心身の声に耳を傾けながら、一歩一歩健やかに前進!~連載「はじめよう!フェムテック」
2022/12/26
2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀総編集長と東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。
<パーソナリティー>
●伊久美亜紀 Aki Ikumi
大学卒業後、出版社3社の編集部を経て、1995年ベネッセコーポレーションに入社。『サンキュ!』編集長を長く勤め、現在はK&Fメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務める。30歳の長女一人。
●東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった31歳。
<ゲスト>
●植野葉子 Hako Ueno
俳優、一般社団法人「スターエンジェルス」の代表理事 。東京都出身。15歳で宝塚音楽学校に入学し、68期として宝塚歌劇団に入団。9年間の活動を経て退団する。その後は、イギリス、アメリカ、ドイツ、日本の演出家と一緒に、tpt(シアタープロジェクト東京)の発足時からストレートプレイを中心に活動。中島みゆきさんの「夜会」を始め、小劇場やミュージカルなど、幅広く活躍する。2016年から、歌・芝居・映像・ダンス等、あらゆる表現を使った“hacopain(ハコパン)Live活動”をスタート。また、さまざまな国の演出家に教わり身に付けたシアターエクササイズを基に、「自分を知る!」「なりたい自分になる!」をコンセプトにした「Hako’s be exercise」を確立。ワークショップを開催している。https://www.herringbone.co.jp/
まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組の第2フェーズ。今回のゲストは、女優の植野葉子さんです。「宝塚は何度か観劇させていただいたことがあったので、元タカラジェンヌのご登場にワクワクしていました。植野さんは人生の分岐点で、“自分はどう感じているか”、自分の感情をしっかり見つめながら決断し、着実に歩んでこられた女性。発する言葉には説得力があり、自分が進むべき道に悩まれていたり、コロナ禍で生きづらさを感じているかたがたを、後押ししてくれるヒントがあふれているなぁと思いました」(伊久美)
華やかな宝塚から新たな道へ。誰にでも訪れる決断の時
■東島アナ「ゲストは元タカラジェンヌで、現在は、一般社団法人「スターエンジェルス」の理事長を務める植野葉子さんです。今回は女性が活躍する宝塚について、そしてセカンドキャリアについてお話を伺っていこうと思います。1日に2回公演があることも多かったそうですが、月経や女性特有の健康課題について、どのように乗り越えられていたのですか」
■植野「私は月経痛に悩まされていたので、毎月薬を飲んで何とか乗り切っていました。幸いなことに出演者は全員女性なので、周りに事情を理解してもらえたことは救いでしたね。当時は、“退団するまでの間、自分の子宮も銀行に預けられたら、月経痛もなくていいのにね~”なんて話をよくしていました(笑)」
■伊久美「本当に頑張られていたのですね。元気な時でも、舞台に立つプレッシャーや体力面でハードなのに、そこに月経痛まであると大変でしたよね」
■植野「常に“衣装が汚れてしまわないだろうか”という心配もありましたね」
■東島アナ「そんなご経験もされた植野さんですが、宝塚を退団後は、歌とダンスを封印し、ストレートプレーの世界で俳優として活動されていますが、華やかな宝塚の世界からのセカンドキャリアということで、不安はありませんでしたか」
■植野「退団の理由は、ある映画出演のお話がきっかけだったのです。23歳の時に、松竹映画からのオファーをいただいたのですが、宝塚はライバル会社になる東宝の経営なので、出演できないと思いました。その時、“今が退団すべきタイミングだな”と思ったのです。当時、不思議と迷いはありませんでしたが、若かったから決断できたのだと思います」
■伊久美「番組を聴いてくださっている皆さんの中にも、年齢に関わらず、セカンドキャリアについて悩まれているかたも多いと思いますが、その決断はよかったと思われますか」
■植野「いや、そうともいえないですね。同期が上級生になって、立派な役を務めている姿を見て“自分が続けていたらどうだっただろう? そちらの道へ進めばよかったかな”と思うこともありました」
■東島アナ「そういう思うことがリアルですよね。それでも、ご自身の道を進み続けてこられたのはどうしてですか」
■植野「“あの時決断したからこそ、今の自分がある”と思っているからです。中島みゆきさんを始め、退団したからこそ出会えた人々や貴重な経験があります」
