“産後うつ“ はだれもがなりうる!もっと支援体制が必要~連載『はじめよう!フェムテック』
2024/03/03
2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀さんと東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。
番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。
<パーソナリティー>
●伊久美亜紀 Aki Ikumi
ライフスタイル・プロデューサー、企業コンサルタント。大学卒業後、『レタスクラブ』編集部、ハースト婦人画報社を経て、1995年~2022年までは、ベネッセコーポレーション発行のメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち・ねこのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務め、2023年に独立。31歳の長女一人。
●東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショーサタデー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった33歳。
<ゲスト>
●丸山真理子 Mariko Maruyama
東京都出身。産婦人科専門医、マンモグラフィ読影認定医。関西医科大学卒業後、神奈川・東京の産婦人科勤務を経て2019年1月に東京都中央区・八丁堀にEASE女性のクリニック開院。2022年2月イーズ病児・病後児保育室、イーズファミリークリニック本八幡開設。5歳と6歳の母。https://ease-clinic.jp https://ease-motoyawata.jp/
認知が広まりつつある「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートしたこの番組。ゲストは前回に続き、 EASE女性のクリニック 院長の丸山真理子さんです。「テーマは、すべての妊婦さんが当事者になる可能性がある“産後うつ”についてです。“今までの自分と違うなぁ”と感じたらどうするべきか、そして周りの人々はどう見守るべきか、丸山先生が前向きに考えられるお話をしてくださいました。きっと心強く感じ、安心できるリスナーのかたも多いと思います」(伊久美)
産後うつの症状に必要なのは “一人になれる時空間”
■東島アナ「今回のテーマは“産後うつ”です。近頃、だれもが耳なじみのある言葉になってきましたが、先生は、産後うつの認識を変えていくことが大切だと考えていらっしゃるのですね」
■丸山「はい。“すべての妊娠や出産がハイリスク”であることを、女性自身、妊娠をしている、していないに関わらず、また周りのかたを含め、皆さんに知っていただきたいと思っています。出産を経験された女性で、気持ちや体の変化、痛み、不眠、不安ストレスなど、一つも感じたことがないかたはいないと思います。ですから、だれもが当事者になるリスクを抱えています。ただ、行政の仕組みづくりや医療の範囲だと、どうしてもリスクを分類して方針を変えていくのが一般的で、すべてのかたに届けられる産後ケアが少なくなっています。ですから、産前産後ケアにおいて、妊娠や出産はリスクがあることをベースにした支援体制がつくられる必要があると思っています」
■伊久美「私も同感で大事なことだと思っています。前職で妊娠・出産・育児の媒体『たまひよ』に携わってきましたが、自分を責めてしまうお母さんが多いのですよね。真面目なかたであればあるほど、我慢をしてしまうようです。妊娠や出産は病気ではないし当たり前のことになっていて、ハイリスクであるという認識は薄らいでいるような気がします。もう一度、リスクがあることを、全員が留意する必要がありますね」
■丸山「女性は妊娠をすると、心身ともに変化します。特に産後は、ホルモンがジェットコースターのように変化します。日本では、何かトラブルがないと “妊娠・出産は病気ではない”という考え方になっていて、みなさんの認識もそうだと思います。ですから、“調子が悪いのは自分のせいではないか”、“自分がうまく対処できないからいけないのだろう”と思い、自分を責めてしまうかたが多いのだと思います」
■伊久美「この現状を理解した上で、支援体制が本当に必要だと思います」
■東島アナ「そうですね。皆さんの周りにも、思い当たる状況があるのではないかと思います。実際には、どのくらいの人が産後うつになるのでしょうか」
