短編小説は、原稿用紙10~80枚程度の小説を指すのが一般的です。物語の展開は簡潔で分かりやすく、物語のエッセンスがぎゅっと濃縮されています。読書に十分な時間を割けない人・長い物語を読むのが苦手な人も、小説の醍醐味をしっかりと堪能できるのが魅力です。
とはいえ短編小説にはさまざまな種類があり、どれを読もうかと迷ってしまう人も少なくありません。そこでこの記事では、さくっと読める短編小説をジャンル別にピックアップしました。人気の高い古典的名作から2020年代の人気作まで揃えているので、「短編小説の魅力を堪能したい!」という人はぜひチェックしてみてくださいね。

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短編小説ってどんな小説?
短編小説とは、比較的少ないページ数で完結する小説です。具体的かつ明確な定義はありませんが、以下のような特徴を備えています。
■短い:400字詰め原稿用紙10枚から80枚程度(約4,000字~32,000字)が目安。長くても100枚以内
■単一のテーマや主題がある:特定の出来事、人物の心理、感情、あるいはある一点のアイデアに焦点を当てて描かれている
■構成が緻密で明確:物語の展開は簡潔で、複雑なプロットは避けられることが多い
■印象的な結末:意外な展開や読者に解釈を委ねるような終わり方で、読み手に余韻を残す
日本には古くから短歌や俳句の伝統があり、短い物語の中に芸術的な価値や詩的な余韻を込めた作品が多く見られます。深いテーマや人間ドラマがぎゅっと凝縮された短編小説は、長編小説とは一味違った読み応えを感じられるのが魅力です。
短編小説のジャンルは恋愛・SF・ファンタジーと多岐にわたる上、短時間でさくっと読めます。通勤・通学のすき間時間を利用して、物語の世界を楽しんでみてください!
【人気・名作】おすすめの短編小説5選
短編小説初心者は、人気作家の短編小説や「名作」と言われる短編小説からスタートしてみるのがおすすめです。
「おすすめの短編小説は?」といえば必ず名前の上がる、人気の高い短編小説をご紹介します。
『富嶽百景・走れメロス 他八篇』太宰治(岩波文庫)|富士山をテーマにした情景描写が秀逸
主人公「私」は心機一転を図るため、富士山が見える御坂峠に滞在しました。最初は富士に対して冷めた印象を持っていた「私」ですが、茶屋での人々との交流や、富士山を眺める日々を通じて、少しずつ心境が変化していきます。(富嶽百景)
『富嶽百景』は、「富士には、月見草がよく似合う」という有名な一文が登場する短編小説です。太宰ならではの深い心理描写や独特のユーモアがあり、終始穏やかな雰囲気で読み通せます。
短編集には太宰の代表作の一つとして親しまれる「走れメロス」も掲載されており、読書好きならまず読んでおきたい一冊です。
■出版年月:1957年5月
■ページ数:238
■出版社:岩波文庫
『夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』カズオ・イシグロ(早川書房)|ギタリストと大物シンガーの邂逅
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ベネチアの広場でギターを演奏する流しのミュージシャン・ヤンは、かつてアメリカで人気を博した老歌手トニー・ガードナーに出会います。「妻のために歌いたい」というトニーのため、ヤンはゴンドラでの伴奏を快諾しました。
トニーはベネチアの運河から妻への愛を歌うのですが、そこにはどうしても埋めることのできない溝があり……。(老歌手)
2017年にノーベル文学賞を受賞したイギリス人作家・カズオ・イシグロの短編小説です。短い物語の中には、老いや孤独、そして人間関係の複雑さが淡々とした筆致で描かれています。
登場する夫婦の会話にはどこかぎこちなさ漂い、全体のテンポは静か。音楽によって影響を受けた人間関係が印象的な短編です。
■出版年月:2011年2月
■ページ数:320
■出版社:早川書房
『午後の最後の芝生』村上春樹(スイッチ・パブリッシング)|日常の中に潜む喪失や孤独と向き合う
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かつて、大学生の「僕」は、アルバイトで庭の芝刈りをしていました。恋人と別れたばかりの夏、「僕」は、最後の仕事として中年女性の家を訪れます。女主人は僕の仕事ぶりに満足し、今は使われていない娘の部屋に僕を案内するのでした。(午後の最後の芝生)
