夏とともに熱中症のリスクも去ったと思いがちですが、実は“秋に増える熱中症”があります。特に今年は自宅や室内で過ごす時間が増え、運動不足で汗をかきにくい体になっているため、例年以上に注意が必要です。“秋の熱中症”の原因と、効果的な対策を知っておきましょう。
かくれ脱水と体の冷え、運動不足が引き起こす“秋の熱中症”
10月に入り、ようやく外を歩くのが心地よい季節になってきました。夏に比べると、水分を補給する回数が減った人が多いのではないでしょうか?そんな今、注意したいのが“かくれ脱水”による秋の熱中症です。
なぜ秋にも熱中症になってしまうのか、ノザキクリニック院長で、日本体育協会公認スポーツドクターでもある野崎豊先生に教えてもらいました。
「人は皮膚や呼気から“不感蒸泄(ふかんじょうせつ) ”と言って、常に水分が失われています。秋は空気の乾燥に伴って不感蒸泄が増加し、気づかないうちに脱水が進行して“かくれ脱水”になりやすくなります。
さらに、季節の変わり目となる秋は、気温の寒暖差が大きくなります。気温の寒暖差が激しければ激しいほど、体の体温調節機能がうまく働かず、脱水が進行して熱中症が起こりやすくなるのです。
今年は自宅や室内で過ごす時間が増えているため、運動不足により汗をかきにくい体になっていますから、例年よりも注意が必要です」(野崎先生)
熱中症予防に、水分だけでなく“ミネラル”補給が大切!ミネラル入りむぎ茶の推奨!
熱中症を予防するには、ふだんから“十分な睡眠”と“栄養バランスのとれた食事”が基本です。そのうえで意識的に行いたい対策として、“汗をうっすらかく適度な運動や入浴”があげられます。
適度な運動や入浴は汗腺機能を高め、血流促進に有効です。手軽にできるウォーキングやジョギングなどの運動や、室内でのストレッチ運動もおすすめ。入浴はシャワーだけで済ませず、しっかり浴槽に浸かって発汗するようにしましょう。
そして、水分だけでなく“ミネラル”を一緒に補給することがとても重要です。
通常、体内の熱は、皮膚の血流を増やしたり、汗をかくことで体外に放出しますが、その際、水分と一緒にミネラルも失われます。水分・ミネラルが不足すると汗をかくことができず、血液がドロドロになって、体内の熱を外に逃がすことができにくくなります。すると体内に熱がこもり、熱中症になりやすくなるのです。
ミネラルは体の調子を整えるために必要な栄養成分で、5大栄養素の1つです。不足すると疲れ、めまい、動機などの体調不良などが起こります。しかし、ミネラルは体内で作ることができないため、食品や飲料から補給する必要があります。
「なかでもミネラルが手軽に補給できる“ミネラル入りむぎ茶”は、ふだんからこまめに飲用したいものです。無糖でカロリーもなく、カフェインもゼロ。適度な塩分とミネラルを含み、糖分を含まないことから、日常生活を過ごす大半の方に推奨できる飲料です」(野崎先生)
効果的な補給方法“点滴飲み”とは?
熱中症は、発生した当日の水分とミネラル不足から起こるのではなく、数日前からの不足が原因で発生します。また、水分とミネラル補給は、一気に行っても血液内に吸収された時にしか効果がありません。点滴のように少しずつ継続的に飲む “点滴飲み”が、体に吸収されやすく、適度に汗もかけるのでおすすめです。
目安は1時間にコップ1杯程度を飲むこと。成人の場合で、1日に約2.5リットルの水分摂取が必要です。
ミネラル入りむぎ茶・スポーツドリンク・経口補水液の使い分けを知っておこう
熱中症対策の飲み物としては、ミネラル入りむぎ茶以外に、スポーツドリンクや経口補水液などもシーンによって有効です。生活シーンや体調に合わせた選び方を覚えておきましょう。
ミネラル入りむぎ茶
ミネラルを含み糖分、カロリー、カフェインを含まないことから、“エネルギー消費量はさほど高くないが汗をかく”という、日常生活に取り入れるのに最適です。
スポーツドリンク
大量に汗をかいた時に飲用するのがおすすめ。ただし、エネルギー消費量がさほど高くない大半の人にとっては、糖分が多いため肥満などのリスクに注意が必要です。
経口補水液
脱水症状に陥ってしまった後、特に医師から脱水状態の食事療法として指示された場合に限り飲んで良い飲料です。自己判断で予防的に飲むと、塩分の過剰摂取により“高血圧”のリスクがあるので注意が必要です。
※厚生労働省が定める食塩の必要量に対し、現状、通常の食事で既に過剰摂取となっている。そのうえ経口補水液1本(500ml)で1.5gをさらに上乗せすることになる。
・厚労省 食事摂取基準2020(食塩)
男性(18歳以上)7.5g未満 女性(18歳以上)6.5g未満 ・厚労省 国民栄養調査H30(食塩)
男性(20歳以上) 11.0g(約3.5g過剰) 女性(20歳以上)9.3g(約2.8g過剰)
10月は朝晩は涼しくとも、日中には急に気温や湿度が上がる日が少なくありません。特に雨の後は湿度が高くなるので、熱中症の危険度が増します。自宅で過ごす時間が増え、運動不足が続く今、上手に対策しながら、秋の熱中症も乗り切っていきましょう。
監修:野崎豊 先生(ノザキクリニック院長)
日本小児学会専門医 認定産業医/日本体育協会 公認スポーツドクター 日本東洋医学会名誉会員/漢方専門医/臨床内科医会専門医