切にしてもいいと思うんです」斎藤工さんの今やりたいこと

2023/03/11

俳優/映画監督の斎藤工さんが『サンキュ!』に初登場。主演映画「零落」では、新作が描けずに空虚な毎日を送る漫画家・深澤薫を演じている斎藤さんに、"自己肯定感の高め方"や"やめてよかったこと"、"子育て中のママたちに思うこと"をうかがいました。

<プロフィール>
斎藤工さん
さいとう・たくみ/1981年生まれ、東京都出身。最近の出演作は映画「シン・ウルトラマン」(樋口真嗣監督)、「イチケイのカラス」(田中亮監督)、「THE LEGEND & BUTTERFLY」(大友啓史監督)など。監督最新作「スイート・マイホーム」も公開予定。

映画では、自己肯定感が超低い漫画家を演じます(笑)

僕は、今回の映画で演じている深澤に似てダークで孤独な面があって。例えば今日も、この撮影では皆さんに優しい言葉をかけてもらいながら、春風が吹いているような素敵な写真を撮っていただきましたけど、取材が終わってひとりで家に帰るときは、死んだ魚のような目をしています(笑)。そういう光と影のような二面性はどんな人にもありますよね。理想の自分と本当の自分の間を行ったり来たりしているような。でもひとりでいることが悪いわけではなくて、例えば友人にしても多ければいいというわけではないと思うんです。本当に心を通わせられる人は数人でいい。理想の自分ばかりを追求して本当の自分から乖離していかないようにというのは、いつも気を付けていることです。
今はSNSのせいもあって、みんな背伸びしてしまいがちになるんですけど、理想の自分と本当の自分の間に隙間を極力作らないことが、自己肯定感を高めてくれるんじゃないでしょうか。

僕がやめたのは「見栄」ですね。「素」こそが最大の魅力だと気づきました。

斎藤さんが「零落」で演じた主人公・深澤は、自己を肯定できず、漫画家として評価されることで自分を保って生きてきた男。斎藤さんは「深澤が感じている生きづらさは多くの人の中にもあるでしょうし、僕にもあります」と語ります。「深澤の生き様を通して、観る方も自分と向き合うことになる、それが本来の映画の意味なんじゃないかと考えています。普通は人に見せない感情をさらけ出したことで、伝えられるものがあると感じています」。
取り繕わない感情を映画の中で表現した斎藤さんが"やめてよかったこと"は、「見栄を張ること」。「僕は映画監督もやっているんですけど、子役の方のオーディションをやったときに思ったんです。自分の番が終わって、素に戻った瞬間、そこで初めてその子の本当の魅力が見えるな、と。それは大人も同じで、どうしても人前では背伸びをしてしまうんですけど、それを続けていると疲れてしまって、いつかバランスを崩してしまうなと思います。虚勢を張って生きていると自分が少しずつ削られていきますよね。だから僕はそれをしないようにしています」。優しい瞳でそう語る斎藤さんは、ふと思い出したように話を続けます。

「そういえば、以前、雨の日に駅のホームで電車を待っていたら、ベビーカーを押したお母さんが隣にいらして。びっくりするほどびしょびしょに濡れていたんです。電車に乗り込んだときその理由がわかりました。ベビーカーの中にいる赤ちゃんは全く濡れていなくて、赤ちゃんを守ることに全力を傾けていたから、ご自分のことは構っていなかったんです。きっとそれは人の目を意識してやったことではなくて、呼吸をするように当たり前にやっていた。そういう美しさがありました。優先順位が自分ではなくって、誰かのために無心に何かをする、そのときの素の姿ってすごい魅力があるんですよね」。

お母さんたちは、もっと自分を大事にしていいと思うんです。

「僕には今やりたいことがあって、世のお母さんお父さんが一時、育児を忘れて自分が楽しむために映画館で映画を観られるように、映画館に託児所を造りたいと思っているんです。
日本では、子どもが生まれたら映画をひとりで観に行くこともほぼなくなりますよね。でもたまには夫婦だけでデートをしたり、自分が主役になれる時間を持ってほしいです。子どもが全てになり過ぎることって、逆に子どもにとってのプレッシャーになるんじゃないかなとも思っていて。のびのびと自分の人生を楽しんでいる親の姿が見られることって、子どもには嬉しいことなんじゃないでしょうか。
親が楽しんで生きている姿を子どもが見て、その子も人生を楽しめるようになる、そんな愛のある循環が生まれるお手伝いを少しでもできたら、と願っています。お母さんたち、ご自身の時間も楽しんでくださいね」。

世のママたちへのあふれる想いを熱く語り、軽やかな春風のようにその場を去った斎藤さんでした。

「零落」

3月17日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
製作幹事・配給:日活/ハピネットファントム・スタジオ出演: 斎藤工 趣里 MEGUMI 玉城ティナ/安達祐実

(C)2023浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会

8年間の連載が終了した漫画家・深澤薫は自堕落で窮屈した空虚な毎日を過ごしていた。多忙な漫画編集者の妻ともすれ違い、売れ線狙いの漫画業界にもSNSに書かれる辛辣なコメントにも嫌気が差した深澤は夜の街をさまよい、昔好きだった女性によく似た目をした風俗嬢のちふゆに出会うが――。

参照:『サンキュ!』2023年4月号「斎藤工さん、『やめてよかったもの』って何ですか?」より。掲載している情報は2023年2月現在のものです。撮影/天野良子 スタイリスト/三田真一(人物)、檀上曜(静物) ヘア・メイク/赤塚修二 取材・文/藤坂美樹 編集/サンキュ!編集部

 
 

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