村上春樹らしい、印象的な比喩表現や乾いたユーモアがちりばめられた短編です。日常の中に潜む喪失や孤独、そしてそれをどう受け止めていくかという普遍的なテーマが描かれています。明確な解決や救いのないラストは、余韻たっぷり。村上春樹ファンの間では、特に人気の高い短編です。
■出版年月:2024年9月
■ページ数:96
■出版社:スイッチ・パブリッシング
『逆ソクラテス』伊坂幸太郎(集英社文庫)|純粋な小学校時代へのノスタルジーがたくさん
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小学六年生のクラスを担当する教師の久留米は、生徒の草壁を「駄目な子」と決めつけて見下しています。転校生としてやってきた安斎は、久留米の態度に反感を抱かずにはいられません。久留米の偏見を逆手に取り、クラスの空気を変えようと作戦を練るのでした。(逆ソクラテス)
第33回柴田錬三郎賞を受賞した短編集。伊坂幸太郎のデビュー20周年という、節目の年に発行された話題作です。
収録されている短編は全て小学生が主人公で、「先入観を打破すること」や「柔軟な思考の大切さ」がテーマになっています。読み進めるうちにさまざまな伏線が回収され、読後感は非常に爽快。登場人物はどこか懐かしく「そういえばこんな子いたな」と思わせてくれます。
■出版年月:2020年4月
■ページ数:288
■出版社:集英社
『1日10分のごほうび NHK国際放送が選んだ日本の名作』赤川次郎ほか(双葉文庫)|人気作家8名の作品を収録
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赤川次郎、江國香織、角田光代、田丸雅智、中島京子、原田マハ、森浩美、吉本ばななといった、人気作家の短編を収録した短編集です。各短編は、日常の中での小さな奇跡や人間関係の温かさを描いており、読了後は優しい気持ちになれます。
例えば原田マハの「誕生日の夜」は、さまざまな年代の女性の悩みや不安・人生の再スタートを描いた短編です。繊細な描写と心の動きが丁寧に追われており、前向きな気持ちになれます。
■出版年月:2020年3月
■ページ数:192
■出版社:双葉社
【恋愛】おすすめの短編小説5選
一瞬のドラマを切り取った恋愛短編小説は、短いページで恋愛の切なさやドキドキを感じられるのが魅力です。
普遍的な名作恋愛短編小説や、2020年代の人気恋愛短編小説をご紹介します。
『放課後の音符(キイノート)』山田詠美(新潮文庫)|高校生特有の迷いや不安・恋愛を追体験できる
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女子高生の「私」は、大人びた同級生「カナ」に憧れています。カナは他の女の子のように恋愛話に嬌声を上げたり、他人と群れたりしません。「私」は、カナの大人びた考え方や孤独に触れ、恋愛の複雑さや大人になることの苦しさを感じ取ります。(Body Cocktail)
17歳の女子高生たちを主人公にした、リアルで切ない恋愛短編小説です。短編集にはさまざまなタイプの恋愛が描かれており、初々しい恋愛のノスタルジーが詰まっています。
山田詠美らしい官能的な言葉のセンスと比喩表現は秀逸で、発刊から時間がたった今でも古さを感じることはありません。
■出版年月1995年3月
■ページ数:224
■出版社:新潮社
『犬とハモニカ』江國香織(新潮文庫)|冷たさと暖かさが交錯する世界観が魅力
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不倫をしていた文彦は、5年越しの不倫相手に突然別れを告げられます。茫然自失のまま自宅に戻ると、既に妻は就寝中。妻の側で彼は、過去の思い出や恋人との関係を振り返るのでした。(寝室)
不倫という関係性の終焉と、それによって生じる男性の孤独や喪失感を描いた短編です。不倫ものでもドロドロとした雰囲気が感じられないのは、江國香織ならではの繊細で上品な表現力が生きているから。詩的できれいな文体で綴られる短編は、心に長い余韻を残します。
なお表題作の「犬とハモニカ」は、完成度の高い短編に贈られる『川端康成文学賞(第38回)』を受賞しました。
■出版年月:2014年12月
■ページ数:208
■出版社:新潮社
