熟年離婚についての興味深いアンケート結果が公開されました。そこで今回は恋人・夫婦仲相談所の所長である三松真由美さんに同アンケート結果の解説と合わせて、熟年離婚によって幸せになった妻たちの実例を紹介してもらいます。
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女性にとって、熟年離婚はかなりメリットがある!?
「ツナグ離婚弁護士」を運営する株式会社Clamppyがおこなった、熟年離婚(20年以上の婚姻期間を経ての離婚)に関するアンケートのなかで示された、「熟年離婚に対して、男女が感じるデメリットの差」が大変興味深いものでした。
男女差が大きかったデメリットは以下の3点です。
「孤独を感じるようになった」
男性27.7%に対して、女性5%
→その差は22.7%
「金銭面での不安が出てきた」
男性3.1%に対して、女性24.4%
→その差は21.3%
「デメリットはない」
男性27.2%に対して、女性43.2%
→その差16.0%
女性の4割以上が「離婚にデメリットはない」と言い切り、「孤独だ」と感じるのはわずか5%。最も大きなデメリットである金瀬面の不安も25%程度ということは、女性にとって、熟年離婚はかなりメリットがある!?ということなのでしょうか。
そこで今回は、実際に熟年離婚で「人生が変わった」という例をご紹介してみましょう。
モモコさんのケース(53歳 仮名)
結婚後も自分のキャリアを捨てたくなかったモモコさんは、実家の母に一人息子の育児を手伝ってもらいながら仕事を続けてきました。
「おかげさまで息子は海外の大学に留学し、巣立っていきました。仕事上でも、自社で初の女性本部長になり、そろそろ仮面夫婦も終わりにしようかなと思っていました」
夫婦ともに仕事が忙しく、夜勤のある仕事の夫とはすれ違うことが多く、息子が中学生の時ぐらいから、ずっと仮面夫婦だったというモモコさん。
「振り返ってみると『これがあったから夫婦仲が冷めた』という大きな事件はなかったのですが、少しずつお互いが相手を必要としなくなっていった感じがします。それでも離婚をしないで来たのは、私としては経済的な面が大きかったです。
息子は中高一貫校に入った時から、海外の大学に進学したい、という夢がありました。私もある程度は稼いでいますが、さすがに海外留学は学費だけで年間200~300万円かかります。離婚することで息子の夢をかなえることが難しくなると思い、息子の留学が終わるまでその費用を夫にも負担してもらうため、離婚は我慢してきました。
昨年、息子が大学を卒業し、帰国して無事に就職できたことで、ようやく夫の『役目』は終わり。離婚について夫婦で話し合いをしました。
夫からは『老後に向けて一人になるのは寂しい。たとえ愛情がなくても、共同生活者として同居を続けないか?』という誘いがありました。高血圧で糖尿病の傾向のある夫としては、将来、私に看護や介護をしてもらうことを視野に入れての提案の様でしたが、無料で夫の世話をする気は一ミリもないのできっぱりと断りました。
2か月ほどいろいろ話し合った結果、私が今のマンションを出て、一人暮らしをすることにしました。あと10年以内に、自分の定年や母親の介護が発生しそうですが、それまでは自由に暮らす時間を楽しもうと思ったからです。
今までずっと好きだった宝塚ファン仲間の「ヅカ友」に加え、最近では韓流アイドルの推しもできて、その「推し友」と地方遠征でライブに行くことも増え、忙しく過ごしています。『もっと早く離婚していれば』と思わないこともないですが、息子の夢のためだったので後悔はしていません。今、第2の独身時代を満喫中です」
クミさんのケース(48歳 仮名)
学生時代のサークルの先輩だった元夫と、大学卒業と同時に結婚。20代前半に二人の子供を産み「小学校では周囲よりだいぶ若いママでした」と笑顔で話すクミさん。
40代前半には二人の子供も就職、独立し、「そろそろパートからフルタイムの派遣に転職しようかな」と思っていたときに、母親が脳梗塞で突然倒れ、急に介護がスタートしてしまったそうです。実家のある秋田と東京を行ったり来たりの生活を2年ほど続けるうちに夫の浮気が発覚。
