オンもオフも女性であることに誇りをもち、活躍できる社会へ~連載『はじめよう!フェムテック』

2023/08/18

2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀さんと東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。

番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。

<パーソナリティー>
●伊久美亜紀 Aki Ikumi
ライフスタイル・プロデューサー、企業コンサルタント。大学卒業後、レタスクラブの編集部、ハースト婦人画報社を経て、1995年~2022年までは、ベネッセコーポレーション発行のメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち・ねこのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務め、2023年に独立。31歳の長女一人。

●東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショーサタデー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった32歳。

<ゲスト>
●桐山三千代さん Michiyo Kiriyama
KIRI3(キリスリー)株式会社代表取締役社長。東京藝術大学美術学部デザイン学科を卒業後、フジテレビに入社。美術デザイナー、美術プロデューサーとして、『めちゃ2イケてるッ!』『はねるのトびら』『ピカルの定理』『あいのり』など、数々の人気バラエティ番組を担当。2022年に退社後、広告代理店・KIRI3(キリスリー)株式会社を設立。2023年4月にはファッションブラがンドを取り扱う会社も立ち上げる。プライベートではフジテレビに勤務する夫と社会人になった娘が一人。

まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートしたこの番組。ゲストは、広告代理店キースリー株式会社の代表・桐山三千代さんです。2022年、桐山さんは長年勤めていたフジテレビを退職し50代で独立され、意欲的に活動されています。「セカンドキャリアを考えているリスナーのみなさんにも、参考になるはずです」(伊久美)

仕事と家事の切り替え術と女性が働く環境の変化

■東島アナ「ゲストは、元フジテレビの美術デザイナー、美術プロデューサーで、現在はKIRI3株式会社代表取締役社長の桐山三千代さんです。フジテレビ時代は、ご主人も同じ会社にお勤め、お子さんもいらっしゃる中で、家事の分担はどのようにされていたのですか?」

■桐山「主人はお米もとげないくらい家事がまったくできない人。私がいない時間、子どもはベビーシッターさんにお願いしていたのですが、家政婦さんではないので、ご飯の支度や掃除、洗濯は自分で行っていました」

■東島アナ「できるものなのですか!?  美術のお仕事は、夜の時間帯に作業が多いですよね?」

■桐山「はい。ですから、睡眠時間を削らないと家事はできませんでした。私自身、“家事は自分で行いたい”という意地がありました。特に娘のことは、ベビーシッターさんにも随分お世話になりましたが、自分が働いていることで、娘に恥ずかしい思いをさせたくなかったので」

■伊久美「ワーキングマザーが増え続けている中、ひとりで家事全部を担うワンオペの女性も多いです。その多くのワンオペのママたちにお会いしてきましたが、働いているからこそ、子育ても家事もきちんとこなしたい、とみなさんがおっしゃいます。でも、現実的にはとてもきついことだと思います」

■桐山「私の場合は、働くことが息抜きにもなっていたのかもしれません。通勤中の15分間、いつも車の中で心をリセット。大声を出したり、泣いたり、外に出せない感情を発散していましたので、変なドライバーと思われていたんじゃないかな(笑)。会社に着いた時に、ひどい顔をしていることもあったと思います。そんな時、仕事仲間が “今日どうしたの? なんか暗いじゃん?” などと声をかけてくれました。ああ、こんなことではいけない。私が笑って頑張っていないと、この現場は上手くいかないから” と仲間のおかげで気持ちが切り替えられたのです。振り返ってみると仕事があったから乗り切れたのだと思います」

■伊久美「15分でもよいので、毎日リセットの時間をつくり発散すること。これは、みなさんにとってヒントになるのではないでしょうか。オンとオフの切り替え(心のリセット)が大切ですよね。今、桐山さんのワンオペ時代と比べて、女性が働く環境にも変化を感じますか?」

■桐山「今は女性が結婚や出産をするにあたって、きちんと休暇を取れるようになりました。私が休むことができなかったのは、番組のシフトが変わらないので、自分が休むと番組に穴をあけてしまうという責任感からでした。今はシフトも変えていただけます。この番組は他の人に任せても、戻ってきた時に自分の居場所があるから、安心して子どもを産める環境なのです。結婚して出産し、また戻ってきてバリバリ働いているかたも増えています」

■東島アナ「桐山さんの先輩で、出産を経験され、その後働き続けているかたはいらっしゃいますか?」

■桐山「美術部門では、私が初めてでした」

■伊久美「第一人者だったんだぁ、素晴らしい! きっとみなさん、桐山先輩のおかげで今があると思っていらっしゃるでしょうね。ご自身で道を切り開かれてこられたわけですが、女性が働きやすい環境を作る上で、企業側に必要なことは何だと思われますか」

■桐山「“いたわりの心” ではないでしょうか。事情を理解して番組のシフトを変えてくださる事例などは、働いている私たちのことを一つのピースではなく一人の人間として理解していただいている。リスペクトしてくださっている証だと思います。そもそも男性と女性では体のつくりが違いますよね。女性には月経など病気ではないけどつらい体調不良もあるので、その事情を企業側が理解してくださることが必要だと思います。今は管理職にも女性が増えて、立場を主張できるようになったこともあり、職場環境が変わってきているのでしょうね」

■伊久美「この番組ではさまざまなゲストのかたをお招きしているのですが、フェムテックを推進する上で、大切なのは “いたわりの心” だという話は多くのゲストのかたから伺います。企業側も“女性と男性の体の違いについて理解を深めるべきである”というムードにはなってきているので、期待したいと思います!」

セカンドキャリアに進む前に、自問すべきことは?

