【30℃以下でも注意】熱中症になりやすいのはどんな「暑さ」?気温だけじゃない注目ポイントを気象予報士が解説
2023/08/07
熱中症になりやすい日とは、どんな日でしょうか。
もちろん暑い日であることに違いありませんが、じつはその「暑さ」にはいろいろなパターンがあり、なかにはふだんよりも熱中症に警戒すべき「暑さ」が存在します。
今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、熱中症を防ぐために注目すべきポイントを教えてもらいました。
熱中症の危険度を決めるもの
夏の間はよくテレビのニュースなどで「熱中症に警戒」といった報道を目にしますが、こういった注意喚起は単純に気温が高いからという理由だけでされているわけではありません。熱中症の危険度が決まる過程では、3つの要素が計算に使われています。
気温と、湿度と、そして輻射(ふくしゃ)と呼ばれるものです。
この3つのデータをもとに暑さ指数(専門的にはWBGTと言います)が計算され、指数が大きければ大きいほど危険度が高いとして、行政やマスコミから注意が呼びかけられています。
体の冷却機能を邪魔する「湿度」
湿度の高い日は、単に気温が高い日よりも熱中症になりやすい…、なんとなく感覚的に知っていることですが、どうしてでしょうか。
そもそも人間の体は生きているだけで熱をどんどん生産しているので、常に体を冷やし続ける必要があります。体を冷やすための重要な機能が、汗です。より正確に言うと、かいた汗が肌から蒸発することで熱を奪ってくれることで、体を冷やすことができます。
では、湿度が高いとどうなるでしょうか。
もともと空気中に水蒸気がたくさんある状態では、もう肌から空気中へと水分が蒸発していくことができません。つまり、湿度が高い状態は、体の本来の機能を邪魔してしまうのです。
じつは気温だけを考えると、熱中症とみられる症状で救急搬送される人の数はおおむね30℃くらいから増え始めます。ところが湿度が高い日に注目すると、28℃くらいから増加していて、30℃を下回る日でも注意が必要なのです。
「今日は暑いだけじゃなくてむしむし感じるな」と思ったら、いつも以上に熱中症に気をつけましょう。
体を直接温める「輻射」
「輻射(ふくしゃ)」というのは聞き慣れない言葉ですが、ごく簡単に言うと、太陽のような高温の物体が離れた場所にあるものを温める働きのことです。
たとえば冬の寒い日に、気温が非常に低かったとしても、日ざしさえ当たっていればなんとかしのげる…ということがありますよね。これは太陽の光が直接私たちを温めてくれているためです。
同様に、夏のそこまで気温が高くない日でも、日ざしが強いだけで熱中症の危険度が高まることがあります。
しかも、都市部では日ざしがビルの側面やコンクリートの地面に反射されて増幅されるため、輻射の効果がさらに高まります。
日ざしが強い日だけでなく「日ざしが強まる場所」でも、熱中症には一層の注意が必要なのです。
天候と体調の両面に注目して熱中症を防ごう
今回は熱中症になりやすい天候、つまり熱中症になりやすい「暑さ」の種類に注目して見てきましたが、まったく同じ「暑さ」でも熱中症になりやすい体の状態の日とそうでない日があります。
疲れている日、睡眠不足の日、朝食を食べていない日などは、体の冷却機能がうまく働かず、熱中症の危険度が高まります。
また、30℃以上の気温が何日も連続すると、連続した後半の日ほど、熱中症とみられる症状で救急搬送される人は増える傾向に。暑さによる疲労が体に溜まって、前日に平気だったはずの人も同じような天候で翌日には熱中症になってしまうことがあるためです。
長引く残暑を乗り切るために、熱中症につながりやすい湿度や日ざしといった「暑さ」の要素をチェックしつつ、自分自身や家族の体の状態にも注意しながら、熱中症対策をしていきましょう。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。