「無理をしない働き方」をどう考える?~連載『はじめよう!フェムテック』

2024/07/12

2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀さんと東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。

番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。

<パーソナリティー>
●伊久美亜紀 Aki Ikumi
ライフスタイル・プロデューサー、企業コンサルタント。大学卒業後、『レタスクラブ』編集部、ハースト婦人画報社を経て、1995年~2022年までは、ベネッセコーポレーション発行のメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち・ねこのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務め、2023年に独立。31歳の長女一人。

●東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショーサタデー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった33歳。

<ゲスト> 
●大室正志さん Masashi Omuro
1978年、山梨県生まれ。大室産業医事務所代表。 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社統括産業医、医療法人社団同友会産業医室を経て現職。メンタルヘルス対策、感染対策、生活習慣病対策など企業における健康リスク軽減にも従事する。現在、日系大手企業、外資系企業、ベンチャー企業など、30社以上の産業医を務める。

認知が広がりつつある「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートしたこの番組。今回のゲストも、産業医の大室正志さんです 「これだけ価値観や働き方が多様化する現在、“どうすれば、快適に生き生きと働くことができるのか”、大室さんに伺ってみました」(伊久美)

置かれた環境で頑張るのではなく、生き生きできる環境で働く!

■東島アナ「産業医の大室正志さんに、今回は “無理をしない働き方” について、お考えを伺いたいと思います」

■伊久美「これは重要ですね~」

■東島アナ「気になるけれど、難しいテーマですよね。自覚はなくても、無理をして働いてしまう人は多いと思います」

■大室「ある成長段階においては、“多少の無理もすべき” という声も聞きますし、それもまた一理あります。一方で、私は無理をしすぎて体調を崩してしまった人をたくさん見ていますので、常に働き方と持続性のバランスを考えてしまいます」

■東島アナ「無理を超えて限界に達してしまうのは、どういったことが要因だと考えられますか」

■大室「メンタル不調を起こしやすい人に多い考え方なのですが、“べき思考” というのがあります。日本人に非常に多いといれていますが、物事に対して “こうすべき、こうあるべき” と考えがちで、ある意味、自分に厳しいといえます。これは真面目でよい部分もありますが、悪くいえば手順にこだわる、頑固。また、他人が許せなくなってしまう傾向があります」

■伊久美「そういうかたがたは追い詰められ、どんどん表情が暗くなっていきますよね」

■東島アナ「そう思います。この番組のテーマ、フェムテックの視点ではどうでしょうか?」

■伊久美「女性というポイントに着目すると、“女性ならではのべき思考”というのもあると思います」

■大室「女性は、多分社会的抑圧だと思うのですが、どんなに仕事を頑張っていても、身なりをきれいにしていないと評価されにくいなど、“こうあるべき” というのが強いですね。子育て中のかただと、“お弁当をきれいに作って持っていくべき”。だから朝1時間早起きして睡眠が少なくなるなど…。私は子どもを入園前に、外国人が多くいるプレスクールに入れたことありました。お弁当持参だったのですが、外国人の子どもたちのお弁当を見ると、二つに割った皮の付いたままのりんごとパンだけを持ってきていました。一方、日本人のお母さんは、りんごをうさぎ型に切っているわけです。皮付きで二つに割るだけでいいのかと思った時に、“ここまでやらなくては!” という呪縛が、日本人にはあるのだと思いました」

■東島アナ「“べき”から解放されたいという気持ちは、多分、皆さんおもちだと思うのですが、解放となると、何かで手を抜くとか、少しネガティブなことのように捉えてしまう人が多いのでしょうか」

■大室「生活の中で優先順位をつけ、“どこで手を抜くか”を戦略的に考えることは重要です。アスリートのコーチに聞くと、一番大事なのは、休憩のつくり方だといいます。休むということは非常に戦略的な行為で、“どれだけうまく休憩をとるか” ということも一つの仕事なのです。一方、アメリカには “男性は強くなくてはいけない” “常にポジティブでいなくてはならない” という、独自の同調圧力がある。ただ、これはビジネスのシーンでは、そういうかたのほうが成果を残しやすい傾向があることは否めません。ただ、全員がポジティブになるべきだと考えるとしんどくなる。ですから、私は、しんどくなってネガティブにならない環境がつくれればよいのだと思います」                                                                                                                                             
                               

■東島アナ「環境とは、具体的にどのようなことでしょうか」

■大室「環境は非常に大事です。全員が適用するのは難しいことですが、今なら自由に働き方を変えられる時代ですから、自分が無理しなくても働けそうな場所を探すこと!それがポジティブな気持ちになる環境設定といえます」

■伊久美「ある意味チャンスですよね」

■大室「そうですね。“自分を置かれた場所で咲きなさい” ではなく、“咲く場所に自分を置きなさい” ということです」

■伊久美「置かれた場所で咲けなかったら、キツイですものね」

■大室「キツイです。終身雇用制度で、会社を辞めることが大きな社会的なマイナスになっていた時は、“置かれた場所で咲く”と考えた方がマシだったのです。ただ、今のように動ける社会の中では、“咲く場所に自分を置く” 方がメリットとして上回っていると思います」

■東島アナ「企業としてはポジティブな環境設定をすることは必要でしょうか」

■大室「少なくとも、ネガティブな方向に行き過ぎない組織をバランスすることが大事です。一例を挙げますと、私の友人が経営する会社では、嫌みな質問を禁止しています。我々はどうしても、嫌みを疑問形でいうことが多いと思います。“これって確認しましたっけ?” という具合に。疑問形にしなくても、 ”これは確認しましょう” でよいですよね」

■東島アナ「確かにそうですね!」

■大室「このように会社としてコミュニケーションの仕方を決めている。嫌みな質問をする人が浮いてしまいますから。結果、会社の雰囲気がよくなると、友人はいっていました」

■伊久美「どこまでを嫌みとして捉えるかは難しい部分もありますが、その会社では、ルールとして明文化している、それはいいことですね」

■大室「会社の看板に書いてあればみんなも避けるようになるので、ストレートで明快なトークになるということです」

■東島アナ「これは、以前も大室さんがおっしゃっていた、“企業の中で心理的安全性を保つ”ということにつながっていくのでしょうか」

■大室「そうですね。心理的安全性は非常に重要だと思います。この言葉は、よくGoogleなどが発信していて、本来、“お互いにずけずけものをいっても、あまり腹に残さない。スポーツのようにカラッとした議論で、パフォーマンスが上がる”というイメージなのです。ただ現状では“お互いに遠慮し、傷つくことをいえない環境”になってしまっている。非常に流行っている言葉なのですが、解釈が違っているのです」

■伊久美「ずけずけいうのは、信頼関係がベースにあるからだと思います」

■東島アナ「なるほど。言葉の届け方も参考にしたいです。勉強になりました」

合言葉は「はじめよう!フェムテック!!!」

●次回は、生活情報誌『サンキュ!』の山本沙織 編集長です。

【番組インフォメーション】 『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!

●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/

●撮影/寿 友紀 

 
 

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