らっきょうに含まれる栄養素には、役立つ作用を多く持つ反面、とり方を間違えてしまうと体調をくずす危険性もあるのだとか!
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、らっきょうの食べ方によって体にどのような悪影響が及ぶのかと、1日に食べてもいい量の目安について紹介してもらいます。

健康増進や疲労回復に!らっきょうを食べる「メリット」
らっきょうは、中国原産の野菜でねぎの仲間に分類されます。球根のような見た目の、鱗茎(りんけい)と呼ばれる茎が重なった部分が食べられています。らっきょうを軟白栽培して早採りしたものは「エシャレット」と呼ばれ、生食が可能です(エシャロットは別の野菜)。
一般的ならっきょうは、独特の香り、辛味、歯ごたえが特徴的です。春から夏にかけて旬を迎え、鳥取県、鹿児島県、宮崎県で多く生産されています。代表的な品種には、大玉で細長い「らくだ」があり、小型で丸形の「玉らっきょう」なども知られています。また、沖縄で栽培される辛味の強い「島らっきょう」といった品種もありますよ。
そんならっきょうに比較的多く含まれるのは、つぎのような栄養素。
・食物繊維
・ビタミンC
・ナイアシン
・マンガン
これらの栄養素には、腸内環境を調えて便通を改善したり、皮膚のメラニン色素の生成を抑えて日焼けやシミを防いだり、エネルギーを効率よくつくり出したり、体内の酵素を活性化させるなどの働きがあります。また、らっきょうに含まれる食物繊維には、水に溶けやすい水溶性食物繊維の割合がとても高くなっています。そのため、腸からの糖の吸収を抑えて血糖値の上昇を抑えてくれる働きも。
ただし、らっきょうを酢漬けなどにした場合は、漬け汁にこれらの水溶性の栄養素が流れ出てしまい、含有量が大幅に減少するので注意しましょう。漬け汁は、ドレッシングや酢の物などに活用すると無駄なく栄養素を取り入れることができますよ。
このほか、らっきょうは刻んだり潰すことによって「アリシン」という成分がつくられます。この「アリシン」には、疲労回復に役立つビタミンB1の吸収を高める働きや抗酸化作用があります。さらに、生活習慣病の原因とされる活性酸素の働きを抑える抗酸化作用、血圧を低下させる血管拡張作用なども期待できるでしょう。
このように上手にらっきょうをとり入れることで、美容や生活習慣病の予防などに役立てることができますよ。
ニオイが強くなったり胃が荒れたりすることも?らっきょうを食べすぎる「デメリット」
多くのメリットが得られるらっきょうですが、過剰に摂取したり体質によっては思わぬデメリットが生じることもあります……。
胸やけ下痢などの不快な症状を招く
先述したように、「アリシン」には多くの健康効果が期待できますが、同時に強い刺激性や殺菌作用も持っています。そのため、らっきょうを食べ過ぎると胃や腸へ負担をかけてしまうことも……。
らっきょうの食べ過ぎで、胃痛・胃もたれ・下痢・腹痛 などの消化器症状が出ることがあると言われています。また、「アリシン」の殺菌作用には、有害な細菌やウイルスだけでなく、腸内の善玉菌にも影響を与えることも。
とくに、胃腸が弱っている時やお腹を壊しやすい人は、らっきょうの食べ過ぎに注意しましょう。
おならが増えたり口臭が強くなるリスクも
らっきょうは、生の野菜で比較すると食物繊維を含む量がトップクラスに多くなっています。しかし、豊富な食物繊維ゆえに、おならが増える原因となることがあるのです。
食物繊維は消化酵素で分解されず、大腸で腸内細菌によって発酵されます。このときに、腸内環境を調えてくれる短鎖脂肪酸がつくられ、同時に水素やメタンなどのガスも発生。それらの気体は、おならとなって体の外に排出されていくのです。
一方で、「アリシン」の殺菌効果によって腸内の善玉菌が減ってしまうと、悪玉菌によって硫化水素などのニオイの強いガスが多くつくられてしまいます。すると、おならのニオイが強くなるだけでなく、ガスの一部が血液で肺に運ばれて呼気で排出されると、強い口臭として感じられることも。
らっきょうを楽しむ量とタイミングは?
上記のとおり、らっきょうに含まれる栄養素にはメリットとデメリットの両方があります。
そこでここからは、らっきょうを楽しむ量とタイミングについて解説していきます。
健康な成人は1日にどれくらい食べても大丈夫?
生のらっきょう100gあたりの食物繊維量は、20.7gです。これは、成人男女の1日に必要な食物繊維に相当します。
らっきょう以外にも通常の食事をとることを考慮した場合、必要量の半分ほどにとどめておくのがとり過ぎを避けられるのではないでしょうか。そのため、食物繊維だけに言及するのであれば、らっきょうを50gまで食べることができそうです。
ちなみに、「アリシン」については、具体的な1日の目安量や実際にらっきょうに含まれる数値に信頼できるデータが見当たりませんでした。しかし、ウェブサイト上の多くでは、3~4粒が目安であると推奨されています。
「アリシン」が豊富なにんにくに比べ、らっきょうのアリシンは少ないとされていることから、1日にそれくらいの量であればデメリットを抑えることができるかもしれませんね。
ただし、先述したように胃腸が弱っている時や、お子さんを含めた刺激に敏感な人などは、これよりも少なくすると安心です。体調や体質などを考慮して、食べる量を決めてみてはいかがでしょうか。
どのタイミングで食べるのがいい?
らっきょうは食物繊維が多く消化に時間がかかるため、就寝前は避けた方がよいと考えられます。消化活動が就寝中に活発になると睡眠の質を下げたり、ガスが発生しやすくなって夜中にお腹の張りを感じたりする可能性があるからです。夜に食べるのであれば、寝る2時間前までにしておきましょう。
また、空腹時や食事の最初に食べることも避けてほしいタイミングです。胃の中に何もない状態でらっきょうを食べてしまうと、胃の粘膜への刺激が強すぎて胃痛や吐き気などが起こることがあります。
もし、豊富な食物繊維の効果を期待するのであれば、朝食にらっきょうを食べるのがおすすめです。理由は、朝食に食物繊維を多くとると昼食後の血糖値の上昇が抑えられるから。さらに、一番腸の動きが活発になる朝のタイミングに食物繊維をとることで、便通改善効果が高くなるとされていますよ。
便通改善を期待するのであれば、食物繊維(おもに水溶性食物繊維)と一緒に多めの水分を組み合わせることも心がけてみてくださいね。
正しい量さえ把握できていれば、らっきょうはメリットが多い食品です。らっきょうのメリット・デメッリトを理解し、上手にとり入れてみてくださいね。