「ある時、母の体調が安定していたので予定より一日早く東京の自宅に戻ったら、玄関に見知らぬパンプスがあり…っていう、まるで恋愛ソングの歌詞かドラマみたいな展開でした。でも、その時に家の中に踏み込んで夫と不倫相手を罵倒し、修羅場を演じるだけの気力がなぜか起きませんでした。
もともと家事育児は殆ど私にお任せで、言われなければ何一つ手伝わない夫。遠距離介護の私を気遣うこともなく、不在をいいことに浮気相手を家に連れ込んでいる夫。こんなクズ男、浮気女と争って、取り戻すほどの価値もないな。と急に気持ちが冷めちゃったんです。そこで玄関の写真だけを撮って、そのままこっそりドアを閉めて家から出てきました。
そこからは、離婚が有利になるように夫の浮気の証拠を色々集めました。ちょっと高かったですが興信所にも依頼し、夫が浮気相手とホテルに行くところの写真も抑えてもらいました。
介護があるうちは時間的にも気持ち的にも離婚に向き合う余裕がなかったのですが、母を天国に送り出し、父も施設に入ることが決まり、秋田に通う必要もなくなりました。そのタイミングで、子供たちからの賛同も得て、満を持して離婚を切り出しました。一番心配だったのは経済的な面だったので、慰謝料と財産分与はしっかり請求し、住んでいたマンションをもらったので、それを売って地方に住むことにしました」
クミさんが選んだのは、生活費が安くてのんびり暮らせる地方移住という選択肢でした。
「今は福岡で一人暮らしをしています。なぜ福岡かというと、以前友人を訪ねて行った時に、食べるものが美味しくて、町がコンパクトで海に近く、温暖で住みやすいと思ったからです。実際に東京と比べて家賃も物価も安いので助かっています。
仕事が見つかるかが心配だったのですが、人より少し英語ができるので、仕事もすぐに見つかりました。まだ40代だったのも仕事を探すうえでは良かったみたいで、早く結婚、子育てが終わったことがラッキーだったかもしれません。
それに、実家の秋田の町は小さなコミュニティで、離婚女性に冷たい所があるのですが、福岡はそんな雰囲気がなく、女性一人でも肩身が狭い思いをしません。
平日は仕事ですが、一人暮らしになって可処分時間が増えて、以前より読書をするようになりました。土日はクルマで海までドライブしたり、ヨガに通ったりとのびのびと過ごしています。子供たちもたまに遊びに来てくれます。
経済面での将来について不安はゼロではないですが、あまり贅沢をせずに暮らせば、年金をもらうまで十分やっていけそうだと試算しています。お金の面さえしっかり考えておけば、熟年離婚の問題はほぼないのではないでしょうか?」
「楽しいシングルライフ」実現するために必要なこととは?
いかがでしょう。モモコさんクミさんとも、収入をしっかり確保できる仕事をもっていたり、将来に向けてミニマムに生活できる場所を選んだりと、「経済面」を考えて対策していることが、熟年離婚後の「楽しいシングルライフ」につながっていると言えます。
熟年離婚を還暦過ぎて決意するお話もいろいろ聞きます。皆さん、老後不安を口にします。なぜかひとは年齢を重ねると新しい世界に身を置くことが不安になってきます。クミさんのように見知らぬ土地に住むという大胆な行動に躊躇することもあるでしょう。自分や夫の両親介護時期に重なると、離婚意欲も喪失するかもしれません。よって「離婚を考えるほど、結婚生活が辛い」と“意識した時”に離婚シミュレーションすることを進めています。
40代で結婚生活に意味を感じなくなり、相手を嫌いになったとして、定年まで我慢しようとなると20年以上悶々が続きます。
若年離婚、熟年離婚と分類して考えずともいいではありませんか。生活能力があり、コミュニケーション力が高い女性の場合は、家事に困ったり、友人がいなくて寂しい思いをしたりすることはほとんどありません。唯一の弱点である「経済力」をしっかりつけることで、人生の選択肢は広がります。
「今更、離婚なんて考えられない。諦めている」という人も今のうちから将来設計を書き直し、経済力をつける活動をすることでデメリットをまったく感じない熟年離婚(若年離婚もあり)を初体験できる可能性が増えてきます。