「土用の丑の日」と耳にすると、うなぎの蒲焼を思い浮かべる方は多いでしょう。また、「今年は何度も土用の丑の日がやってくるな」と、感じたことのある方もいるのではないでしょうか?
2021年の土用の丑の日は7月28日。2022年は7月23日・8月4日です。
毎年何となくうなぎを食べているという方にお伝えしたい、土用の丑の日の意味や風習を解説します。
土用の丑の日とは?意味を分かりやすく解説
土用の丑の日という言葉はよく耳にするけれど、実際にどのように日にちが決まっているのかよくわからないという方は多いのではないでしょうか?
土用の丑の日について意味や英語での言い方をご紹介します。
「土用」とは?
土用は日本独自の暦である雑節(ざっせつ)で、立春・立夏・立秋・立冬の前18日間を指します。土用は夏のイメージが強いのですが、実はほかのシーズンにも訪れるものなのです。
土用とは、「土旺用事(どおうようじ)」の略。土旺用事は陰陽道による五行説に由来します。すべての物事は「木・火・土・金・水」の5つから成り立つという考えの五行説。
しかし、季節は「春・夏・秋・冬」の4つ。春夏秋冬はそれぞれ「春=木」「夏=火」「秋=金」「冬=水」とされていますが、「土」だけどこにも当てはまりません。そこで、無理やり5つに分けるため、それぞれの季節の終わりの18日間を「土」として定めたのが土用なのです。
「丑の日」とは?一の丑・二の丑ってなに?
丑の日の「丑」とは十二支の丑のこと。「子」や「戌」などと日にちに干支が書かれているカレンダーや手帳を見たことのある方もいるでしょう。十二支は年単位で繰り返され12年で一巡しますが、日単位でも繰り返されています。土用期間に訪れる丑の日は「土用の丑の日」と呼ばれます。
丑の日は12日に1度やってくるので、土用の丑の日が2度くる場合もあるのです。2度ある土用の丑の日は、「一の丑(いちのうし)」「二の丑(にのうし)」と呼びます。
「土用の丑の日」は英語で何という?
土用の丑の日を海外の方に説明したいとき、英語で何と言ったらよいのでしょうか?土用の丑の日は日本独自の文化なので、そのまま伝えられる英語はありません。次のような英語で伝えましょう。
「day of the ox in midsummer」
直訳すると「真夏にあるウシの日」となります。土用の丑の日は春夏秋冬にありますが、とくに話題になりやすい夏のことを言い表しました。
土用の丑の日はいつ?
2020年~2022年の夏の土用の丑の日は以下の通りです。
2020年7月21日(火)
2021年7月28日(水)
2022年7月23日(土)・8月4日(木)
土用の丑の日は1年に2度訪れることもあります。夏の土用の丑の日は、梅雨明け前後の季節の変わり目で、体調に気をつけたい時期ともいえますね。
ちなみに2022年の冬・春・秋の土用の丑の日は下記の通りです。
●冬の土用の丑の日
2022年1月24日(月)
●春の土用の丑の日
2022年4月18日(月)
2022年4月30日(土)
●秋の土用の丑の日
2022年10月27日(木)
土用は春夏秋冬にある!丑の日以外にも習慣が
土用の丑の日は春夏秋冬にあります。ただし、季節によって食べると縁起がよいとされているものは異なります。季節ごとに土用に食べるとよいとされているものをご紹介します。
「い」のつく食べ物を食べる「春の土用」
春の土用には、「戌」の日に「い」が付くものや白いものを食べるとよいとされています。たとえば、春が旬のイチゴやイカなどが縁起のよいものとして挙げられます。
「う」のつく食べ物を食べる「夏の土用」
夏の土用には、「丑」の日に「う」の付くものや黒いものを食べます。うなぎはまさに夏の土用にぴったり合う縁起物だったのですね!ほかにも、梅干しやウリ(キュウリやスイカなど)を食べるのもよいとされています。
「た」のつく食べ物を食べる「秋の土用」
秋の土用には、「辰」の日に「た」が付くものや青いものを食べるとよいとされています。タマネギやダイコン、青魚などはいかがでしょうか?
