生まれながらの赤ちゃんのヒールと生まれの赤ちゃんを抱く母親のベクトル1ラインアートイラスト。リニアファミリーポートレット。ハートを持つ一行の手

子どもと女性を守れる社会にこそ明るい未来がある~「国際助産師の日」スペシャル③

2023/05/31

2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」をさまざまな角度から取り上げています。今回の連載では、5月5日「国際助産師の日※」のフェムテック スペシャル番組でオンエアされた内容をまとめてお伝えします。

※1992年、国際助産師連盟によって5月5日は「国際助産師の日」に制定されました。
助産師さんの仕事の重要性をたくさんのかたに伝えることを目的としています。

対談!参議院議員・石田昌宏さん×『小さないのちのドア』永原郁子さん

番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。

<ゲスト>
●石田昌宏 Masahiro Ishida
自由民主党所属の参議院議員。奈良県大和郡山市生まれ、兵庫県西宮市出身。55歳。東京大学医学部保健学科卒業後、保健師・看護師として、聖路加国際病院、東京武蔵野病院に勤務。衆議院議員秘書を経て、1998年から社団法人日本看護協会政策企画室長、2002年から日本看護連盟にて常任幹事や幹事長を務める。2013年参議院選挙比例代表(全国区)にて初当選。厚生労働委員会委員長、党女性活躍推進本部事務局次長などを歴任。

http://www.masahiro-ishida.com


●永原郁子 Ikuko Nagahara
公益社団法人小さないのちのドア・代表理事、マナ助産院・院長。1993年に神戸で助産院を開業し、これまで2200人以上の赤ちゃんを取り上げる。 2018年から赤ちゃんポストの理念を受け継ぐ『小さないのちのドア』をスタート。育てることができない女性の相談を24時間電話、来所などで受けている。また、性教育グループ「いのち語り隊」を立ち上げ、年間150カ所で命の大切さを語っている。

https://www.fesco.or.jp/winner/2020_55/winner.php?wid=12576

まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。

今回のゲストは、「国際助産師の日」のスペシャル番組にぴったりのお二人です。神戸市の一般社団法人小さないのちのドア・代表理事で、マナ助産院・院長の永原郁子さん。そして通常番組ではおなじみの御意見番、看護師で自由民主党・石田昌宏参議院議員です。

石田さんは、永原さんの活動に注目され実情をご覧になった経緯もあり今回の対談が実現しました。“赤ちゃんの命だけでなく、お母さんの人生を守る”という使命感をもって寄り添ってくださる助産師さんは、本当にありがたい存在です。

『小さないのちのドア』という名称に込めた思いとは!

■石田「これまでに、何度か永原さんにお会いして、実際に 『小さないのちのドア』 にも訪問させていただきました。今回は、この施設について、多くのかたに知っていただく機会になればと思います。まずは、どんな活動をされているのか教えていただけますか」

■永原「『小さないのちのドア』は、2018年9月に発足しました。思いがけない妊娠や育てることが困難な女性からの相談を24時間体制で受け付けています。相談を受ける中で、“住むところがない”、“頼る人がいない”という話が出てきた場合には、そのかたの衣食住、就職、保育所など、自立支援に向けてお手伝いもしています」

■石田「24時間体制というのは、大変ですよね」

■永原「そうですね。当時、妊娠相談を24時間受け付けているところは、『赤ちゃんポスト』がある熊本の慈恵病院だけでした。命に休みはありませんから、24時間受け付けることは当然だと思い始めました」

■石田「これまで、どのような相談があったのでしょうか」

■永原「“妊娠したかもしれない”という、10代の女性からの相談は本当に多いです。また、“育てることができない” “中絶をしなければならない” “中絶後、心が痛む” と電話をかけてくださるかたもいます」

■石田「家族や身近な人には、なかなか相談できないことですよね」

■永原「そうなのです。ほとんどのかたが“お母さんには言えない”とおっしゃいます」

■石田「妊娠・出産は、人生の中でとても喜ばしい場面です。それなのに、妊娠したことでパートナーや家族に見放されてしまう。産みたいと思っていても育てることができないから、喜びをあきらめ中絶を選択する。“喜びが人生を変えてしまうほどの悲しみになってしまうことを防ぎたい”とおっしゃっていた永原さんの言葉が印象に残っています」