■伊久美「そうですよね。いろいろなことが繋がっている。人生には“決め時”というのがあって、自分で選択していかなくてはならないですよね」
自分の正直な感情を自覚することが、対人関係のストレス軽減にも繋がる
■東島アナ「次のテーマは“コミュニケーション”についてです。現在、植野さんが理事長を務めていらっしゃる一般社団法人“スターエンジェルス”では、ご自身の演技、また俳優を育成されてきた経験から、生きづらさを感じている人々に向けて、前向きに毎日を過ごしていくためのヒントを伝えているそうですね。やはり、最近、生きづらさを感じている人が増えているのでしょうか?」
■植野「そうですね。皆さん、何に悩んでいるかといえば、コミュニケーションの問題だと思うのです」
■伊久美「コロナ禍を経て、ますますという感じでしょうか」
■植野「はい。対面しなくなったので、目と目が合わせることがなくなりました。そして、あまり声を出してはいけないので、おしゃべりもしなくなりましたよね」
■東島アナ「植野さんは、多くの人が感じているコミュニケーションの問題を、どのように改善しようとアドバイスされているのですか」
■植野「私は歌を教えていますが、生徒の目を見てレッスンをし、その人の体の状態をじっくり観察しています。歌には感情が流れるので“感情をどう受け取り、人にどう伝えたいのか”を考えてから、表現することが大切です。これは、まさにコミュニケーションの基本だと思うのです」
■東島アナ「歌が好きなかたは、歌で思いを伝えることもあると思いますが、日常生活の中で、誰もができる表現は挨拶ですよね」
■植野「挨拶といえば、私が“Hako’s be exercise”を始めるきっかけとなったのが、デビッド・ルフォーというイギリス人の演出家によるエクササイズだったのです。2人の人間が、部屋の端と端に立って、互いに“おはよう”といい合います。一方は、相手の気持ちが幸せになるように“おはよう”といい、もう一方は、相手に二度と顔が見たくないと思わせる感じで“おはよう”という。このやりとりを30回くらい繰り返すのです」
■伊久美「へぇ~! 演出家さんの狙いは、繰り返すことで変化する感情を自覚するということなのですか」
■植野「そうです。相手を幸せにしたいと思って挨拶をしたのに、相手から嫌な感じで挨拶された。その後の反応は“怒りが芽生えてきた”、“悲しくなって涙が止まらなくなった”など、十人十色です。いずれにしろ、全員が今まで無意識だった自分の感情を、このエクササイズを通して意識するようになりました。“おはよう”という一つの挨拶でも、言い方で全く違う感情が沸き上がるのです。私は、できるだけ相手が幸せな気分になるように挨拶をしたいと思うようになりました」
■伊久美「無意識なことを意識することは面倒かもしれませんが、このエクササイズに挑戦してみたいと思いました。相手と本気のケンカにならないか、少し心配ですが(笑)」
■東島アナ「日常生活の中で、無意識で感じているストレスが結構あるのですね。この番組は女性の健康について考える番組なのですが、植野さんは女性特有のストレスには、どのようなものがあると思われますか」
■植野「女性は男性に比べて、常に人に見られていることを意識していて、それがストレスになっていると思います。例えば電車に乗っても、両膝をくっつけて座ろうと思いますよね」
■伊久美「確かに! たまに男性で、180度くらい足を開いて座っているかたもいますが(笑)、うらやましいけれど、女性にはできないですよね~」
■植野「あとは、満員電車で、女性はスカートにヒールを履いているせいもあって、踏ん張って立っていられませんよね。肩幅より狭いスペースに立ちながら吊革につかまることなります。すると無意識のうちに肩が上がっているんです。私の生徒さんでも緊張すると肩が上がってしまうかたが多く、自分で肩凝りの原因をつくっています。あれ、肩上がってないかな?と思ったら、“上げて下ろして”を数回やってみると、力が入っていたことに気づけますし、ほぐせますね」
■東島アナ「今まで意識していませんでしたが、私も肩が上がっています!」
■植野「辛い態勢を続けなくてはならなかったり、私たちは無意識で感じている不具合を受け入れ、ストレスを溜めてしまっています。ですから普段から、意識的にほぐして和らげることをおすすめしています。リラックスしていれば、人の話もちゃんと耳に入るし、やさしく接することもできますよね」
■伊久美「心身ともに健康であるためには“今、どう感じているのか” “体調はどうなのか”など、自分の感情を客観的に見つめ直すことが重要ですね」
合言葉は「はじめよう!フェムテック!!!」
【番組インフォメーション】 『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!
●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/
●撮影/寿 友紀