【連載】書店員は、見た!「70歳過ぎても書店には刺激がいっぱい!」

2019/05/12【 連載 】

『サンキュ!』の取材でお会いしたYさん。書店の案内カウンターで働いています。毎日、本を探す人々から、さまざまな問い合わせを受ける日々。そのなかにある人間ドラマのあれこれをお伝えしています。

70歳過ぎても書店には刺激がいっぱい!

人気コミックの発売日。当店では、レジ前にそのコミックを積み上げておくのですが……。先日、70代後半くらいの和服姿のご婦人が『ONEPIECE』を購入されました。お孫さん用?と思い、「袋をお分けしましょうか」と言ったところ、すぐ読むから、袋はいらないわ」。私が手止めて顔を上げると、「ふふふ。サンジ、どうなっちゃうのかしらね」と、ほほえむご婦人。ご自身で読んでらっしゃるとは!!先入観にとらわれてはいけないと感じる出来事でした。

その後、ご婦人とは、おすすめの漫画を教え合う関係になりまして、案内カウンターで雑談を楽しんでいた、ある日のこと。歴史マニアの彼氏と旅行をするという、20代前半の女性がお問い合わせにいらっしゃいました。

「歴史が頭に入らなくて困っているので、わかりやすいガイドが欲しい」という女性に、ご婦人が「新潟に行くなら『雪花の虎』を読んでみてはいかが?」と。「ご婦人よ、それは私の仕事です」と思いつつも、なんてよいセレクトと感心しきり。

『雪花の虎』は、上杉謙信の一代記を描いた漫画。謙信は、実は女性だったのではないかという説を軸にドラマチックに物語が展開していきます。私も大好きな作品で、ご婦人のセレクトに全力で賛同しました。

でも、私も仕事をしなければと、彼女におすすめしたのが、『笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳 戦国時代』。この本、いろいろなかたにおすすめしているのですが、本っ当に面白いんです! !
 
日本史を1つのドラマとして、会話劇(超現代語)で読ませるという斬新な試み。楽しく読んでいるうちに、歴史の大まかな流れと登場人物が頭に入ってしまうお得感。歴史がすごく苦手な夫にも強力プッシュで読ませて、「面白い! 」という感想を引き出した、心からおすすめの1冊です。これを読んだら、だれでも戦国武将がいとおしくなる(はず)!! ご婦人と私のおすすめをどちらも購入して帰っていく女性の後ろ姿を見送りつつ、ご婦人が、「私には、今日のおすすめの1冊はないのかしら?」と、ほほえみます。そのにこやかな笑顔に圧を感じつつ、震える声で「『メタモルフォーゼの縁側』はもう読まれましたか?」と聞く私。幸いにも、「気になってたけど、まだ読んでないのよねー」という答えを受けて、にんまりしたのでした。

*個人情報が特定されないよう一部脚色しています。

Yのおすすめする本

『笑って泣いて~』は、応仁の乱から始まる戦国時代を語る歴史本。お笑い芸人が著者だけあって、読みやすいだけでなく、思わず、にやにや笑ってしまう面白さ。『メタモルフォーゼの縁側』は、子どもが独立し、夫に先立たれた、一人暮らしのおばあさんが主人公の漫画。おばあさんが、突然、書店で出会ったのが、なんとボーイズラブのコミック! 新しい趣味との出合いで、世界が楽しく色づいていく様子が描かれていきます。


<書店員Yさん>
日本海側の地方都市にある書店に勤務。1男1女の母。義母もこの連載を読んでくれていることが発覚し、ありがたいけれどちょっと焦り中


イラスト/泰間敬視 文/書店員Y 構成/加藤郷子
『サンキュ!』2019年2月号より抜粋

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