■丸山「診断基準を当てはめた場合には、10~15%と言われています。ただ、その診断に満たないかたや、一時的にうつ状態になっているかた、つらくても受診されていないかたは、もっといらっしゃるだろうなぁと感じています。出産によるダメージは、だれにでも起きますし、すぐに回復できるものではなく、最低でも回復に1年はかかります。心身のダメージで考えると数年かかるものもあるので、産休中だけが産後ではないと思います。産後何カ月か経過をしていると、産後うつではないと言われてしまうことが多いので、期間を限定しないで接してもらえる支援体制が必要だと思います」
■伊久美「先生のお話は希望になりますね。実はこの番組の収録前、先生に “産後うつはありましたか”とお伺いしたら、“今もそうかもしれません”とおっしゃったのです。5年たっても産後うつかもしれないのですよね?」
■丸山「はい。通常のうつのかたで、年単位で長く治療されているかたもいらっしゃいます。ですから産後うつだって、本来の自分を取り戻すまでに時間がかかってもよいのです」
■伊久美「本当に心強いお言葉だと思います。安心されるかたが多いと思うなぁ」
■東島アナ「なんとなく “産休・育休の1年以内に回復する” という感覚がありますよね。“休暇が明けたら、元通りの自分でいなくてはならない” と思ってしまいますが、そうではないという認識が必要ですね。仕事と家庭の両立を維持するために頑張ってしまうかたが多いですよね」
■丸山「本当に女性は頑張り屋さんのかたが多過ぎます」
■東島アナ「“あれ、なんだか今までと違う”、“なんとなくつらいなぁ”と感じたら、まず、何をするのがよいでしょうか」
■丸山「その思いを、誰かに話す、聞いてもらう、共有するということが大事です。そうすると、自分が感じていることを整理できるのです。人に相談すると悩みを解決できることもありますが、解決しようとまで思わなくてよいです。まずは、人に伝えてみることから始めてください。そして、一番大事なのは寝る時間より、一人になる時間をつくることです」
■伊久美「確かに2時間でも一人になると、心身ともに違いますよね。一時保育などを利用して、なんとか時間をつくるとよいですね」
■丸山「つい周りのかたちも “私が子どもを見ているから、横になって”などと言ってしまうのですが、そうではないです。一人の時間、そして空間を確保することが必要なのです」
■東島アナ「そのためには、パートナーや家族が、お母さんの産後うつを知る必要がありますね。気づくために何か兆候などはあるのでしょうか」
■丸山「これまで喜びを感じていたことを楽しめなくなる、表情が乏しい、笑顔が少なくなる、口数が少なくなる、言葉がきつくなる、などはうつの兆候です」
■東島アナ「もしそういった症状が見られた場合、家族はどうするべきでしょうか」
■丸山「過剰に元気を出させようとしたり、どこかに一緒に行き、リフレッシュさせようとしたりする必要はありません。とにかく時間が許す限り、お母さんが一人になる時間をつくってあげてほしいです。違う部屋に行くだけでもよいです。その後、お母さんがどういうふうに時間を過ごされるかは、人それぞれです。寝てもよいし、おいしいもの食べに行ってもよいし、遊びに行ってもよいです」
■東島アナ「どこかに相談することはできるのでしょうか」
■丸山「はい。“産後ケア施設”が、各地域に必ず設置されています。そこにはお子さんも一緒に連れて行くこともでき、お母さんも休めるところです。また、地域の保健師さんや産婦人科のクリニックなどでも、相談を受け付てくれるところはあるので活用してみてください」
■東島アナ「パートナーや家族が、心がけることはありますか」
■丸山「まず、産後うつのように妊娠前と変化する状態がやってくることを知っておいてください。次に、お子さんが生まれた後、時間を共有してほしいです。お母さんは子育てのベテランではないですし、産後うつは不安の中で生じるので、大変なことを理解しお母さんと一緒に歩んでほしいなぁと思います」
合言葉は「はじめよう!フェムテック!!!」
●次回は、生活情報誌『サンキュ!』編集長・山本沙織さんをゲストにお迎えします。
【番組インフォメーション】 『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!
●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。国内外を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やし、人物をテーマにした旅やウェルビーイング企画を、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/
●撮影/寿 友紀