『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』林伸次(幻冬舎文庫)|お酒と音楽がしっくりとはまるラブストーリーズ
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主人公は、渋谷のバーでカクテルを作るバーテンダー。彼の元には毎晩さまざまな男女が訪れ、それぞれの恋愛を語っていきます。
各物語は非常に短く、サクサク読める恋愛短編小説を探している人には特におすすめ。恋愛模様も多種多様で、「学生時代の淡い片思い」「燃え上がって冷めていく関係」「過去の恋への後悔」などのテーマがあります。
また物語では、恋愛に関連する音楽やお酒がたくさん登場するのも魅力の一つ。恋愛の情景がリアルに浮かび上がり、ドラマや映画を見ているかのような雰囲気に浸れます。
■出版年月:2018年7月
■ページ数:268
■出版社:幻冬舎
『すべての恋が終わるとしても―140字の恋の話―』(冬野夜空)|恋愛の要素が140文字に凝縮
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SNSで話題になった、140字の恋愛物語を集めた恋愛短編小説です。
各話は見開き2ページで完結するので、すき間時間の読書に最適。「幼なじみへの告白の後悔」「別れの瞬間」「片思いの切なさ」といった身近な恋愛テーマが扱われており、共感しながら読み進められます。
SNSから生まれた恋愛短編小説は、デジタルネイティブ世代から多くの共感を集めています。今どきの恋愛事情・恋愛模様に興味のある人は、ぜひ手に取ってみてください。
■出版年月:2022年3月
■ページ数:242
■出版社:スターツ出版
『ミトンとふびん』吉本ばなな(幻冬舎文庫)|喪失感を抱えて生きる人たちに深く共感
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ゆき世とそのパートナーの外山くんは、お互いに愛し合って結婚しました。お似合いの2人ではありますが、「お互いの母親からの理解を得られないまま結婚に踏み切った」という、切ない事情を抱えています。
そんな2人の新婚旅行先は、北欧・フィンランドのヘルシンキ。一生に一度の新婚旅行の夜、異国の地で2人は思わぬ祝福を受けるのでした。(ミトンとふびん)
日常の小さな出来事や出会いの中に、静かな希望や温かさがあることを教えてくれる物語です。吉本ばなな作品に多く見られる「大切な人の死」「癒えない喪失」などの要素も含まれており、静かに物語の世界に引き込まれます。
北欧の静かな風景の描写も美しく、心に癒しがほしいときに最適。吉本ばななはこの作品で、第58回谷崎潤一郎賞を受賞しました。
■出版年月:2024年2月
■ページ数:264
■出版社:幻冬舎
【ホラー・ミステリー】おすすめの短編小説6選
後引く余韻や凝縮された恐怖・スリルを感じられる短編は、ホラーやミステリージャンルと好相性です。
少ないページ数でも圧倒的な読み応えを感じられる、おすすめのホラー・ミステリー短編小説をご紹介します。
『本所深川ふしぎ草紙』宮部みゆき(新潮文庫)|江戸の下町で起こる不思議な事件
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ある日、江戸の下町で寿司屋を営む藤兵衛が殺害されました。下手人として疑われたのは、藤兵衛と折り合いの悪かった、娘のお美津です。お美津に淡い恋心を抱いていたそば屋の職人・彦次は、真相を探るべく動き出すのでした。
江戸時代の本所・深川地域に伝わる「深川七不思議」を題材にした連作短編集です。深川地域を取り仕切る岡っ引きの茂七親分が、怪事件の謎に迫ります。
短編集は「ミステリー」の要素が強めであるものの、江戸庶民の暮らしや人情、喜びや哀しみが丁寧に描かれているのが大きな魅力。稀代のストーリーテラー・宮部みゆきの本領が発揮されている短編集です。
■出版年月:1995年8月
■ページ数:294
■出版社:新潮社
『望郷』湊かなえ(文春文庫)|故郷への屈折した気持ちが謎を生む
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浜崎洋平は、母親とともに小学六年生のときに失踪した父親を探しています。貧しい暮らしの中で偶然出会った漁師の真野は、母親に向かって「夫の死を認めて楽に生きるべきだ」と告げるのでした(海の星)
