「八十八夜」とは?2022年はいつ?新茶の歌、食べ物、慣用句まで解説
2021/12/17
八十八夜とは日本独自の暦・雑節(ざっせつ)の1つ。立春から数えて88日目を指します。
2021年は5月1日、2022年は5月2日が八十八夜です。
日本の暦といっても、八十八夜と聞いて思い出すのは「茶摘み」の歌だけという方も多いのではないでしょうか?今回は八十八夜について、この時期の旬のものや慣用句など幅広く解説していきます。
八十八夜はいつ?
国立天文台の発表によると、2020年~2022年の八十八夜は以下の通りです。
2020年5月1日(金)
2021年5月1日(土)
2022年5月2日(月)
八十八夜は立春から数えて88日目のため、立春の日が変われば八十八夜も変わります。また、閏年の場合には前の年より1日遅くなることもあるので、その年によって異なるものの、だいたい5月初旬に訪れるのが八十八夜です。
八十八夜とは?
八十八夜とは立春から数えて88日目のこと。日本独自の暦・雑節の1つです。
立春とは、昔の中国で生まれた太陰太陽暦「二十四節気(にじゅうしせっき)」の1つ。太陽の黄経が315°に達する日のことで、現行の暦でいうと2月4日~5日にあたります。
立春の日は太陽の動きに合わせて異なりますので、そこから88日目の八十八夜も年によって日にちが変わってきます。
立春は中国が起源の二十四節気、八十八夜は日本独自の雑節。二十四節気は日本の季節感と合わないところがあるため、補助するために作られたのが雑節です。雑節では農業の参考になるような季節の移ろいが表されています。
八十八夜の頃には寒冷地でも冷え込みがなくなり、霜がおりることもほとんどありません。八十八夜は農作物の種蒔きなどを行うことが多く、農作業を開始する目安の時期ともいわれています。
八十八夜はなぜ「夜」がつくの?
八十八夜は立春から数えて88日目。それであれば、「八十八日」でもよいはずです。なぜ八十八「夜」なのでしょうか?
はっきりとしたことはわかっていないのですが、一説では日本でもかつて使われていた「太陰暦」が理由だといわれています。現行の暦は太陽の動きを基準にした「太陽暦」ですが、太陰暦では月の満ち欠けが基準です。太陰暦で考えると、暦が一巡するのにかかる期間は29日~30日。月の満ち欠けが3巡すると88日になります。
太陰暦では夜に見える月を基準にしていたため、八十八夜と「日」ではなく「夜」を使った表現になったといわれているのです。
八十八夜を子どもに伝えるなら
「八十八夜ってどんな日?」と、子どもに質問されても、すんなり答えられる大人は少数でしょう。もし聞かれたときは、以下のように答えてみてはいかがでしょうか?
「八十八夜は立春という春が始まる日から88日目のことだよ。暖かくなってきた5月の初めで、お茶を摘んだりお米を植えたりするのにちょうどよい季節なんだよ」
八十八夜はお茶の季節。茶摘みの歌も解説
八十八夜と聞くと「茶摘み」の歌を思い出す方も多いはず。このため、八十八夜はお茶の季節というイメージが定着しているかもしれません。八十八夜とお茶の関係を解説します。
八十八夜「茶摘み」の歌とは?
八十八夜という言葉が登場する「茶摘み」の歌は、文部省唱歌(文部省が選定した教育用歌曲)として小学校音楽の教科書に掲載されています。子どもの頃に歌った記憶のある方も多いのではないでしょうか?
作者は不詳ですが、以下の歌詞からもわかるように、初夏の茶摘みの様子を歌っています。
「夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘みじゃないか」
八十八夜のお茶は縁起もの?
