芒種とは?2022年はいつ?意味や由来、季語や俳句での使われ方まで解説
2022/01/24
芒種(ぼうしゅ)とは二十四節気のひとつ。稲など穀物の種まきの頃という意味です。2021年の芒種は6月5日。2022年は6月6日です。
今回は、芒種はいつ?芒種とは?という疑問だけでなく、芒種の季語や、芒種の季節に楽しめる食べものや風習、風物詩にいたるまで紹介します。
芒種はいつ?
国立天文台からの発表によると、2020年~2022年の日本における芒種は、以下の通りです。
・2020年6月5日(金)
・2021年6月5日(土)
・2022年6月6日(月)
芒種はその後の夏至までのおおよそ15日間ほどの期間を指します。
芒種とは?
芒種とは、二十四節気のなかにおけるひとつの時期です。
二十四節気とは、一年を春夏秋冬の4つの季節にわけ、さらにそれを6分割し、計24等分する考え方。芒種は、立春から始まる二十四節気の9番目にあたります。
カレンダーでは、例年6月5日~6日頃です。その日程は毎年、国立天文台が発表しています。天文学的には、太陽が黄経75度の点を通過するとき。気象的には本格的な梅雨入りの前にあたります。
芒種は芒(のぎ)のあるイネや麦などの穀物の種を蒔く時期、という意味。かつては、梅雨入りして雨続きとなる前の「芒種」が田植えのタイミングだったようです。
芒種の意味・由来
芒種の「芒」とは、稲や麦など、穂のなる穀物の花の先端にある突起部分です。
訓読みでは「のぎ」と読みます。
また芒種の「種」とは、芒のある、稲などの種を意味します。
その由来は「芒」のある穀物の「種」を播(ま)く時節ということから。「芒種」とは、芒(のぎ)のある穀物の種を蒔くという意味です。
時期的には、田植えを始める目安で「主食のコメとなる稲を植える大切な時期」といったリマインダー的な要素も含まれるようです。
芒種を子どもに伝えるなら
カレンダーや季節、子どもの日常などキーワードを関連付けると伝わりそうです。たとえば、このように答えてみましょう。
「カレンダーは6月。私たちが食べているお米やパンや麺の素である稲や麦といった植物の種を田んぼや畑に植える頃のことね」
あるいは、子どもの年齢に合わせて「あじさいやかたつむりさんの現れる6月ね、お米や麦の種を田んぼや畑にまく頃よ」などと伝えるのもいいでしょう。
芒種を英語でいうなら
英単語では表すことはできません。
「穀物を植える季節」という意味では"Season to plant grains"という表記は可能です。
また、中国語のピンインを音読した送り仮名で "mang zhong"と表します。
芒種は縁起がよい日
お稽古ごとなど何か物事を始めるには、芒種が良いとされています。なぜでしょうか?
その理由は、縁起を担いだ言い伝えにあります。諸説ありますがそのうちの一説をご紹介します。
芒種は、芒(のぎ)のあるイネや麦などの穀物の種を蒔く時期、という意味でした。
「種を蒔き、その植物が成長していく姿」から、「芒種は縁起が良い」とされているようです。
芒種の七十二候
季節と暦とのズレをうまく調整するために使われた二十四節気ですが、さらにひとつの節気を「初候」「次候」「末候」の3つにわけて考える「七十二候」というものもあります。
「初候」「次候」「末候」の期間はそれぞれ5日間程度。
そのひとつひとつには気象や動植物の変化を知らせる名称が付けられています。
初候:蟷螂生(かまきりしょうず)
6月5日〜6月9日頃。
秋に産卵された卵が孵化し、赤ちゃんかまきりが誕生する頃という意味です。その風貌が独特で、一見こわそうなイメージがあるかまきり。農作物には手をつけず害虫のみ捕まえてくれる、じつは頼もしい昆虫です。
次候:腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)
6月10日〜6月15日頃。