瀬戸内にある架空の島・白綱島を舞台にしたミステリー短編小説です。登場人物たちは故郷を愛しつつも憎んでおり、それぞれが複雑な葛藤を抱えています。島という閉ざされた環境だからこその人間関係の濃密さはリアルで、息苦しささえ感じるほどです。
本作に収録されている「海の星」は、第65回日本推理作家協会賞 (短編部門)を受賞しました。
■出版年月:2016年1月
■ページ数:293
■出版社:文藝春秋
『きのうの影踏み』辻村深月(角川文庫)|身近にある「怖いもの」にゾクゾク
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みさき・まや・なつみは、同じ団地に住む小学生です。鍵っ子同士仲良く遊んでいましたが、ある日突然なつみが消えてしまいます。みさきとまやはなつみが消えた原因は「十円参り」にあると考え、なつみが消えた真相を突き止めようとするのでした。(十円参り)
都市伝説や怪談、子どもの頃の遊びや噂話をモチーフにしたホラー短編小説です。幽霊や妖怪が出てくるわけではありませんが、日常に潜む不気味なもの・恐ろしいものにゾクッとさせられます。読了後の余韻は複雑で、怖さや懐かしさ・切なさなどを感じられる短編小説です。
■出版年月:2018年8月
■ページ数:256
■出版社:KADOKAWA
『地雷グリコ』青崎有吾(KADOKAWA)|手に汗握る「子どもの遊び」バトル!
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都立頬白高校に通う射守矢真兎(いもりや まと)は、勝負ごとにめっぽう強い策略家です。学園祭の出店場所を巡る争いが勃発し、真兎は生徒会と「地雷グリコ」というオリジナルゲームで真剣勝負することになりました。(地雷グリコ)
短編には「坊主衰弱」「自由律ジャンケン」などのタイトルが付けられており、それぞれ異なる勝負が展開されます。どれも子ども時代になじみのあるゲームが元になっているので、勝負の様子を鮮明にイメージできるでしょう。。
短編集の魅力は、頭脳戦の面白さだけではなく、登場人物の友情や成長が描かれていることです。ミステリー短編小説としてはもちろん、青春短編小説としても魅力たっぷり!
作者は本作品で第77回日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉を受賞しました。
■出版年月:2023年11月
■ページ数:352
■出版社:KADOKAWA
『珈琲怪談』恩田陸(幻冬舎文庫)|多忙な四人の男性たちの怪談
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外科医・検事・作曲家・音楽プロデューサーと、異なる職種の50代男性が登場する短編小説です。日々忙しく過ごしている彼らは、時間の合間を縫って各地の喫茶店を巡ります。そこで彼らはおいしいスイーツやコーヒーを堪能しながら、各自が持ち寄ってきた怪談を披露し合うのでした。
各話はそれぞれ「登場人物が持ち寄ってきた怪談」というスタイルで展開されます。物語はほぼ実話に基づいており、日常生活の中に潜む不気味さや怖さがジワジワと迫ってくるのが特徴。実際に存在する喫茶店が登場するため、物語にもリアリティがあります。
とはいえ会話劇としての面白さも際立っており、怖すぎるというほどではありません。「ホラーは苦手だけれど、怖い短編を読みたい」という人におすすめです。
■出版年月:2025年4月
■ページ数:255
■出版社:幻冬舎
『逆転正義』下村敦史(幻冬舎文庫)|どんでん返しの連続にドキドキ
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高校生の松木冬樹のクラスでは、三ツ谷という男子生徒がいじめられています。冬樹はいじめを担任に報告するものの、担任は何もしてくれません。悩む冬樹に、部活の先輩は「いじめている生徒をSNSにさらすこと」を提案。冬樹はためらいつつも、加害者男子の情報をSNS上に拡散するのでした。(見て見ぬふり)
「正義とは何か?」をテーマにした短編集。「自分は正しい」という思い込みや、ネット社会に蔓延する「正義警察」などをテーマにした短編小説が収録されています。各物語には強烈などんでん返しがあり、常識や先入観がひっくり返ること間違いなし。軽快なテンポとエンタメ性で気軽に読める一方、読了後は深く考えさせられます。