■永原「愛からスタートしたのに時期を間違え、正しい知識がないことが自分の人生に大きな影響を与えてしまう。そういう結果は、悲しいと思うのです」

■石田「『小さないのちのドア』という名称なのですが、慈恵病院の『赤ちゃんポスト』のように、どうしてポストではなくドアにされたのですか」

■永原「ポストは赤ちゃんの命を守るところです。本当に最後の砦で、素晴らしい活動をされていて尊敬しています。ただ、私は助産師ですから、赤ちゃんの命も気になるけれど、お母さんの人生が気になるのです。お母さんが赤ちゃんを抱いて一緒に入ってこられるのは、ポストではなくドアです。“私たち助産師を信頼してください。守秘義務のもとお話を聞きます。どうぞ入ってきてください”という思いを込めました」

■石田「実際に伺うと、裏手に小さなドアがあります。それも、やはり意識してつくられたのですか」

■永原「“小さな”という形容詞は、“いのち”にではなくドアを形容しているのです。本当に身をかがめて入ってくるような“小さなドア”という意味で名付けました」

プロフェッショナルの力を結合し、24時間体制で母子を守る

■石田「助産師としてのご経験もあったと思うのですが、 『小さないのちのドア』の活動を始めようと思われたきっかけはあったのでしょうか」

■永原「助産院の開業以来30年間 、幸せなお産のサポートをしてきました。一方で、厚生労働省の発表では、新生児の殺害遺棄事件が毎年十数件報告されています。世間では罪を犯した女性を非難しますが、特別な女性ではないのです。安易なセックスをして妊娠し、だれにも言えないという状況の中で陣痛が起こって追い詰められたのだと想像できます。ですからいつでも相談できる場所があれば、赤ちゃんの命だけでなく、女性の人生も守られるのではないかと思い、24時間相談を始めました」

■石田「相談するというのも、なかなか簡単にできることではないと思います。ただ話を聞いてくれるだけではなく、本当に寄り添ってくれる人を求めている。多分、相談者ご本人が心を開くまでに時間がかかると思うのです」

■永原「その通りです。ツールは電話、メール、SNS、そして来所、すべて24時間体制でお受けしています。繋がったと思っても、すぐに電話やアカウントを切られてしまうこともあります。繋がらなくなると、“もうすぐ予定日なのに、どうしているのだろう”と本当に気になります。心配していると、やはり本人も不安になるので再び連絡があります。信頼していただくことで、やっと支援に繋がるのです。早めに相談してくだされば、よい形で支援ができるのですが、“どこの病院にも通院していない状態で陣痛が始まってしまい、行く病院がないから生んでしまった”というかたを、この4年間で23人、約2カ月に1人の割合で受け入れています。本当に冷や冷やドキドキしながら、幸いにもすべての命を守れています。そして、そのことが、私たちが活動を続けていく原動力にもなっています」

■石田「だれにでもできることではないですね」

■永原「相談の入り口は、やはり産科関係の知識がないとできませんので助産師、保健師、そして母子に強い看護師のかた、さらに一歩踏み込んだら福祉の分野なので、社会福祉士、そして、みなさんメンタルを非常に痛めていらっしゃるので心理士、それから法的な事柄も加わってくるので弁護士、そして産婦人科や精神科の医師も顧問として助けてくださっています」

■石田「本当に、プロフェッショナルの力を合わせて取り組まなければならない仕事ですね。そういった話を伺うと、私は政治家として多くのことを考えなければならないと思います。永原さんにお会いして実情がよくわかったのですが、“本当にどうしたらよいかわからない”と思いながらさまよう女性がいる。場合によっては、街の一角で生んでしまう可能性もある女性が、気軽に相談でき、成長のプロセスを一緒に歩めそうな専門家がいてくれることで、出産を喜びとして味わえるようになる。そういうサポートを、制度として確立しなくてはならないと、心から思いました」

■永原「はい。よろしくお願いします。胎児やか弱い妊婦さんが守られることは、この国にとって希望が与えられることです。女性が悲しんでいる社会は、次の時代も暗いですから」

●次回も、小さないのちのドア・代表理事の永原郁子さんと自由民主党・石田昌宏参議院議員をゲストにお迎えします。

【番組インフォメーション】 『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!

●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/

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