75歳。小さな花を生けているだけで、世界中の人とつながるようになりました
2023/01/29
本当は引っ込み思案な性格。でも花のためだと、なぜか行動できるといいます。70年近くの野の花の歴とともに、花を通じて人とつながり、花を生けた部屋でのんびり過ごす時間がなにより幸せという日々を教えてもらいました。
<教えてくれた人>
徳島県 Kazuさん
75歳の主婦。13年に1年限定でブログ『野の花暮らし』をつづる。長男の妻にすすめられ、16年1月からインスタの投稿を開始。カメラとiPadを駆使しながらインスタを通じて世界中の人との交流を楽しんでいる。
Kazu Tokushima _ Instagram
https://www.instagram.com/nogiku55/
なんてことない場所にも、野の花は咲いています
ギアのついているスポーツ自転車にさっそうとまたがり、自然の豊かな方向へ、すーっと進んでいったKazuさん。その機敏さを見ていると、75歳という年齢を忘れてしまいそうなほど。
Kazuさんが向かうのは、家からほど近い神社の横にある小さな湿地帯だったり、幅1メートルほどの坂道をちょっと上った所に突如現れるため池だったり。少し時間があるときは、吉野川の川べりまで足を延ばしてみることも。
「好きな所がいっぱいあるのよ」。車で通り過ぎていたら見過ごしてしまうであろう、パッと見では何もない場所。でも、Kazuさんがその場所でこれから咲く花の様子とともに魅力を語ると、途端になんてこともない場所がキラキラした特別な風景に感じられるから不思議です。
取材時は、ちょうど桜が満開。その並木もきれいですが、Kazuさんは足元で顔を出す、たんぽぽやキンポウゲを指差して、とてもいとおしそうに目を輝かせます。その場所その場所に咲く季節の花が記された地図が、Kazuさんの頭の中には存在しているよう。
「実家の寺では、行事ごとに母が裏山に入り、姿のよい木の枝を切って生けていました。そんな様子を見て育ったせいか、気がつくと私も季節の花を探してくるようになっていましたね」。結婚後も、子どもを育てているときも、その子が巣立ってからも、家の中に花をきらすことはなく、野の花がある暮らしは、あたりまえにずっと続いています。
本当は引っ込み思案だけれど「花を生けたい」と思うだけで行動できた
30年ほど前のこと。自宅の最寄り駅の近くにKazuさん好みの喫茶店ができました。「マスターにお願いして、花を生けさせてもらうことになり、10年ほど続けました」。花生けは、近隣や自宅の庭で植物を選ぶところからスタート。花はメンテナンスも大事なので、喫茶店には毎日のように通うようになり、その様子を見てくれる人たちと縁が広がりました。自分の楽しみのために始めたことがたくさんの人との交流をもたらしてくれたのだそう。最近では、花を通じてつながった人たちと、それぞれの家のそばで見つけた野の花を持ち寄って、花を生ける会を楽しんでもいます。近くの図書館にも花生けをするようになりました。それも自分から声をかけて、生けることになったのだとか。
「本当は引っ込み思案な性格。でも花のためだと、なぜか行動できます」。インスタへの投稿をするのも、多くの人に花を見てもらいたいから。気がつけばKazuさんのファンが世界中にたくさん。好きなことをずっと続けてきたおかげで、Kazuさんは家のまわりにお気に入りの場所をいっぱい見つけることができ、世界中の人とつながることができました。「花を生けた部屋でのんびり過ごす時間がなにより幸せな時間です」。
#雑草じゃないんです
桜の美しさを愛でる一方、Kazuさんは足元のかれんな花も見逃しません。「ときどき一斉に刈られてしまうことがあるの」と残念そう。
#お気に入りの場所がいっぱい
孫と一緒にお気に入りの場所というため池へ。「母から受け継いだ植物を愛する気持ちが娘や孫たちにも自然に伝わっているんですよね」。
#野の花摘みの相棒
さっそうと紫色の自転車を乗りこなすKazuさん。「坂もけっこうあるから、ギアがあるような自転車じゃないとダメなの」。かっこいい!
#自然に囲まれた暮らし
長男の部屋だった場所を自分で改装してアトリエにしました。そのテラスからは山々が眺められ、いとおしい自然に囲まれた暮らしです。
#春を盛り込んだ缶詰
たんぽぽやつくしを生けて、春の缶詰とKazuさんが命名。雑草と呼ばれてしまう物も素敵なアレンジに。「これは孫が生けました」。
#スタジオ風のセッティング
花の写真はいつも、グレーの背景の前で撮影。海で孫に指示出ししながら拾った流木を敷いて、スタジオ風に。
※保護区等での草花の採取は禁止されている場合があります。事前にご確認ください。
参照:『サンキュ!』2022年7月号「わたしのHAPPYのつくりかた」より。掲載している情報は2022年5月現在のものです。photo:aya sunahara text:kyoko kato 編集/サンキュ!編集部