ママ記者がプロに聞いた!「教育格差」が解消されないのはなぜ?
2023/05/12
親世代の頃からどんどん変化する学校教育、ついていけていますか?今どきの教育・進学事情や新しい用語を、専門家にインタビュー取材します。教育機会の不平等が「貧困の連鎖」を引き起こす……教育格差について教えてもらいました。
<教えてくれた人>
「学び」のスペシャリスト 木村治生さん
ベネッセ教育総合研究所主席研究員。専門は教育社会学。東京大学社会科学研究所客員教授などを歴任し、文部科学省、経済産業省、総務省の委託研究にも携わる。
ジャーナリスト 宮本さおりさん
夫の米国留学で新聞記者から専業主婦に。帰国後、子育て・教育分野を中心に執筆。『データサイエンスが求める新しい数学力』(日本実業出版社)著者。大学生と小学生の母。
Q 「教育格差」が解消されないのはなぜ?
A 家庭が持つ文化の違いによる教育機会の不平等が「貧困の連鎖」を引き起こすから。
教育格差とは、生まれた家や地域によって、受ける教育に差が出ることです。分かりやすいのは家庭の経済力による格差ですが、家庭が持つ文化の違いによっても教育格差は生まれます。フランスの社会学者ピエール・ブルデューは、それを「文化資本」と名付け、中流階級以上の家庭で育った子どもは、学習を重視する文化資本を親から受け継ぎ、教育機会に恵まれやすいと説きました。
また、地域による格差も存在します。例えば塾や予備校といった教育サービスが都市部に集中していることや、住んでいる自治体によって子育て支援の程度が違うことなどがこれに当たります。インターネットの普及で、全国どこにいても塾や予備校と同等の教育を受けられるサービスが出てきたり、国が幼児教育の無償化に向けて動き出すなど、地域的· 経済的な格差は解消の兆しもありますが、家庭による文化の格差は依然として課題です。
江戸時代のように「士農工商」の身分が固定されている社会では、努力しようという気持ちが生まれにくくなります。それと同様に教育格差が広がり、貧困の連鎖が続くと、「頑張っても報われない」という閉塞感によって社会全体の成長が止まってしまうことが考えられます。
金銭的な支援だけではなぜダメなの?
児童養護施設で育った子が大学に進学する際、奨学金を与える自治体が出てきました。このような金銭的支援により平等な機会を与えることは可能になりつつあります。しかし、生育環境によっては、そもそも進学に対するメリットを感じられなかったり、塾や予備校に通うなどの大学受験のための準備が難しかったりもします。自分の将来を考える時間や学習支援の場を設けるなど、金銭面以外にも配慮する必要があるのです。(木村さん)
教育格差を乗り越えるために親ができることは?
文部科学省の調査によると、不利な環境でも成果を上げている家庭の特徴は、朝食を必ず食べるなど生活習慣を整えていること。「なんのために学ぶのか」を親子で考える機会を持ったり、読書の機会が多いなど、学習への動機付けをしていることでした。また、塾で勉強した時間よりも、家庭学習の時間の方が成績と比例することも分かっており、お金をかける以外にも親ができることは多いといえます。(木村さん)
親の経済力で子どもの教育環境は大きく変わる
年収による教育費の差(小4~6年生、子ども1人あたりの月額)
※ 東京大学社会科学研究所·ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」2021年実施。
※調査は小1~高3の親子1万3,383名に実施。図ではこのうち、小4~6年生の保護者(3,823名)の回答結果を示した。
参照:『サンキュ!』2023年5月号「今どきの教育事情どうなってるの?」より。掲載している情報は2023年3月現在のものです。プロップ制作/川村ちゃん 取材・文/宮本さおり 編集/サンキュ!編集部