収入は多いのに今の暮らしに満足できない人、一方、収入はそこそこでも毎日がハッピーな人、その違いはどこからくるのでしょうか?その背景やお金に対する考え方を徹底調査。お金と心、それぞれのプロに教えてもらいました。

<教えてくれた人>
・藤川太さん【お金のプロ】
ファイナンシャル・プランナー。家計の見直し相談センター代表。延べ2万世帯超の家計を診断した経験を生かしたアドバイスが好評。著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)など。
・名越康文さん【心のプロ】
精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。テレビ・ラジオのコメンテーター、映画評論などで活躍。著書に『SOLO TIME「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)など。
Q 年収700万円以上の人に聞きました。※今の収入で「たりない」と思いますか?
年収が高い人ほど、「いくらあってもたりない」と感じていました。
※ サンキュ!モニターアンケート(2020年2月実施、回答数=44人)
年収700万円以上の人の約6割が「今の収入ではまだたりない」「もっとお金があればいいのに」と、お金の不満があることが判明。
家や車、習い事、生活レベルは落としたくない
【お金のプロ】人並み以上に稼いでいるというプライドが、生活費をふくらませる原因に
年収が700万円以上あると、多少ぜいたくしても余裕があり、「自分は人並み以上に稼いでいるから、これくらいの暮らしをしていいはず」という固定観念を持ってしまいがちです。いい家、いい車、いい教育、いい食事などにお金を惜しまず、少しずつ出費がふくらんでいき、収支があいまいに。生活レベルを上げるのはカンタンですが、一度上げたものを下げるのはむずかしいもの。むしろ「もっといい物」を手に入れたくなるので、「いくらお金があっても、たりない」と不満が募るのです。そして、出費がふくらんだ結果、いざ教育費のピーク期になって「貯蓄がない!」と焦って相談に来るかたを多く見てきました。"人並み以上"の上限を把握していないと、いずれ家計が破綻しかねません。
【心のプロ】人と比べているうちは、一生幸せになれません
収入に限らず、何事も人と自分を比べて、メリットなんて一つもありません。自分より収入が高い人と比べては、「お金がたくさんあっていいな~。自分は稼ぎが少ない」と劣等感を抱き、反対に自分より収入が低い人と比べれば、「自分のほうが稼いでいる、いい暮らしができている」と優越感を持つでしょう。しかし、優越感と劣等感は表裏一体。自分に軸がないから、人と比べることでしか評価ができず、ずっとモヤモヤした状態なのです。それでは自分の能力は発揮できません。視点を変えると、人と自分を比べるということは、気持ちのうえでまたまだよそ見ができる余裕があるということ。自分の目標を見つけて日々勤しんでいる人は、人と比較してよそ見している暇がなく、充実した毎日を過ごせます。
むりに節約するのはイヤ!余裕のある暮らしがしたい
【心のプロ】節約=ネガティブととらえることがストレスの原因に
節約と聞くと、「欲しい物を我慢する」「家計を削る」など、ネガティブな印象。そう感じたままだと、ストレスがたまって不満に思うのは当然です。否定的な言葉ではなく、「暮らしの余裕をいかに生み出すか」と、クリエイティブに考えてみては?ムダなことには使わないけど、大事なことには使う。予算をいかに有効に使うかを工夫して、それをゲーム戦略として楽しめれば、クリアーしたときに達成感が得られ、不満な気持ちもなくなります。
【お金のプロ】目的がないのに、チマチマ節約を見下しがちです
節約したくないと言う人は、「チマチマ節約するのは貧乏くさい」と思っている傾向が。そんな人に支出の削減を提案すると、「どれも大事、削れない」と言い訳をしてきます。それは、家計の中で「これだけは守りたい」という優先順位が見えていない証拠。今は生活に困っていないため、この先増えていく支出にどう備えるか、何のために貯めるのか、目的がわからないから、節約がゴールの見えない我慢の連続にしか思えないのでしょう。まず、貯める目的を明確にすることが満足度を上げる第一歩です。
お金はいくらあってもたりない!その分、したいことも増えるから
【心のプロ】"これさえあれば満足"というものがあればブレません
「お金があれば、あれもこれもしたい」と欲望があふれ、不満に感じてしまうのは、これだけは」という芯がないのが原因。「これさえあれば」「これをしていたら」満足するというものがあると、人生の満足度は上がります。例えば、好きな料理を追究する、スポーツなどのテクニック習得にハマるなど、やりたいことがハッキリしていたら、それに使う時間が増えてきます。1日はしょせん24時間。凝り性の人は、自然に散財しなくなります。
【お金のプロ】実はあなたは中途半端な金持ちなんです。身の丈を知りましょう
年収700万~1200万円の世帯は、所得制限のため、国や自治体の補助金などの対象外になる場合があり、税負担は大きいのに恩恵を受けられない中途半端な立場。実際に使えるお金はそれほど多くはないので、"お金持ち気分"で際限なく使っていたら、たりなくなるのは当たり前です。収入の大幅アップが厳しい今、「わが家の使えるお金」をしっかり把握し、「本当にしたいこと」のためにどう使うかを考えるようにしましょう。
今の年収で満たされるためのアドバイス
【お金のプロ】家族で将来のライフプランを立てよう
家の購入、子どもの進学、車や家電の買い替えなど、この先60歳ごろまでに必ずかかる支出予定を書き出しましょう。いつまでに・いくら貯める必要があるか、目標が立てやすくなります。このライフプランは、夫にも(できれば子どもも)共有することが大事!妻だけで頑張るのは挫折するもと。家族と一緒に目標達成をめざすことが継続する力になります。
→ やりたいことをいかに実現するか、やる気が高まる
【心のプロ】今の満足、不満を書き出してみよう
今の暮らしで「満足していること」「不満に思うこと」をそれぞれ10個ノートに書きます。「不満に思うこと」のうち、自分で解決できること、解決できないことを分類。そう可視化したうえで、どうしようもないことは一時的に棚上げしておきましょう。一方、自分の力で改善できることはやってみて、その過程を楽しむようにして。「満足していること」をもっと大切にすると幸福度が高まります。
→ 「今ある幸せ」を実感できるように
Have a try!
□人と自分を比べるのをやめてみる
□貯蓄する目的をはっきりさせてみる
□将来のライフプランを立ててみる
参照:『サンキュ!』2020年6月号「収入と貯蓄大調査」より。
編集/サンキュ!編集部
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