助産師の国際デー。ベクトルバナー、ソーシャルメディア用イラスト。5月5日に祝いました。ピンクのハートの中の果物のシルエットと助産師の国際デーのテキスト。

日本助産師会・島田会長が考える理想的な子育て社会とは~「国際助産師の日」スペシャル②

2023/05/24

番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。

2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。今回の連載では、5月5日「国際助産師の日※」のフェムテック スペシャル番組でオンエアされた内容をまとめてお伝えします。 ※1992年、国際助産師連盟によって5月5日は「国際助産師の日」に制定されました。 助産師さんの仕事の重要性をたくさんのかたに伝えることを目的としています。

<パーソナリティー>
●東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった32歳。

<ゲスト>
●島田真理恵 Marie Shimada
公益社団法人 日本助産師会会長・大学教授。1959年東京都生まれ。聖路加看護大学(現聖路加国際大学)学士、修士を修了。2005年には、昭和大学で医学博士号を取得する。10年間の助産師経験を経て大学教員に。2011年から、上智大学総合人間科学部看護学科教授を務める。https://www.midwife.or.jp/

まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組。ゲストは、日本助産師会会長で、上智大学教授の島田真理恵さんです。「前回、助産師さんのお仕事について詳しく教えていただきました。今回は、日本の子育ての事や、未来に希望がもてるお話をたくさんお聞きすることができました。周りのかたがたにサポートしてもらいながら、快適に楽しく子育てしていきたいですね」 (東島アナ)

日本が誇る「母子手帳」の活用と円滑な育児分担を考える

母子のイラストと健康手帳・ マタニティ マークします。
mari_matayoshi/gettyimages

■東島アナ「日本の子育てについて、お聞きしたいと思います。まずは、子育ての支援につながる母子手帳ですが、日本が誇る重要なアイテムであることは、ご存じないかたが多いかもしれません」

■島田「そうですね。母子手帳は、日本発祥の制度で、妊娠期から乳幼児期まで健康記録をコンパクトな一冊で管理できる優れた手帳です。この時期には非常に重要なことなのですが、海外では当たり前のことではありませんので、実は外務省では、日本の母子手帳を世界に広めようという活動をしています。これは非常に誇れることです」

■東島「少し前の世代のお父様がたは、母子手帳をじっくり見たことないというかたも多いと思いますので、具体的にどういうことが書かれているのか、教えていただけますか」

■島田「母子手帳には、妊婦さんの健康診査の結果が記録されています。それから出生の状況、乳児健診等の結果も記載されています。そして、いろいろな記録を記載するページの後ろに、今の段階で、国が適切と考える妊娠や子育てに関する情報がきちんと提示されているので、いつでも確認することができます」

■東島アナ「エビデンスに基づいてまとめてあるのですよね。今、たくさんの情報が世の中にはあふれていますが、とりあえず立ち返るのは母子手帳とういうことでよろしいでしょうか」

■島田「はい。日本は母子保健の水準も高いのです。乳幼児死亡率が本当に低く、世界最高水準だと言われています。生まれたら、状況に応じて医療が施されるので、出産時もその後も、赤ちゃんとそのお母さんも亡くならない国の一つです」

■東島アナ「無事、赤ちゃんが生まれた後、家事を含めた子育てに、各家庭の生活環境はさまざまですが、島田さんは子育て分担についてどのようにお考えですか」

■島田「“言わなくても分かるはず” “当然やってくれているはず”というような思いが強いと、カップルでお互いに衝突したり、関係性が悪くなると聞きます。ですから、“こうしてくれないと困る”ではなく、“こうこういう援助をしてほしい”と具体的に伝えたほうがよいと思います。例えば、よく女性がおむつ替えをしている男性を見て、心もとなくなっていろいろと指摘したくなりがちですが、そこはぐっとこらえて “もう少し、こうするといいよ” というような感じで声をかえるとよいですね」

