【連載】熟れすぎMANGO VOL.130

2017/10/11

ちはるの老眼鏡!?「ノンフィクション人生」

シンケンな問題。

 芸能人同士が離婚を発表した時、必要以上に問題視されるのが「親権」の問題だと思う。

 一般的に母親が親権を持つのが常識で、父親が親権を持った場合に「母親に非があったのでは?」と当然のごとく言われることが多いのだが、果たしてそうだろうか? もちろん母親に問題がある場合も多いのだと思うが、そればっかりでは決してないと思う。

 父母が離婚しても、子どもの姓は当然には変更されない。離婚によって子どもの親権者が旧姓に戻っても、子どもの姓が自動的に変わるわけではないのだ。そのため、母親が親権者であり旧姓に戻った場合には、母親と子どもの姓が異なることになる。たとえば、あの松田聖子さんは、神田正輝さんと離婚した後も旧姓に戻ることはなく「神田」姓のままだった。娘である神田沙也加ちゃんと姓が変わることを避けたのか、他にも色々とお考えはあったのだろう。その後、再婚相手の姓に変わり、また離婚した時は、もはや旧姓には戻ることはできないので、「神田」か再婚相手の姓のどちらかを選ばなければならない。女性は結婚により姓が変わるので、とても複雑だ。

 うちの場合は協議離婚の末、親権は父親が持った。息子は当時高校1年生。私にとって、別れる夫と姓が変わることは気持ち的にも当然で、逆に息子は生まれた時からの姓を当然に変えたくはないだろうし、変えるべきではないと思った。加えて元夫は姉が3人いて待望の長男であり、ただ一人の跡取り息子だった。

 そして一番決め手になったのは、息子が父と母のどちらと暮らしたいか? ということだ。

 何度かの話し合いの結果、息子が言った。「パパと住むよ」。打ちのめされた。ショックでこわばる私の顔を見て、慌てたように息子が続ける。「高校もパパの住むところから近いしさ、男どうしだから、ね」

 自分の不甲斐なさで息子に要らない気遣いまでさせて、本当に申し訳なく情けない気持ちでいっぱいになった。そして私は、親権を父親に渡すことを決めた。

 離婚して、今年で7年になる。うちの近所で一人暮らしをしている息子はもうすぐ23回目の誕生日を迎える。「俺が言う分にはいいけど、他人にオカンの悪口を分かったように言われるとムカついた」。親子でお酒を飲みながら、そんな話も笑ってできるようになった。私はずーっと彼の母親だ。それが事実! 「子どもがいるのに、離婚なんて可哀想!」と大げさに正論を言う人は、必ず口を揃えて「で、親権はどちらが持つの?」と心をえぐるような質問をぶつけてくる。

 きっとどちらに問題があったのか好き勝手に推測したいのだろう。人の不幸は蜜の味。

 自分に置き換えて想像できないんだろうな。そんなニュースを見るたびに悲しい気持ちになる。

文/ちはる

ちはる/テレビ、CF、著書の企画などで活躍中。12年、14歳年下の旦那くんと再婚。目黒でカフェ「チャム・アパートメント」を経営。

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