【連載】熟れすぎMANGO VOL.127
2017/10/11
「夫婦」を楽しむちはるのスーパーポジティブY談
ママ友ってやつが昔から苦手だった。あまり懸命にママって仕事をしてこなかった負い目なのかとも思うが、息子の登生(トーイ)が22歳になった今でも、親同士の大人な交流ってやつが上手くない。
近所のフィットネスクラブで「登生くんのママですよね?」と声をかけられギクリとした。ママと今更呼ばれるのは違和感があるし、トーイというキラキラネームを公の場で呼ばれるのも何だかこしょばい。しかも目の前の同年代のおばさんが誰だか、もはや思い出すことができない。「あ、そうですけど……」と戸惑うと、「小学校で一緒のクラスだったキララ(仮名)の母です」と、結構どっこいどっこいなキラキラネームで爽やかに挨拶された。せめて苗字を教えてくれ~こっちも「キララちゃんのママ」としか呼べなくなってまう(心の声)
「登生くんも今は大学生?」「ネットニュースで見たけど再婚されたんですよね?」などと親しげに踏み込んだことを聞かれ「はぁ、相変わらずおバカで」などと、ヘラヘラ顔で曖昧に返すことしかできない。「ママ友」との付き合いを未だに大切にしているようで、「誰ダレちゃんのお母さんもここに通っているんだよ」とか、「今でも何人かのママ友と集まってお茶してるんです」とハイテンションで語られ、強張った笑顔で「そうなんですか」と繰り返すほかなかった。
「へえ。キララとはこないだ同窓会で会ったよ」無精ひげの息子は少し面倒くさそうに言った。前の夫と離婚してからは離れて暮らしていたが、数年前からはウチの近所で友達とシェアしてアパートを借りている。夢と野望はでかいが金は無い典型的なバカ息子だが、母ちゃんもおバカなもんで結構ウマは合う。安月給が底をつく月末に「肉が食いたーい」と連絡してきたりして、ちょくちょくお酒も酌み交わせるようになった。「オカンはそういうの変に気にしすぎなんだよ。だいたい、今の苗字だって向こうは分からない訳だから『登生くんのママ』って呼ぶしかなかったんじゃない」「キララの家もイロイロ大変みたいだし、幼馴染みに会ったぐらいの気持ちでいればいいじゃんか」と後輩を諭すような調子で軽く言われ、少しカチンときたが、何も言い返せなかった。
「幼馴染みか…」確かにママ友とはそういうものなのかもしれない。子どもと共に再び学校に通い、悩み、笑い、さぼり、互いの違いを学ぶ。息子の小さな背中を目で追いながら、一緒に笑い合ったキララママの若かりし横顔を思い出した様な気がした。次にキララママと会ったら、自分から話しかけてもう一度きちんと自己紹介をし、気楽に思い出を語ってみよう! まずはお互いの名前から(笑)。
文/ちはる
ちはる/テレビ、CF、著書の企画、 プロデュースなどで活躍中。12年、14歳年下の旦那くんと再婚。 目黒でカフェ「チャム・アパートメント」を経営。