■東島アナ「思いやりを前提に発言するということですね。現在、両親が子育てに参加するために育休制度が広がっていますが、子育てに関して企業に、なにか期待することはありますか」

■島田「ある企業にお聞きした話ですが、育休中の男性が1日に育児と家事に携わった時間の調査が実施され、その結果約30%の人が1~2時間と回答したそうです」

■東島アナ「そうなのですか! 少ないですね~」

■島田「育児休業を男性が取得する場合には、この現状を知り、どうしていくべきか、どのように育児を行っていくべきか、ある程度研修を受ける必要があるのではないかと思っています。そして、研修に参加した人が育児休暇を取得できるようにするとよいのではないかと、個人的には思います」

■東島アナ「よいアイディアですね。育児について教えてくれるコミュニティが周りにあったとしても、自発的に行くか?と言われたら、二の足を踏む男性もいると思うので、育児休暇を取得する登竜門として、研修に参加する、という制度があるといいですね」

子育ては、家族だけでなく地域と制度で支える社会が理想

■東島アナ「地域全体で、子育てをサポートすることが大切だと思いますが、島田さんはどのようにお考えでしょうか」

■島田「できるだけ母子が孤立しないようにするということが必要だと思っています。日本の女性は非常に真面目なので、きちんと自分でやらなくてはいけない!と思ってしまうかたが多いのです。ですが、子育ては女性一人で行うものではなく、子どものためにも多くの人に手伝ってもらい、多様な人と接していくことが子どものためになる、ということを意識していただくのがよいと思います。育児は自分一人で行うのではなく、人に支援を求めることが重要です」

■東島アナ「なるほど。今、全国の自治体に設置されている子育て世代包括支援センターでは、どんなサポートを受けることができるのでしょうか」

■島田「地域で生活する母子を、助産師ほか顔見知りの支援者が把握して、個々の状況に応じたお手伝いをしています。これは非常に重要なことで、“何かあったらセンターへ行って支援してもらえる、支援を求めてもいい状況にある” というメッセージをもっと助産師側も発信して、なるべく密室で育児をすることがなくなるようにしたいと思っています。今自治体はこのセンターだけではなく、子育て広場などの設置も進めていますので、そういったところへ子どもを連れて出かけるなど、できるだけ外との接触を心がけていただけたらと思います。一日中育児に集中するのではなく、適当に気晴らしをして楽しく過ごしていただきたいです」

■東島アナ「孤立しないことは大切ですが、一方で地域や周りの人とのちょうどいい距離感を保つことは難しさもあります。私は地方出身ですが、地方と東京では人とのつながりや距離感に、環境の差があるように感じています」

■島田「地域ごとで、人との距離感は違うと思います。無理をしてママ友をつくらなくても、子育て広場に行ったり、センターにいる助産師と話をして帰るなどでもよいと思います」

■東島アナ「友人から、“センターのスタッフのかたに話を聞いてもらえたことがうれしくて、号泣しながら帰ってきた”という話を聞いたことがあります。私は彼女がそこまで追い詰められていたとは思っていませんでしたが、感情の揺れ動きみたいなものがあるのでしょうね。今回お話を伺って、助産師さんの仕事は幅広い、そして心強い味方なのだということを、みなさんにも覚えておいてほしいです。最後になりますが島田さんが考える理想的な子育て社会について教えてください」

■島田「子育てはカップルだけではできません。ただ、私たち助産師も3万8千人という非常に少数の集団ですし、医療職による支援には限りがあります。超少子高齢社会の中、地域で子育てする家庭を支えていくという意識を高めていく必要があると思っています。何かあっても支えてくれる人や制度があるという社会が理想です。実現させていきたいです」

●次回は、公益社団法人・小さな命のドア代表理事でマナ助産院院長・永原郁子さんと、看護師で自民党・参議院議員の石田昌宏さんをゲストにお迎えします。

【番組インフォメーション】 『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!

●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/

●撮影/寿 友紀 

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