「ふそうほたるとなる」とも読まれる次項には、2つの解釈があります。1つには、梅雨の湿気を帯びて腐れたようにみえる草々。そのなかから美しく光る蛍が飛び交う姿がみられる頃という意味です。2つ目は梅雨を迎えて水辺の草陰で腐った草が蒸れて、蛍になるものだと昔の人は考えたとの両説です。
蛍は、カワニナという清流に住む巻貝をエサとしています。そのため水質のきれいな水辺におもに生息していますが、草むらで見つけられることもあります。
末候:梅子黄(うめのみきばむ)
6月16日〜6月20日頃。
梅の実が薄黄色に色づく頃という意味です。そもそも「梅雨」という言葉は、梅の実が熟す頃の雨という意味。黴(カビ)が生えやすい季節、「黴雨(ばいう)」と書くこともあったようです。
季語「芒種」、「芒種の候」「小満芒種」の意味と使い方
ここでは、季語「芒種」の使い方や芒種という言葉が含まれる表現を紹介します。
季語「芒種」の意味と使い方
五七五の句のなかに季節を表す季語を入れるのがルールの俳句。
芒種は、あじさいや雨蛙、梅雨などと同様に、6月の季語として使うことができます。
「大灘を 前に芒種の 雨しとど」作者:宇多 喜代子
「芒種なり 水盤に粟 蒔くとせむ」作者:草間 時彦
「ささやくは 芒種の庭の 番鳩」作者:石原 八束
芒種の候の意味と使い方
芒種の候は、6月上旬から中旬にかけて用いられる時候(じこう)の挨拶です。
時候の挨拶とは手紙の前文。頭語(拝啓など)に続いて、季節感を表す書き出しの語を意味します。
時候の挨拶には、相手にかたい印象を与える漢語調か、やわらかい印象を与える口語調があります。芒種の候は、漢語調。特にかたく改まった場面で使うと覚えましょう。
<例文>
芒種の候、貴殿ますますご清祥の由、何よりと存じます。
芒種の頃に旬を迎える食べ物
芒種の頃に旬を迎える食べ物は、これからの夏を感じさせるものです。
鮎
初夏の風物詩、鮎は大きさが約10~30センチほどの川魚です。天然物と養殖物があります。
天然物は各地で禁漁期間があります。漁の解禁される期間は6月~9月が大半です。漁の種類にはなわばりを形成する習性を利用したおとり漁や、鵜飼いなどがあります。
「年魚」とも呼ばれ1年で命を終える鮎は良質なコケをエサとするため、良質な水の環境無しには生きられません。白身の味は淡泊で、塩焼きにすると美味しいです。
茗荷(みょうが)
香味野菜の一つとして愛される茗荷(みょうが)。みょうがの独特な香りは「アルファピネン」という成分。発汗、呼吸、血液循環などを促します。胃液の分泌を活発にするため、食欲減退や夏バテ予防にも。薬味に使うのは、ある意味、理にかなっていますね。
芒種の頃のものは「夏みょうが」のはしり。その旬は、6月から10月過ぎまでと長い期間があります。本州から沖縄まで自生するこの野菜を食用栽培する国は、世界的にみて日本のみのようです。
オクラ
オクラは、栄養が豊富に含まれる野菜です。
ネバネバした食感は好き嫌いの意見が分かれますが、カロテン、鉄分、カリウム、カルシウム、食物繊維などが含まれるため、育ち盛りの子どもや女性は取り入れたいですよね。
刻んでかつお節とお醤油をかけてたり。叩いた梅や出汁などと和えものにしたり。厚揚げやがんもどきと煮びたしにしたり。軽く茹でて、好みのドレッシングでサラダに添えたり冷ややっこや冷たいお蕎麦やうどんの薬味として添えたり。天ぷらにしても美味しくいただけます。
芒種の季節に楽しめる花・植物
芒種の季節に楽しめる花・植物をご紹介します。
紫陽花
紫陽花(あじさい)は、ユキノシタ科・アジサイ属のお花です。日本の園芸品種で、公園や庭植えがよく見られます。一般に花とみられている部分は装飾花で、花びらのように見えるのは萼(がく)です。
紫陽花には紫、ピンク、青、白など多様な種類がありますが、これらの色合いは地質によって変わります。また、紫陽花は咲き初めの頃は薄い色に、咲き終わりの頃には濃い色に変わるため、お子さんと色の変化を観察してみるのもよいですね。
ザクロ
ザクロは地中海沿岸から西アジアを原産とするザクロ科・ザクロ属の樹木です。5センチほどの花の色は紅色で、観賞用品種には白、黄色などのものもあります。