■出版年月:2025年5月
■ページ数:304
■出版社:幻冬舎
【SF・ファンタジー】おすすめの短編小説4選
日常を離れて物語の世界に没入できるのが、SFやファンタジー短編集の魅力です。ここからは、SF・ファンタジー短編の古典から、人気の最新作までご紹介します。
『きまぐれロボット』星新一(角川文庫)|お金持ちのエヌ氏が購入したのは人間のようなロボット
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お金持ちのエヌ氏は、ある博士が発明した「最も優秀なロボット」を購入しました。ロボットは料理や掃除・話し相手など、希望すれば何でもこなしてくれます。しかし突然命令を無視したり暴れ出したりと、不可解な行動も少なくありません。困ったエヌ氏は、開発者である博士に相談するのですが…。
ショート・ショートの名手・星新一の作品の中でも、特に人気の高い作品です。テクノロジーの進化がもたらす倫理的な問題や人間の本質について深く考察されており、星新一らしい皮肉が効いているのが魅力です。
全体的な言葉づかいが平易な上、構成も非常にシンプル。SFが苦手な人や子どもでも気軽に読めるSF短編です。
■出版年月:2006年1月
■ページ数:224
■出版社:角川書店
『ふしぎ<霊験>時代小説傑作選』宮部みゆきほか(PHP文芸文庫)|心が温かくなる江戸ファンタジー
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江戸を舞台にした、ファンタジックな短編小説です。宮部みゆき・西條奈加・泉ゆたかなどの人気女性作家が、それぞれのテーマでせつなくかわいい物語を提供しています。
例えば宮部みゆきの「遺恨の桜」は、何者かに襲われた拝み屋の少年・日道のために、岡っ引きの茂七が下手人を探す話です。江戸の情緒と幻想、そして人間の心の機微が丁寧に綴られており、非日常の世界に浸れます。
剣と魔法の西洋ファンタジーとは一味異なる、ノスタルジックで暖かいファンタジー短編集です。
■出版年月:2021年9月
■ページ数:304
■出版社:PHP研究所
『なめらかな世界と、その敵』伴名 練(早川書房)|並行世界を生きる少女たちの青春が眩しい
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この世にはいくつもの並行世界があり、人々は自由に意識を飛ばして複数の世界を行き来していました。女子高生の架橋はづきも例に漏れず、あちこちの並行世界を行き来しながら目まぐるしい日々を送っています。
そんなある日、はづきの通う学校に幼なじみの厳島マコトが転校してきました。マコトは自己紹介で「自分に近づかないで」と宣言し、はづきを動揺させます。(なめらかな世界と、その敵)
革新的なアイデアと緻密な世界構築で人気を集める、伴名 練の代表的な短編小説です。複数の並行世界が存在する世界とそこに暮らす人々の人間関係や孤独が丁寧に描かれています。思春期の少女たちの友情や恋心、喪失感には共感を覚えやすく、青春小説としても秀逸です。
「ベストSF2019国内篇」では、第1位を獲得しました。
■出版年月:2022年4月
■ページ数:464
■出版社:早川書房
『新しい世界を生きるための14のSF』芦沢 央ほか(早川書房)|AIから江戸時代までバリエーション豊富な14編
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作家・伴名練が選抜に携わった、SF小説の短編集です。「2022年5月時点でまだ単行本を発売していない作家の短編」のみに限定されており、新進気鋭の若手作家の作品を楽しめます。
短編小説のテーマは、AI、宇宙、超能力、環境激変、ポストコロナなどと非常に多彩です。800ページ越えという大ボリュームですが、どの作品から読み始めても構いません。空いた時間を利用して、それぞれの物語に没入してください。
■出版年月:2022年6月
■ページ数:816
■出版社:早川書房
まとめ
短編小説は短い時間で読み切れるので、まとまった読書時間を確保できない人におすすめです。さまざまなジャンルの作品があるので、気分や好みに合わせて選びましょう。
このたびご紹介した短編は、名作・人気作と呼ばれるものが数多く含まれています。知らない短編・興味を引かれた短編があれば、ぜひ読書リストに加えてください!