仏壇・お墓での線香のあげ方、正しい手順とNGマナーを解説
2019/02/06
「お線香に火をつけるときのマナーは?」「お線香をあげるときの本数は?」「お葬式の焼香はどうやってやるの?」などなど。お線香のあげ方は、わかっているようでわかってないかも……。そこで今回は、仏壇とお墓でのお線香のあげ方、お葬式での焼香の仕方について、冠婚葬祭アドバイザーの中山みゆきさんに教えてもらいました。
「お線香をあげる」「焼香する」、どっち?
お線香には大きく分けて「線香」と「抹香」「焼香」があり、「線香」は「線香をあげる」、「抹香」「焼香」は「焼香する」と区別する場合もあります。
「線香」は普段仏壇やお墓まいりのときに使われている細い棒状のもの、「抹香」は細かい粉状のもの、「焼香」は刻んだ香木や香原料を調合したもので、通夜、葬式、法事などで使われます。通夜、葬式、法事などでも「線香」が使われる場合ももちろんあり、この場合は「線香焼香」と言われます。
お線香をあげたり、焼香する意味とは?
お線香を焚く意味はいろいろあります。まず、お線香の香りは故人の食事です。亡くなってから四十九日間は、お線香をずっと途切れなく焚きます。これは、故人が仏の世界に旅立つまで、お線香の香りが食べ物となるからなのです。お線香を焚くことで、生きている私たちと周りの空間が清められるということもあります。そして、お線香の煙を介して故人とお話ができる大事なツールとなるとも言われています。
仏壇でお線香をあげるときの正しい手順
仏壇へのお線香のあげ方は地域や宗派により違いがありますが、一般的な流れは下記のようになります。
1.まず仏壇の前に座ります。数珠を左手で持ち、仏壇に向かって一礼、そして合掌します。
2.ろうそくの火がついていないときは、マッチかライターでろうそくに火をつけます。お線香の火はろうそくでつけ香炉に立てます。
※宗派により、立てずに寝かせて焚く場合もあります。
3.お鐘(りん)を鳴らして、合掌し、一礼します。
※浄土真宗本願寺派ではお線香をあげる時、お鐘(りん)は鳴らしません。なぜなら読経する時にだけ使うからです。
お墓でお線香をあげるときの正しい手順
お墓まいりで線香をあげる手順は、下記のようになります。
1.お墓の前で軽く一礼します。
2.墓石に打ち水をします。
3.花立に水を入れて生花を添えます。ご先祖さまへの水を入れる水鉢がある場合は、水鉢に新しい水を注ぎます。
4.故人の好物だった菓子・果物などをお供えします。
5.ろうそくに火をつけます。火をつけたろうそくを少し傾けて地面にろうを垂らし、そこにろうそくを立てると安定します
6.ろうそくからお線香に火をつけます。
7.水桶からひしゃくで水をすくって、墓石にかけます。この時に墓石の下のほうに気持ち程度に水をかける方がいますが、たっぷり墓石の上から水をかけて下さい。
8. 合掌し、一礼します。
宗派によりお線香の本数、置き方は違う
お線香の本数は宗派により異なり、また、宗派によってお線香は立てずに、香炉の大きさに合わせて寝かせて焚く場合もあります。
●浄土真宗本願寺派(西)
お線香1本を2つに折り、その2本に同時に火をつけ、香炉の中に横に寝かせて置きます。
●浄土真宗大谷派(東)
お線香1本を火をつけないで折って、そのまま香炉の中に横に寝かせて置きます。
●浄土宗・曹洞宗・臨済宗
お線香1本に火をつけ、香炉の真ん中に立てます。
●日蓮正宗
お線香1本を香炉の大きさに合わせて2、3本に折って、火をつけ、香炉の中に横に寝かせて置きます。
●天台宗・真言宗
お線香3本に同時に火をつけ、香炉の中に立てます。仏壇の方に2本、こちら側に1本と逆三角形になるように立てます。
全部覚える必要はありません。もし、弔問先の宗派がわからなかったら、自分の宗派と同じようにしても大丈夫です。
お線香に直接火をつける・息を吹きかけて消すのはNG
たまに、ライターにそのままお線香を近づけて火をつけている人が見かけますが、これはNGです! 必ず、ろうそくに火をつけてから、ろうそくからお線香に火を移します。お線香に火が移ると、少し火が大きくなりますね。その火を息を吹きかけて消すこともNG。お線香を持つ逆の手であおぎ消すようにしてください。
人の口は、「悪行をつみやすく汚れやすい」ものとされ、その口で息を吹きかけては仏様に失礼であるとされているからです。きちんと意味があるので、失礼なことをしないように注意しましょう。
お葬式などでの焼香の仕方
通夜、お葬式などでは、「抹香」「焼香」で焼香をします。左手に数珠をかけて、右手の親指、人指し指、中指の3本で「抹香」または「焼香」をつまみ、目の高さまで持ち上げます。このことを「おしいただく」と言います。そして指でこすりながら隣にある香炉の中に落とします。
【焼香の仕方】〜座敷に座った「座礼焼香」の場合〜
1.立ち上がらずに、ひざをついたまま両手を軽くひざの脇につけて、体を軽く浮かせながら進みます。焼香台の前で、遺影と位牌に向かって一礼、そして合掌します。
2.左手に数珠をかけて、右手で焼香します。
3.再び合掌して、遺族に一礼。霊前に向いたままでひざをついて後ろに下がり、自分の席に戻ります。
焼香には「座礼焼香」のほか、立って行う「立礼焼香」、順番に香炉を回して自分の席で行う「回し焼香」があります。
※「回し焼香」は、自宅で行うお葬式や法要でする形式です。
宗派別に焼香の回数は違う
焼香の回数は宗派により異なり、または「おしいただく」ことはせず、低い位置から落とす宗派もあります。
●浄土真宗本願寺派(西)
焼香回数は1回。おしいただくはしない。低い位置から落とす。
●浄土真宗大谷派(東)
焼香回数は2回。おしいただくはしない。低い位置から落とす。
●浄土宗
焼香回数は1〜3回。おしいただく。
●曹洞宗
焼香回数は一般的に2回。おしいただく。
●臨済宗
焼香回数は主に1回。おしいただくかどうかは、特に決まりはありません。
●日蓮正宗
焼香回数は1〜3回。おしいただくはする。
●天台宗
焼香回数は主に回。おしいただくかどうかは、特に決まりはありません。
●真言宗と
焼香回数は3回。最初の1回のみおしいただく。
通夜、葬式の「線香焼香」のやり方や本数などは、先の「仏壇でお線香をあげるときの正しい手順」、「宗派によりお線香の本数、置き方は違う」の記事を参考にしてね。
まとめ
宗派によって、お線香の本数やあげ方が違うのですね。少なくとも、自分の実家や夫の実家のことは覚えておきたいですね。訪問先では、「お線香のあげ方がわからないのですが」と、正直に言って教えてもらってもOK。また、お葬式などでは、喪主の焼香の手順をしっかり見ておくといいでしょう。
教えてくれたのは・・・中山みゆきさん
冠婚葬祭アドバイザー。All Aboutで冠婚葬祭サイトの運営に携わる。現在は、その知識を生かして冠婚葬祭関連のアドバイス活動を重ね、「思いやり」の心を大切にした情報を発信中。
取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)