熟した果実は食用にもなります。不規則に裂け種子を見せる独特な形になりますが、甘ずっぱい味がします。
クチナシ
アカネ科・クチナシ属の樹木です。枝先に良い香りの白い花をつけます。その実は黄色に色づく着色料とされ、栗きんとんや沢庵漬けなどに利用されてきました。
また、乾燥させた果実は、山梔子(さんしし)と呼び、漢方では消炎剤や利尿剤として用いられています。
芒種の時期に楽しめる行事やイベント
本格的な夏の前の準備期間ともいえる芒種の時期。この時期に楽しめる行事やイベントを紹介します。
種まき
小松菜やツルムラサキ、山東菜、水菜、シソなど、雨を浴びてすくすくと育つ葉物野菜がおすすめです。ほかにはゴーヤ、枝豆、大根、きゅうりなどがあります。プランターでの栽培も可能です。
また、ナスやサツマイモなど、春のうちに種をまいて育った苗を、畑に移す時期でもあります。
納涼床
納涼床(のうりょうゆか)は、川を眺めて涼をとりつつ、お食事が楽しめる仮設式の高床のこと。いわゆるテラス席で、京都、大阪の夏の風物詩です。鴨川の納涼床の歴史は古く、桃山時代にまでさかのぼると伝えられています。
京都の二条から五条にかけての「鴨川エリア」では、100軒ほどが軒を連ねます。祇園などの中心街からは離れた「貴船」「高雄」エリア、そして、大阪の「中之島」では川床(かわゆか)と、地域ごとにその呼び名は変わります。
父の日
毎年6月、第三日曜日にある父の日。その発祥はアメリカです。ジョン・ブルース・ドット夫人が、6月に、父の墓へ献花したことから始まり、1972年にアメリカの記念日となりました。
いまでは、ヨーロッパ諸国や日本などアジア地域にも広がっていきました。日本では、母の日の赤いカーネーションに対して白いカーネーションを贈りますが、アメリカではバラを贈る習わしのようです。
子どもと楽しむ芒種の過ごし方
子どもと芒種の頃に楽しめるアイデアをご紹介します。
蛍を見に行く
芒種の頃は梅雨の頃。蛍が飛びはじめるタイミングになります。
天気予報をみながら、雨空の間を縫って、夜に家族で蛍を見に出かける。暗がりのなかでぼうっと光って飛び交う蛍の姿は、とても幻想的です。きっと子どもが大きくなるまで忘れることはない美しい思い出となることでしょう。
暗がりの観察になりますので、足元などをしっかりと見ながら転ばないように気をつけてください。
紫陽花を見に行く
梅雨空で重くなりがちな芒種の頃を、癒してくれる紫陽花。7色に変化するその色合いの変化などを、子どもと観察するのがおすすめです。近隣の公園の植栽などで採用されていますので、お散歩がてら気軽に見に行くことができます。休日を利用して、公共交通機関を利用すると、乗り物好きのお子さんは喜ぶでしょう。
紫陽花の裏側についているカタツムリを探すのも、子どもは楽しめそうです。湿気で気温が低く感じられますので、寒さ対策についてもお忘れなく。
さくらんぼ狩りに行く
見た目の美しさや希少性から、宝石に例えられることもあるさくらんぼは、佐藤錦、紅秀峰、紅てまりなど、さまざまな品種があります。品種によりますが、おおよその旬は5月~7月頃で、芒種の頃、旬の盛りを迎えます。
太陽光を多く浴びることで甘味が増すので、陽当たりのよい木の上部がねらい目です。さくらんぼ狩りでは、はしごや脚立などに上り、美味しそうな実が見つかると気分が上がります。年によって食べごろに変動があるので、予約時に生育状況も確認してから行きましょう。
まとめ
芒種は、長らく日本人の主食であるコメや麦の収穫に必須の節目でした。暦の知識を得ると、うっとうしい梅雨も、イネや麦にとっては恵みの雨と気付かされます。そうして自然の流れと調和していけば、日々を楽しく乗り越えていけるかも知れません。季節の花やことば、旬の食材、季節の移ろいを味方につけて、暮らしを少しでも豊かにしていきましょう。
参考書籍・サイト
本間美加子(2020)『日本の365日を愛おしむ ‐季節を感じる暮らしの暦‐』飛鳥新社