「ひ」のつく食べ物を食べる「冬の土用」
冬の土用には、「未」の日に「ひ」が付くものや赤いものを食べます。ヒラメやひじき、リンゴやカニなどがおすすめです。
土用の丑の日にうなぎを食べる理由
夏の土用は「う」が付く黒いものを食べると縁起がよいといわれています。そこから考えると土用の丑の日に黒いうなぎを食べるのはぴったりですね。
なぜ土用の丑の日にうなぎを食べる習慣が定着したのかについて解説します。
夏にうなぎを食べる習慣の由来
夏にうなぎを食べる習慣は古くからあったといわれています。奈良時代後期に成立した『万葉集』には、すでに以下のような和歌が収録されていました。
「石麻呂にわれ物申す 夏痩に良しといふ物そ 鰻取り食せ」
これは大伴家持が歌ったもので、「石麻呂(友人の名前)に言いたいことがあります。夏痩せに効果があるうなぎというものを捕って食べてください」という意味。当時からうなぎは夏にぴったりの滋養のある食べ物として認識されていたようですね。
土用の丑の日にうなぎを食べる習慣の由来
諸説ありますが、一番有名な「平賀源内が広めた説」をご紹介します。
うなぎは栄養たっぷりで夏にぴったりの食べ物ですが、実は旬は冬。蒲焼に使われるこってりとしたたれが夏場には受け付けられないのか、暑い季節はうなぎが売れませんでした。
そこである日、うなぎ商人が夏の売れ行きについて蘭学者・平賀源内に相談したそうです。源内が知恵を絞り「本日土用丑の日」とうなぎ屋の前に貼り紙をしたところ、うなぎが飛ぶように売れ始めたとのこと。
このように、土用の丑の日にうなぎを食べる習慣は、江戸時代の平賀源内の貼り紙から始まりました。
土用の丑の日に食べたい!うなぎ以外の食べ物
土用の丑の日にぴったりな食べ物は、うなぎ以外にもあります。うなぎ以外のおすすめをご紹介しましょう。
土用しじみ
しじみは夏に産卵期を迎えるため栄養満点。「土用しじみは腹の薬」ともいわれるほどで、夏バテ防止にぴったりの食材です。
土用餅
北陸や関西地方では、土用の丑の日に「土用餅」を食べる風習があります。土用餅はこしあんで包んだ餅(あんころ餅)のこと。見た目はお彼岸にいただくおはぎに似ています。
小豆には厄除け効果があるとされていて、餅には「力持ち」(力餅)の意味合いがあるため、土用餅を食べることで健康で幸運な生活を送れるということから始まった風習のようです。
「う」のつく食べ物
「う」の付く食べ物も土用の丑の日の縁起物です。梅干し・ウリ・うどん・牛などが挙げられます。土用の丑の日には「う」にこだわって献立を考えてみましょう。
蒲焼が定番のうなぎも、うな丼以外の食べ方があります。子どもが喜びそうなオムライスもよいですね。
ウナギオムライス
土用の丑の日の風習
食べ物以外にも土用の丑の日の風習はあります。
きゅうり加持(きゅうりかじ)
きゅうり加持は別名「きゅうり封じ」とも呼ばれます。
きゅうり加持は、もともと弘法大師空海が中国から伝えた、厄除けのために行う伝統行事。きゅうりに名前や病名を記入して祈祷し、そのきゅうりを土に埋めて病気平癒を祈願しました。
現代日本ではきゅうりにあやかって暑い夏を乗り切る行事として、香川県の総本山善通寺や淡路島の大照寺などで行われています。
丑湯(うしゆ)
丑湯とは、土用の丑の日に薬草などを入れたお風呂に浸かること。江戸時代には桃の葉がよく使われましたが、ヨモギや緑茶などを入れることもあったそう。季節の変わり目で疲れ気味の体を、お風呂でゆっくり休めたいですね。
土用干し
土用干しは、土用の晴れた日に衣類や履物、本などを外に干して湿気を取ることです。「土用の虫干し」ともいいます。
梅雨にジメジメした衣類や履物などはカビやニオイが発生することも。太陽にあてたり風を通したりして、清潔にしましょう。
土いじりはNG
ここまで土用の丑の日に行うとよいことを挙げましたが、反対にしないほうがよいとされていることもあります。
土用は土の神様が支配している期間なので、土を動かしてはいけません。土を掘ったり運んだりすると災いが起きるという言い伝えがあるので、縁起を気にする方はガーデニングや農作業は避けたほうが無難です。土をいじらなくても、家を建てたり引越したりすることもこの時期には避けたほうがよいとされています。
子どもと楽しむ!土用の丑の日の過ごし方
子どもと土用の丑の日を楽しむのなら、以下のことを一緒にやってみてはいかがでしょうか?
家に紫陽花(あじさい)を飾ろう
「土用の丑の日は紫陽花を家に飾ると幸運になる」という言い伝えが日本各地にあります。地域によって少しずつ異なっている紫陽花に関する言い伝え。紫陽花を軒下に吊るすと家が栄えるという言い伝えもあれば、トイレに置くと病気を防げるという言い伝えもあります。
土用の丑の日は紫陽花がきれいな季節ですので、子どもと一緒に家に飾ってみてはいかがでしょうか?
ゆっくりお風呂に浸かろう
土用の丑湯にちなんで、子どもと一緒にゆっくりお風呂に浸かるのもよいですね!お気に入りの入浴剤を入れて、疲れを癒すのがおすすめです。銭湯などの入浴施設でも、この時期は薬湯を入れているところがあります。家族で出かけてみるのもよいですね。
土用干しを体験してみよう
土用の季節に行う「土用干し」を子どもと一緒にやってみませんか?庭やベランダがある場合には、レジャーシートなどを敷いて普段干す機会の少ないクッションやマット、ぬいぐるみなどを干してみましょう。日当たりのよい部屋に並べるだけでも大丈夫です。
太陽を浴びてフカフカになったら、家族みんな気持ちよく過ごせそうですね。
まとめ
土用の丑の日にうなぎを食べるようになった由来や、そのほかの風習について解説してきました。土用の丑の日は梅雨明け前後で気温の変化が激しい季節。体調を崩しやすい時期なので、うなぎなど滋養のあるものを食べて体を労りたいですね。縁起物を取り入れて、家族みんな元気に過ごせるようにしていきましょう。