悲しい少年が一人で座っています。

【専門家取材】子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親がするべきことは?

2019/12/04

ピカピカのランドセルを背負って、毎日楽しそうに学校に通っていたはずなのに、いつしか「学校に行きたくない」と言い出したり、何だか子どもの様子がおかしいな、と気になることはありませんか?そのような子どもから発せられるシグナルにいじめなど、不登校につながる要因があることも少なくありません。

「学校に行きたくない」と言う子どもにどのように声かけや対応をすればよいか、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーとして長年、教育現場で活動を続けている新行内勝善(しんぎょううち かつよし)さんにお話をお伺いしました。
(取材・文/みらいハウス 福井良子)

■新行内勝善氏プロフィール
NPO東京メンタルヘルス・スクエア カウンセリングセンター長
東京・神奈川・千葉の小中高にてスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとして、子どもたちとその家庭の支援に関わる。メンタルの側面と家庭環境の側面と双方からのアプローチを通して、ひとりひとりの子どもが本来持っている力を発揮していくことができるように支援している。また、近年子どもたちの相談手段として急速に広まってきているLINEなどを使ったSNSでの相談対応や、SNS相談員の育成にも精力的に携わっている。公認心理師、精神保健福祉士、ハラスメント防止コンサルタント、森林セラピスト。

今の子どもたちを取り巻く環境とは?

学校に行く少年と母は見送り
※画像はイメージです
takasuu/gettyimages

――長期休暇明けに不登校が増加することについては、近年広く知られるようになっていますが、実際この時期の子どもたちの心境はどのようなものなのでしょうか。

【新行内氏(以下、新行内)】夏休み明けをはじめとした新学期、クラス替えの時期などは、新しい環境になるという点で子どもたちがストレスを抱えやすい時期だと考えられています。

そのほか、環境が大きく変わるという意味では、小学校から中学校への進学時もあります。小学校では担任がクラスの生徒を個別に手厚くケアできていたところから、中学校では教科専任制となり担任との関わりはホームルームが中心となる。そのような意味では小学校に比べ中学校はどうしても担任が生徒個々人に手をかけることがむずかしく、関係が希薄になってしまいがちで、さらに思春期という時期にも差しかかってくるので、いっそう悩みごとが深刻になり、劣等感などを抱えやすくなる子が多いように見受けられます。


――子どもの様子がいつもと違うな、と感じたとき、親はどのような関わり方をするのが望ましいのでしょうか。

【新行内】まず、小学校低学年のお子さんであれば、まだ気持ちをうまく言語化できないので「おなかがいたい」「頭が痛い」「気持ちが悪い」などの体の異変を訴えてくることが多いです。そう言われて体温を測っても熱はないということもしばしば。そのようなエピソードはよく親御さんからも聞かれます。

大人でも核心に迫る悩みごとはなかなか他人には言いづらいですよね。たわいないことはペラペラと話せるけど、心底悩んでいることやつらいことは言い出しづらいというのは、子どもでも同様です。ふだんの生活の中でも、怒りっぽくなったり、忘れ物が多くなったり、ボーっとしている時間が増えたりなど、よく見ていないと気づきづらいかもしれませんが、いつもと何か様子が違うなと感じたら、慎重に見ていくことが大切です。


――子どもが不登校になる背景には、いじめが原因という場合が多いのでしょうか。

【新行内】いじめに遭っているという要因も大きいですが、必ずしもそうではなく、発達やパーソナリティの要因であったり、家庭環境に起因する場合もあり原因はさまざまです。

もし、子どもが学校でいじめに遭っているとわかった場合、「そんなのたいしたことないよ」「気にしなきゃいいんだよ」と言ってしまう親御さんも多いかと思います。ただ、子どもにとっては、「親に理解してもらえない、わかってもらえない」ということがいちばん傷つくことなのです。

親としても子どもからいじめの事実を告げられ、「まさかうちの子が!?」「そんなわけない!」と反応してしまうことも多く、「学校に行くことが正しい」という価値観の押しつけをしがちなのですが、「もしいじめが死ぬほどつらいのであれば学校に行かなくてもよい」と思えるぐらいの気概を持つことも必要かもしれません。

SNSトラブルやいじめに巻き込まれないためには?