「八十八夜の新茶を飲むと、長生きできて縁起がよい」という言い伝えがあります。
お茶の収穫は1年に3~5回。そのなかでも、八十八夜はお茶の新芽が出始める季節。八十八夜前後に収穫された新芽で作られたお茶を「新茶(一番茶)」といいます。
言い伝えは昔の人の経験からきたものと思われますが、冬の間に蓄えた養分が詰まった新茶は旨みの成分(アミノ酸)を多く含んでいます。
1年に1度の新茶、淹れ方にもこだわって飲んでみたいですね。
日本のお茶の産地
お茶は日本のさまざまな地域で作られています。代表的な産地として思い浮かぶのは「静岡県」でしょう。静岡県はお茶王国として、何十年も日本国内のお茶生産量ナンバーワンに君臨しています。
ただ、近年急激に生産量を増やしているのは「鹿児島県」です。産出額では、2019年に静岡県を抜いて1位となりました。鹿児島の「知覧茶(ちらんちゃ)」という銘柄をご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
現在、静岡県と鹿児島県がお茶の2大生産地となっていて、生産量3位の三重県も合わせた栽培面積は全国の約7割を占め、出荷されているお茶の7割以上を占めています。
八十八夜の頃に楽しめる食べ物
八十八夜の頃に旬を迎える食べ物をご紹介します。この時期にしか食べられないものもありますので、季節を感じながらありがたくいただきたいですね。
びわ
淡いオレンジ色がかわいらしいびわは、産地によって旬が異なるフルーツです。日本で1番の生産量を誇る長崎県では、5月に露地栽培(屋外の畑での栽培)のびわの出荷最盛期を迎えます。八十八夜の時期にぜひ味わいたいですね。
ホタルイカ
ホタルイカも八十八夜の頃に旬を迎えます。富山県では3月1日がホタルイカ漁の解禁日ですが、4月から5月初旬が最盛期。釜茹でされたホタルイカは、この時期ならではのご馳走ですね。
水菜
鍋に入れることが多いため、水菜の旬は冬というイメージがあるかもしれません。しかし、実は4~5月頃に旬を迎える野菜です。八十八夜の時期は、水菜をサラダにして、シャキシャキした食感を楽しんでみてはいかがでしょうか?
水菜と鶏ささみの和風サラダ
八十八夜の季節に咲く花・植物
八十八夜の頃に見頃を迎える花や植物をご紹介します。
カーネーション
カーネーションは1年中花屋で見かけますが、4~6月に咲く花です。八十八夜からおよそ10日後は「母の日」なので、5月初旬からお店にカーネーションが並びます。
ハナミズキ
ハナミズキは背の高い樹木。公園や街路などで見かけることが多いかもしれません。白や淡いピンク色の小さな花は4月中旬~5月中旬に咲きます。
フジ
フジは桜の季節が終わったあとに見頃を迎える花です。地域によっても異なりますが、4月中旬~5月上旬に見頃を迎えます。花の色は紫と白が一般的。枝垂れて咲くフジの花を見上げると、とても迫力があります。
八十八夜にまつわる慣用句
八十八夜はいくつかの慣用句にも用いられています。よく使われる3つの慣用句をご紹介します。
八十八夜の別れ霜
「八十八夜の別れ霜」とは、霜が下りるシーズンが八十八夜頃に終わることを表した慣用句です。霜は農家の方にとって作物を傷める原因。八十八夜が過ぎると、少しずつ天候も定まり、霜の心配をせずに農作物を作ることができるようになります。
八十八夜の泣き霜
「八十八夜の泣き霜」という慣用句もあります。本来なら八十八夜の頃は霜の心配が不要になるのですが、最後の最後に霜がおりることも。八十八夜の時期は作付けを始めている農家も多いため、作付けを終えたあとに霜がおりると大きな損失になります。こういった農家泣かせの霜が「八十八夜の泣き霜」なのです。
九十九夜の泣き霜
「九十九夜の泣き霜」は、八十八夜から11日後である「九十九夜」になっても遅霜の被害を被ることを表した言葉。地域によっては季節外れの霜がおりることもあり、注意喚起をする意味を込めて使われてきました。農家にとってどれほど霜が大敵であるかが理解できる言葉ですね。
子どもと楽しむ八十八夜の過ごし方
八十八夜を子どもと一緒に楽しむとき、おすすめしたい過ごし方をご紹介します。ちょうど八十八夜の頃はゴールデンウィークで、子どもと一緒に過ごす時間が長くなる時期です。季節を感じながら、子どもと過ごす時間を楽しんでみませんか?
お茶を飲もう
八十八夜は新茶の季節。新茶は縁起物でもありますので、子どもと一緒に飲んでみましょう!普段お茶はペットボトルに入ったものを飲むことが多いかと思いますので、八十八夜は、お茶の葉と急須でお茶を淹れてみるのはいかがでしょうか。
「茶摘み」で手遊びをしてみよう
八十八夜といえば、「茶摘み」の歌。一緒に歌いながら手遊びをしてみませんか?子どもと向き合って歌いながら手を合わせるだけの簡単な遊びですが、意外と合わせるのは難しいもの。子どももきっと夢中になるはずです。
夏の準備を始めよう
八十八夜を過ぎると本格的に夏がやってきます。ゴールデンウィークの休みを利用して夏の準備をしてみてはいかがでしょうか?
たとえば、冬に使っていたこたつを片付けたり寝具や敷物を夏仕様にしたりします。夏に旬を迎えるキュウリやトマトなどの種を蒔いてみるのもよいですね。
まとめ
八十八夜について時期やお茶との関係、慣用句などを解説してきました。八十八夜は日本の農業と密接な関係のある言葉です。
新茶収穫の季節でもあり、ほかの作物の種蒔きや植え付けの時期でもあります。この季節は農家の方々へ感謝をしながら、子どもと一緒に夏の準備を進めたいですね。