胃痛に悩む若い女性

放置すると危険な便秘とは⁉意外な原因と危険な便秘の見分け方を医師が解説

2024/12/10

「便秘」は私たちの身近な健康トラブルですが、その原因は運動不足から大きな病気まで多岐に渡ります。

便秘になりやすい人の特徴や、便秘から考えられる重篤な疾患などついて、消化器系の専門病院である医療法人社団筑三会・筑波胃腸病院の鈴木隆二理事長に聞きました。

Q.便秘はどのようにして起こるのでしょうか

便秘は、大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)の低下によって起こります。蠕動運動とは、大腸にある便を体の外へ押し出そうとする動きのことを言います。

蠕動運動が低下すると腸内に便が長く留まり、水分が過剰に吸収されて便が硬くなって、便秘を引き起こします。蠕動運動が低下する原因には、食事などによる腸内環境の乱れ(腸内の善玉菌の減少と悪玉菌の増加)、ストレスからくる自律神経の乱れなどがあります。

また、便意を感じる直腸の感度が低下すると、便が直腸に溜まっても排便反射が起こらず、便が硬くなり排出しづらくなります。直腸の感度は、トイレを我慢する習慣などで低下します。

Q.便秘の原因にはどのようなものがありますか

便秘の原因は多岐に渡ります。具体的には、次のようなものが挙げられます。

・運動不足:
身体活動が少ないと腸の動きが低下し、便が排出されにくくなります。

・便意の低下:
排便を我慢することが続くと、直腸の便意感受性が低下して、次第に便意を感じにくくなります。

・食事の影響:
食物繊維や水分が不足すると、便が硬くなりやすくなります。無理なダイエット食も腸内環境の乱れの原因となり、便秘を引き起こします。

・薬剤の影響:
鉄剤や鎮痛薬、抗うつ薬など、一部の薬剤が便秘を引き起こす副作用を持っています。また、長期間の抗生物質服用なども腸内環境を悪くして、便秘の原因となります。

・ストレスや生活習慣:
ストレスや不規則な生活による自律神経が乱れも、腸の働きにも影響を及ぼして便秘を引き起こします。

Q.便秘になりやすい人の特徴にはどのようなものがありますか

自宅でのワークアウト後に床に横たわる疲れ果てた太りすぎの女性
charnsitr/gettyimages

次の項目に当てはまる人は、便秘になりやすいと言えます。

・食生活が偏っている人:
野菜や果物、穀類などの食物繊維が不足した食事をしている人は便秘になりやすいです。外食やインスタント食品が多い人は注意が必要です。

・水分摂取が少ない人:
1日の水分摂取量が少ないと便が硬くなりやすくなります。利尿作用のあるコーヒーやアルコール摂取により、純粋な「水」が不足してしまっている人も当てはまります。

・運動不足の人:
特にデスクワークや長時間座りっぱなしの仕事をしている人は、腸の動きが鈍くなりやすいです。

・ストレスを感じやすい人:
ストレスは自律神経を乱れさせ、腸の動きを低下させます。急な環境変化や仕事の忙しさでストレスが増えた方も、注意が必要です。

・女性や高齢者:
女性ホルモンの影響や加齢による筋力低下は、便秘を引き起こしやすくします。

Q.便秘の予防や改善のために、どのようなことに気をつけたらいいですか

便秘を予防・改善するためには、以下のポイントが重要となります。おすすめの習慣も合わせて参考にしてみてください。

・バランスの良い食事:
食物繊維を豊富に含む野菜や果物、全粒穀物を摂取し、水分をしっかり補給しましょう。朝食にオートミールとフルーツを取り入れるのがおすすめです。

・適度な運動:
ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を日常生活に取り入れることで、腸の動きを促進します。毎朝20分のウォーキングを習慣にするといいでしょう。

・規則的な生活:
朝食後にトイレに行く習慣をつけ、排便を我慢しないようにしましょう。朝は時間に余裕を持って、朝食をしっかり食べることも大事です。

・ストレス管理:
リラクゼーションや趣味を楽しむ時間を確保し、自律神経のバランスを整えます。寝る前10分間の瞑想がいいとされています。

・正しい便秘薬の選択:
依存性の少ない非刺激性下剤(酸化マグネシウムやポリエチレングリコール)を使用し、必要に応じて医師に相談しましょう。刺激性下剤(市販の便秘薬の多くがこれにあたります)を使う場合も、自己判断で頼りすぎないことは非常に大事です。

Q.病院を受診したほうがいい便秘にはどのようなものがありますか

次のような便秘の場合は、病院を受診することを検討してください。

・1週間以上便が出ない場合:
目安として1週間以上排便がない場合や、通常の排便リズムと比べて極端に変化がある場合。

・急に便秘になった場合:
これまで快調だったのに、急に出なくなったなどの変化があった際には注意が必要です。生活習慣の変化による一時的なものではなく、病的な原因が疑われます。

・便秘と下痢を繰り返す場合:
過敏性腸症候群や腸疾患の可能性があるため、精密検査が必要です。下痢と便秘が1週間ごとに交互にくるなどの場合には、大腸カメラなどの精査が必要となるケースがあります。

・激しい腹痛や嘔吐を伴う場合:
腸閉塞や重篤な消化器疾患の可能性があります。食事を摂るたびに吐き気や痛みがあるときには受診をおすすめします。

・便に血が混ざっている場合:
裂肛(れっこう)や痔、さらには大腸がんなどの可能性を確認する必要があります。特に鮮血だけでなく黒っぽい血が混ざる便であれば早めの受診が必要です。

教えてくれたのは・・・

鈴木隆二 理事長

医療法人社団筑三会理事長 消化器外科専門医(筑波胃腸病院、千葉柏駅前胃と大腸肛門の内視鏡日帰り手術クリニック・健診プラザ)。聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター助教を経て、筑波胃腸病院、千葉柏駅前胃と大腸肛門の内視鏡日帰り手術クリニック・健診プラザの理事長に就任。日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、茨城ヘルニア研究会世話人、麻酔科標榜医、産業医、難病指定医。

取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部

関連するキーワード

 
 

PICK UP ピックアップ

TOPICS 人気トピックス

RECOMMEND