■東島アナ「長年勤務したフジテレビを退社し、起業されようと思ったのは、何かきっかけがあったのですか」

■桐山「私が働いていた部署の改編があり、業務の内容が変わってきました。思うような仕事に携わることができないと感じていたところ早期退職の募集があり、申し込みました。2022年の3月に退社しました。ですから、まだ起業して1年余りですが、この4月に2つ目の会社を立ち上げました」

■東島アナ「“自分のやりたいことを実現できる方向へ進みたい”という気持ちは、理想としてはあるのですが、いざ辞めるとなると相当な決意が必要ですよね」

■桐山「そうですね。今でも、未練はありますよ。主人はまだフジテレビに残っていますし、大好きな会社ですから。ただ、“めちゃ2イケてる”という番組が20年以上続いて、番組が終了した時に、自分の中にあった情熱の炎がいったん消えてしまったのです。それから、ずるずるとやりたいことを探しながら会社にはいたのですが、再び情熱がよみがえってくることはありませんでした。このままい続けても、私は会社のお役に立てないなぁと思いました」

■伊久美「“情熱の炎が消える”というのは、すごくわかります。私も前職のベネッセコーポレーションが大好きで、その気持ちのまま卒業したのですが、桐山さんと同じような感覚でした。情熱の炎が少しずつ消えていって、年齢も重ねていくので、ピーク時のパフォーマンスができなくなり、あまり会社のお役に立てないと感じることもありました」

■桐山「あとは、以前は100%の力を出し切って仕事をしていましたが、だんだん慣れてきて偉くもなっていくと、30%とか20%の力でこなしていけてしまうようになり、それがちょっと歯がゆいと感じました」

■東島アナ「経験値でできてしまうのでしょうね。退職されることに対して、ご家族の反応はいかがでしたか」

■桐山「主人は同士のように同じ会社で働いていたので、さみしがっていました。ただ、“やりたいことができないのなら、ママにはいつまでもイキイキとしていてほしいから辞めたら”と言ってくれました。ただ一軒家を建てようと思っていた時期で、ローンに対しては、ぐちぐちと言われましたけどね(笑)」

■伊久美「“ママには、イキイキしていてほしい”、そういう言葉を、ご主人が言ってくださるなんて、素敵ですね」

■桐山「そうですね。子育ても家事も私が行っていたのですが、いつも主人が精神的に支えてくれました。そして、会社を辞めてから、いっそうそのことを感じています。“僕がサラリーマンでいるから、ママは好きなことをやれば”と言ってくれるのです」

■東島アナ「うれしいですね。リスナーの中にも、仕事や転職で悩んでいるかたがたくさんいらっしゃると思うのですが、桐山さんと伊久美さん、パワフルな女性たちを前に、私がすごく親近感を覚えたのは、“会社に未練はありますよ”っておっしゃったところですね」

■桐山「自分が会社を辞め、次に一歩踏み出す勇気や労力は、ものすごくパワーが必要ですよね。私が今ここに立っているのは自分のためではなく、“仕事相手や周りのかたがたのために、私が何かできることはないだろうか?” という思いからです。自分だけのための仕事なら、辛ければ諦めてしまうと思うのです。でも、だれかのためであれば “もうちょっと頑張ってみようかな” という思考が生まれてきます。“人のため”という思いを大事にしたいですね」

■東島アナ「伊久美さんは、リスナーの皆さんに向けて、何かアドバイスはありませんか」

■伊久美「桐山さんの助言は、本当にその通りだなぁと思います。もう一つ、私が何か挙げるとしたら、会社が嫌になったから辞めるのではなく、感謝しながら次へ進めるかどうかが大事だということかな。今いるところが嫌だから辞めるという理由ならば、次の職場でも同じようなことが繰り返される可能性があると思うのです。今までの環境に感謝しながら、次のステップに踏み出すことで自分がより成長できるイメージを持てた時が、チャレンジのタイミングなのではないでしょうか。」

■桐山「“感謝”ってよい言葉ですね。私もフジテレビに、何か恩返しができればなぁと思っています」

合言葉は「はじめよう!フェムテック」

●次回は、元トラックドライバー橋本愛喜さん をゲストにお迎えします。

【番組インフォメーション】 『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!

●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/

●撮影/寿 友紀 

 
 

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