福岡市の風景

「転勤」は楽しい!?1歳の子どもを連れて関東から九州へ「転勤族」妻のホンネ

2020/09/15

会社の都合で言い渡される転勤。多くの場合、夫の転勤に妻がついていくことになりますが、強制的に今の暮らしを変えられてしまうわけで、そこには多くの苦労や悩みがあるはず。

今回は、転勤の多い夫の会社都合で、3年前に茨城から福岡へ移り住むことになった綾子さんにお話をお聞きしました。

取材・文:みらいハウス 阪口千春、渡部郁子

茨城から福岡へ、1歳の子どもとともに転勤

茨城県守谷市に住んでいた綾子さんと家族が福岡県福岡市に引っ越したのは、2017年3月のこと。都内に勤務していた夫が通いやすく、私の実家も近いことからTX(つくばエクスプレス)沿線の茨城県で生活していましたが、夫の転勤により、実家から遠く離れた福岡の地で新しい生活が始まりました。

「結婚するときから夫の会社が転勤の多い会社であると理解していました。いつかは転勤になるという覚悟はあったものの、福岡への転勤と聞いて、その距離にまずは驚きました。ですが、すでに福岡に転勤経験がある夫の職場の仲間から『福岡はとてもよいところ』と聞いていたので、行ってみたいという気持ちのほうが大きかったです。

ただ、当時息子は1歳。転勤に対して不安な気持ちはなかったものの、両親も知人もいない土地だったので、何かあったときに子どもをちょっと見てくれる人がいないということで、大変だと感じることもありました」

猶予は「辞令から1カ月」、慌ただしい引っ越し準備

移動
byryo/gettyimages

辞令が出てから1カ月しか猶予がなかったため、綾子さん家族は翌週には物件を見に福岡を訪れ、その日のうちに新居を決定。帰って来てからは引越しの準備に取りかかりました。知らない土地で子育てをすることにもあまり不安がなかった、綾子さんは言います。

「福岡は海も山も近く、有名観光地もたくさんあります。平日に子どもを連れて遊びに行ったり、休日に家族そろって遊びに行く場所もたくさんあって、旅行気分で楽しめました。

また、福岡のかたは穏やかで温かいかたが多いので、とても助けられました。たとえば、息子はもともと呼吸器系が弱いと感じていたのですが、福岡に来て小児喘息を持っていることが分かりました。

ネットで探して初めて行った病院でも、とても親切にしてもらい、今ではかかりつけ医のような存在です。どこに行ってもやさしく接してくれるかたが多く、嫌な気持ちになったことがありませんね」

転勤で「残念なこと」「困っていること」とは?

転勤を旅行のように楽しんでいるという綾子さん。新しい土地に住むことで得られる驚きや気づきがあり、家族で出かけたいところはたくさんあると言います。綾子さんにとって、いいことづくしの転勤ですが、ひとつだけ残念に思うところがありました。

「私の実家は茨城県、夫の実家は大阪府と、どちらも福岡から遠く、小さい孫をそれぞれの両親に会わせることがなかなかむずかしいんです。以前は『ちょっと今から行くね』と、すぐに会いに行けたのですが、なかなか孫を会せることができなくなり、とても心苦しく感じます。そのことを思うと『転勤なんてなければいいのに』と感じることがあります」

親と会えないのは「残念」と話す綾子さん。それに加えて転勤では「困る」こともあるそうです。それはお金の問題。

「子どもがいると転勤にはとてもお金がかかります。幼稚園や学校が変わると、教科書や用具を買いそろえる必要があり、出費がかさみます。引越しに関する支度金などの手当てがないため、今後、いつまた転勤があるのかと考えると、心配に思うことはあります。家族の声として、子どもがいる家族の転勤は大変であるということは会社に伝えていますが……」

夫の転勤で悩む人へ伝えたいこと

綾子さんは、夫の転勤を前向きにとらえ、転勤そのものを楽しんでいます。なぜそれほどポジティブに転勤を捉えているのでしょうか?

「私の場合、選択肢はひとつしかありませんでした。ひとつしかないからこそ、その状況でよい方向、楽しい方向に考えないとネガティブになってしまうと思い、ポジティブに考えるようにしました。

この先、子どもが学校に通うようになって、たくさんの友だちができたころにまた転勤になったらどうしよう……と思うこともあります。今後の転勤については、子どもの環境面を考えて対応していきたいと考えています」

インタビューを終えて

近年、転勤をなくす企業が増えてきています。AIG損害保険は「本人が望まない転勤」の廃止を目指し、希望勤務地制度を取り入れ、大きな話題となりました。ほかにも、在宅勤務を標準とした働き方への移行を発表したり、転勤をしなくても働ける制度づくりに取り組む企業も増え始めています。

一方、当事者である綾子さんは、終始前向きな発言で、転勤への肯定的な思いを語りました。もちろん完全に肯定はせず「転勤はなければないに越したことはない」とも話しますが、新しい土地での生活を、心から楽しんでいることは間違いありません。

前述のとおり、転勤という文化は今大きく変わり始めています。しかし、急な転勤で目の前が真っ暗になった……ということがなくなるのはもう少し先の話でしょう。もし夫が転勤になったら、そのときどうすればいいのか?どう受けとめればいいのか?「転勤族」の妻たちにとって、この記事が少しでも役立つものになることを願っています。



◆取材・文
みらいハウス 阪口千春
東京・足立区にある育児期の女性支援拠点「みらいハウス」のライティングメンバー。キャリアコンサルタントや保育士などの資格を活かし、「子どもがいてもできること、子どもがいるからできること」をモットーに、子育て世代の家族への支援活動に取り組む一児の母。

みらいハウス 渡部郁子
東京・足立区にある育児期の女性支援拠点「みらいハウス」のライティングメンバー。子連れで取材活動に取り組む一児の母。育児と仕事にまつわる社会課題への支援事業や、子育てしやすい地域環境を構築する仕組みづくりを行っている。

構成:サンキュ!編集部

 
 

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