高校生が携帯電話を使用してのラインのクローズ アップ
※画像はイメージです
monkeybusinessimages/gettyimages

――子どものスマホ所持率も高くなり、親世代にはなかったSNS関連のトラブルも増えているように感じます。

【新行内】おっしゃるとおり、そういったトラブルは増えています。とくに中学生以降はスマホ所持率が格段に高くなるので(※注1)注意が必要でしょう。「閉じられた世界ゆえに子どもに何が起こっているのかわからない」というのがSNSトラブルの特徴であり、怖さでもあります。

一方で「連絡がとりやすい」「位置情報がわかる」などのメリットもありますし、スマホを持つことを完全否定するのは、今の世の中ではむずかしい。学校でもネットリテラシー教育などが導入されていますが、子どもにスマホを持たせるにあたっては、親側のネットリテラシーや家庭の教育力が一層問われるのではないでしょうか。

「友だちの画像は勝手にSNSにアップしない」など、トラブルにつながりそうな行為はしっかりとダメと教えることも大事ですし、「食事しながらスマホはやめなさい」などと叱っておきながら、親自身が食事のときに夢中になってスマホでメールやゲームをしていては、子どもに説得力がありません。親としても、スマホとのつきあい方を見つめ直すことが大事であると思います。

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※注1)総務省「平成29年通信利用動向調査」(2018)によると、スマホからインターネット接続を行う割合は、6~12歳だと47.1%であるのに比べ、13~19歳は82.2%である。
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親もどうしたらよいか困ってしまったときは……

若い女性は彼女の顔を覆う手
※画像はイメージです
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――現在、多くの学校でスクールカウンセラーが派遣されていますが、保護者もカウンセラーに相談できるのでしょうか。

【新行内】はい、保護者も相談できます。スクールカウンセラーはだいたい週1回、4~8時程度、学校にいます。予約が入ってない場合は、直接来られてもよいのですが、事前に予約をしていただくことをおすすめします。

予約の方法は、学校にもよりますが、直接予約か先生を経由する場合もあります。実際、日本でスクールカウンセラーが派遣されるようになったのは、1990年以降ですので、保護者のかたにはカウンセリングそのものにあまり馴染みがない場合も多かったり、「カウンセリングを受ける=精神的に病んでいる」というイメージをお持ちのかたもなかにはいるかもしれません。

一方、子どもたちは、というと、カウンセリングルームにふらっと遊びに来たり、友だちを連れておしゃべりに来たりと意外と気軽に足を運んでくれる子も多いんです。ですので、お子さんのことで困ったことや悩みごとがあるときに、保護者のかたにもそのような感じで気軽にカウンセリングを利用していただければと思います。


――それでも子どもが学校に行けなくなってしまった場合、学校に代わる居場所はあるのでしょうか。

【新行内】各自治体で「適応指導教室」といった施設があります。こちらは学校に籍を置き、通所した日数は出席日数にカウントされます。ほかにも、自治体にもよりますが教育委員会が「教育相談センター」などを設置している場合もあります。

ただ予算の関係もあり、各自治体に1~2ヵ所しか設置されていないところが多く、どうしても家から遠くて通えない、共働きなどで毎日の送迎がむずかしいといったケースもあります。その場合、有料の施設も多いですが、NPO法人や民間が運営するフリースクールなどに通うという選択もあります。

ただ何よりもまず、家庭がいちばん安心できる場であること、親は子どもの味方でいることがいちばん大事なことです。子どもに親の価値観を押しつけて「追い詰める」のではなく、お子さんが大変そうなときには、そのつらさや苦しさに寄り添い「いつでも話を聞くよ」という態度で関係を築いていってください。

まとめ:我が子の願い。そして、ベストな道を見つけるために

現代の子どもたちを取り巻く環境は、我々親世代のときとは比べものにならないぐらい大きく変わりつつあります。「学校に行くことは当たりまえ」と思っている親であれば、我が子が「学校に行きたくない」と言ったときに、戸惑ったり叱ってしまったりするのも自然な反応かもしれません。

しかし、子どもにとって親は「どんなときも自分の味方でいてほしい」存在。その気持ちを受け止めつつ、親自身も戸惑いや悩みを1人で抱え込んでしまわないために、専門家などに相談するなど、多くの人の助けや知恵を借りながら、子どもに向き合うようにしていくことが大切なのかもしれません。


■取材・文/みらいハウス 福井良子
東京・足立区にある育児期の女性支援拠点「みらいハウス」のライティングメンバー。キャリアコンサルタントや不妊カウンセラーの資格を持ち、女性のキャリア相談や、不妊経験のあるママたちの支援などに取り組んでいる。1児の母。

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