カシューナッツの食べすぎはカラダによくない……とはよく聞く話ですが、なぜ悪いのか理由をご存知でしょうか?
カシューナッツに含まれる脂質は役立つ作用を多く持つ反面、とり方を間違えてしまうと体調をくずす危険性もあるのだとか!
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、カシューナッツの食べ方によって体にどのような悪影響が及ぶのかと、1日に食べてもいい量の目安について紹介してもらいます。

生命維持や免疫アップに!カシューナッツを食べる「メリット」
カシューナッツとは、ブラジルや西インド諸島が原産とされるウルシ科の樹木に実る種子のことです。
果肉と種子が分かれた形で実るという特徴があり、果肉はカシューアップルと呼ばれて生産地で生食されますが、種子は乾燥や焙煎などの工程を経て殻から外したものが食用になります。熱帯から亜熱帯で栽培されるため、国内で食されるカシューナッツはインドやベトナムから多く輸入されています。
ほかのナッツ類と同様に、カシューナッツも脂質を豊富に含んでいます。脂質は、三大栄養素の一つであり、つぎのような体にとって欠かせない働きを持っています。
・細胞膜、ホルモンなどをつくる材料になる
・皮下脂肪として内臓を保護したり、体温を維持する
・脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の吸収を助ける
また、カシューナッツに含まれる脂質には不飽和脂肪酸の割合が高くなっています。とくに不飽和脂肪酸の中でも、必須脂肪酸と呼ばれる「α(アルファ)-リノレン酸」や「リノール酸」が含まれているのです。
これらの脂肪酸には、動脈硬化の予防、LDLコレステロールの低下、免疫機能の改善、抗炎症作用などの働きがあります。
このほか、銅、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンK、鉄なども比較的多く含まれていて、不足しやすい栄養素の補給源として役立ちます。
このように上手にカシューナッツをとり入れることで、生活習慣病の予防や健康維持に期待ができるでしょう。
肥満やアレルギー症状の悪化も?カシューナッツを食べすぎる「デメリット」
多くのメリットが得られるカシューナッツですが、過剰に摂取したり体質によっては思わぬデメリットが生じることもあります……。
太る原因になる
カシューナッツは、ナッツの中でもやわらかくコクのある甘みを持つため、食べやすさからついつい食べ進めてしまうこともあります。
しかし、脂質が多く含まれるため、食べすぎはカロリーのとりすぎに直結してしまうのです(100gあたり591kcal)。
また、国内で消費される主なナッツ類の中でも、カシューナッツは糖質を多く含んでいます(100gあたり20.0g)。
こういったことから、糖質制限をしている人やダイエット中の人は、カシューナッツの食べすぎを避けたほうがいいでしょう。
炎症が起こりやすくなる
カシューナッツに含まれている「α-リノレン酸」や「リノール酸」は、人の体内でつくり出すことができない必須脂肪酸であり、食事からとり入れる必要があります。
ただし、「リノール酸」については必要以上のとりすぎにより、体内で炎症を引き起こす成分を多くつくり出すことが指摘されています。カシューナッツには抗炎症作用のある「α-リノレン酸」も含まれていますが、「リノール酸」のほうが含有量は圧倒的に多くなっているのです(100gあたり、それぞれ0.08g、8.00g)。
ほかにも、市販のカシューナッツの中には油を添加して加工されているものもあり、その油が酸化したものを摂取することも炎症の原因になると考えられています。
とくにアレルギー体質の人は、症状が悪化する可能性もあるので、種類を選び食べすぎに気をつけましょう。
下痢や便秘などの不快な症状を招く
腸内環境を整えたり、便秘を改善したりするイメージのある食物繊維ですが、とりすぎによっては逆効果を生んでしまうことも……。
食物繊維には、水に溶けやすい水溶性と溶けにくい不溶性の2種類があります。そのうち、カシューナッツには不溶性食物繊維が多く含まれています(食物繊維全体の90%ほど)。
不溶性食物繊維は、便の量を増やして腸に刺激を与える働きを持っています。しかし、水溶性食物繊維が不足していたり不溶性食物繊維の割合が高すぎる場合には、便の水分が減少して硬さが増し、便秘や腹痛などを招くことがあるのです。
また、脂質のとりすぎによって消化に時間がかかり、消化不良を起こすことも。それによって、胃もたれや下痢になることもあるため注意しましょう。
カシューナッツを楽しむ量とタイミングは?
上記のとおり、カシューナッツに含まれる栄養素にはメリットとデメリットの両方があります。
そこでここからは、日本人の食事摂取基準(2025年版)の数値を参考に、カシューナッツを楽しむ量とタイミングについて解説していきます。
健康な成人は1日にどれくらい食べても大丈夫?
まずは、リノール酸を基準として1日に十分とされる不飽和脂肪酸(n-6系)の目安量から、それに相当するカシューナッツの量を算出してみました。
不飽和脂肪酸(n-6系)の目安量は、30~64歳男性で1日11g、女性で9gとなっています。そのため、それぞれおよそ130g、およそ110gのカシューナッツに相当することに。
続いて、間食の目安量(1日200kcal程度)からも算出してみました。間食として食べる場合は、およそ30gのカシューナッツで目安量をほぼ満たすことがわかります。
以上のことから、不飽和脂肪酸のとりすぎを抑えつつ適量として楽しめるカシューナッツの量は、およそ30gといえるでしょう。1粒1.5gとした場合、カシューナッツ20粒までを目安としてみてくださいね。
カシューナッツ以外も間食する場合には、目安量を超えないようにこれよりも少なくすることをお忘れなく。
また、カシューナッツは中華料理などの食材として使われることもあるため、食事の一部として食べる場合には、ほかの食事のカロリーと調整しながらとってもいいかもしれないですね。
どのタイミングで食べるのがいい?
カシューナッツは、その半分ほどが脂質で占められているため、消化に時間がかかります。消化活動が就寝中に活発になると睡眠の質を下げる可能性があるからことから、就寝前に食べるのは避けてほしいところ。
これ以外の理由に、深夜にかけて体内で脂肪を蓄える働きが強くなるため、太るのを気にする人は日中に食べるのがおすすめといえます。
反対に、効果的なタイミングは、「食前30分~1時間前」です。
このタイミングでカシューナッツを食べると、脂質や適度な食物繊維によって空腹感が抑えられ、食事の食べすぎを防ぐことが期待できますよ。
なお、カシューナッツそのものの食べすぎを抑えたい場合には、「食塩不使用」などの味付けされていないものを選ぶのが正解です。味付けされていると食欲が進んでしまうため、シンプルなカシューナッツを探してみましょう。
正しい量さえ把握できていれば、カシューナッツはメリットが多い食品です。カシューナッツのメリット・デメリットを理解し、上手にとり入れてみてくださいね。