夏の水遊び、子どもの水難事故を防ぐために知っておくべきこと
2018/08/09
暑い季節は水辺で遊ぶ計画を立てているファミリーも多いことでしょう。一方で、水難事故の報道も毎年絶えません。昨年(平成29年度)の水難事故は1341件、死者・行方不明者は合わせて679人でした。水難事故死亡者はここ10年で減少傾向ではありますが、夏は水難事故件数が特に多い季節。水辺に出かける際の注意点を専門家に聞きました。
子どもが安全に遊ぶためのポイントは?
アウトドアナビゲーターの渡部郁子です。夏はアウトドア、冬は温泉をテーマに、日本だけでなく海外にも足を伸ばして取材活動を続けています。夏は川遊び、海水浴など、水辺で遊ぶ機会が多くなる季節。子どもが安全に水辺で遊ぶためのポイントについてまとめます。
ライフジャケットの着用が命を助ける!
子どもも大人も、ライフジャケットがあるととても安心です。何をおおげさな、と思うかもしれませんが、大人の場合、川や海などで行うヨット、カヤックなどウォーターレジャーの際は、ライフジャケットの着用が基本ですし、同様に、海水浴や川遊びなどの際は、子どもにライフジャケットを着用させるという意識が、日本でも広まりつつあります。
海外では、プールでもライフジャケットを着用するのが当たり前となっています。子どもの場合は、アームリングでも構いません。水遊びの際は、ライフジャケットかアームリングを準備しましょう。
浮き輪は選び方や使い方を間違えると危険
プールで遊ぶときも、混雑しているときは特に、ライフジャケットかアームリングをつけましょう。プール遊びの場合、日本ではまだまだ、浮き輪で楽しむ人を多く見かけますが、小さい子どもの場合、浮き輪は少々危険です。すっぽり抜けてしまったり、ひっくり返ったりして、予期せず身体から離れてしまう可能性があるからです。
かと言ってライフジャケットでは大げさすぎる、という場合は、アームリング、アームヘルパーなどと呼ばれる、腕につけるタイプの浮き輪を準備してあげましょう。
ポイントは、サイズが合っていること。装着する場所を間違えないことです。サイズが合っていないと、通常の浮き輪と同様、すっぽりと抜けてしまうことがあるし、腕の上部につけないと、顔が沈んで溺れてしまいますので注意してください。
海水浴での注意点
海で遊ぶときは、必ず「ライフセーバー」のいる海水浴場を選びましょう。空いているからと言って、遊泳禁止場所などで遊ぶことは危険です。特に、潮の流れなどの注意書きはよく読んで、避けるようにしましょう。
また、海で生きものを見つけたときは、なるべく触らないこと。クラゲやカサゴ、エイなど、毒を持ち、刺してくる生きものは特に注意。近寄らない、触らないことが、刺されない秘訣です。
川遊びでの注意点
どんなに浅い川でも、ライフジャケットやアームヘルパーをつけましょう。子どもは水深10cmでもおぼれます。川底は滑りやすく、歩きにくいものです。けがをしやすいので、特に注意が必要です。足を取られて倒れ、流されたり、いきなり増水する危険もあります。
川では突然の増水にも注意。前日雨が降った、上流で雨が降っている、上流にダムがある、など様々な理由で、川が増水することがあります。上流の天候にも注意が必要です。
中州で遊ぶのも避けたいところ。突然の増水時に逃げ遅れる危険があるからです。増水した場合にどこに退避するか、事前に周辺を確認しておきましょう。
プールでの注意点
混雑しているプールは監視員の死角が多くなるため、大人が子どもから目を離さないように気をつけましょう。プール内に段差がある場所や、流れるプールなどは、特に注意が必要です。
私自身が未就学児の頃、プールで浮き輪をつけていておぼれたことがあります。ちょっと気を抜いたら、浮き輪から体が抜けてしまったのです。何が起きたかわからず、声を上げることも暴れることもないまま、体がスーッとプールの底に沈んでいく感覚だけ覚えています。すぐ目の前にいた親が気づいて、引き上げるまでの時間はほんの2~3秒だったそうで、人間はたった数秒でおぼれるということを、身をもって知りました。
子どもから目を離さない
海にせよ川にせよプールにせよ、水辺で遊ぶときは子どもから絶対に目を離さないようにしましょう。たった数秒でおぼれることがあります。浅瀬であっても安心はできません。子どもだけで遊ぶことは避け、大人がいつも一緒にいるようにしましょう。
もし溺れている人を見つけたら……
救助しようとあわてて飛び込まないようにしましょう。おぼれている人を泳いで救助するのは、訓練を積んだプロでも難しいと言われています。まずは水に浮くものを探して、遭難者の近くに投げるなどの救助方法を考えましょう。
まわりに知らせて協力者を集めたり、ライフセーバーや119番などへ救助の要請をすることで、助けられる可能性が広がります。
大人も水難事故には注意!飲酒後の水遊びは絶対NG
じつは水難事故の死者数は、未就学児、小、中学生あわせた子どもよりも、断然大人のほうが多いのです。とくに、飲酒をするとおぼれる危険が高まります。飲んだら泳がない、水に入らない、救助しようと飛び込まない、などの徹底が必要です。
暑い季節は、大人だって子どもだって、海や川やプールで水遊びをしたくなるものです。身を守る装備をそろえて、どうか安全に楽しんでくださいね。
◆監修・執筆/渡部郁子
アウトドアナビゲーター、温泉ソムリエ。JFNラジオ「JOYFUL LIFE」ほか、山と温泉と音楽をテーマに「人生を豊かにする情報」をさまざまなメディアで発信中。子どもにやさしい温泉や山、フェス情報など、子どもと一緒に楽しむアウトドアスタイルを提案している。