夫から妻に対するモラルハラスメント。もし、自身が被害者になってしまった場合、やってはいけないこととはなんでしょうか?「恋人・夫婦仲相談所」の所長で、数多くのモラハラ相談も受けてきた三松真由美さんに解説してもらいます。

女性の「約4人に1人」が暴力の被害に!?
内閣府が3年ごとに行っている「男女間における暴力に関する調査報告書」の令和6年版(※)によれば、結婚したことがある女性の27.5%、男性の22.0%は、配偶者から被害を受けたことがあるそうで、これは女性の「約4人に1人」にあたります。
さらに女性の13.2%、男性の7.2%は暴力を何度も暴力を受けているという深刻な結果も出ています。
またその「暴力」の内容について、女性を例に見てみると
身体的暴力=15.0%
心理的攻撃=19.9%
経済的圧迫=9.1%
性的強要=10.6%
となっており、いわゆるモラハラにあたる「心理的攻撃」がもっとも多くなっています。
今や他人事ではないモラハラ被害。家庭内で行われる暴力はとくに目に見えにくく、周囲はもちろん、被害者本人がその深刻さに気づけない場合があります。
今回は男性側、夫からモラハラを受けたとき、被害を深刻化させないために避けたほうがよい行動、やってはいけないNG行為を紹介します。
NG1.自分を責める&反省する
モラハラ夫は人格そのものを否定してきます。
あらゆる罵詈雑言で相手を無能で穢れた、価値のない人間だと攻撃してきます。そして、相手を「教育し、改善し、救う」のが自分であると上からの立場を取ってきます。
まともに受け止めて「私はダメな人間なんだ」「私のすることが周囲に迷惑をかけている」などと、自分を責めたり反省したりしてはいけません。
それこそ、モラハラ夫のコントロールの第一歩です。
決して自分を否定しないで。まずありのままの自分でいいと、自分を信じることです。
NG2.家に閉じこもり、周囲との接触を避ける
モラハラ夫は、相手を家の中に閉じ込めようとします。
絶対的支配者になるために、相手が周囲の人と接触することを嫌います。だれかと連絡を取ろうとすると、妨げる場合もあります。
たとえば「近所の人がみんなお前を嫌っているぞ」とか「実家と縁を切らないと、お前のそのだらしない性格は治らない」のような言い方をしてきます。そして、直接の面会以外でも、電話やメール、贈り物のやり取りをすることなど、あらゆる関係性を禁じたりします。もしくは相手が「周囲には連絡はすべきではない」と思い込むような“作り話”をいろいろと吹き込みます。
それはすべて、周囲の人とコンタクトを取ることで相手が束縛に気づいてしまったり、世間にモラハラの実態を知られてしまったりするのを避けるためです。そのような圧力に屈せず、家庭の外の人とのつながりを失わないようにしてください。
NG3.暴力で対抗する
モラハラ夫は、周囲に対して相手を加害者に仕立て上げます。
モラハラの被害初期は、相手もまだ支配下に置かれていません。そうすると、モラハラ夫の態度に腹が立った場合、怒りに任せて相手に物を投げつけたりなど、暴力に走ってしまったりすることも。
しかしこれはモラハラ夫の思うつぼです。受けた暴力を逆手にとって自分が「被害者」になり、周囲のあなたへの評価を下げる材料に使われます。何を言われても、ものを投げたり、頬を叩いたりしてはいけません。
NG4.論争で対抗する
モラハラ夫は、論破できるチャンスを常に狙っています。
モラハラ夫に対抗しようと思うとき、前述の「暴力」は避けたほうが良い手段です。「では言葉で対抗し、相手を説得してはどうだろう?」と思うかたもいるでしょう。
夫婦の話し合いは必要だという正論ですが、多くのモラハラ夫は口が達者です。公平な話し合いがむずかしい。一般的な夫婦関係とは違うと認識することが重要です。
嘘と真実を巧みに操り、いかに相手がダメな人間で、自分が優れた指導者であるかを語ります。すると論争を始める前よりも、打ちのめされ、さらにモラハラ夫の支配下にはまってしまう恐れがあります。
論争は相手の思うつぼ。表面上は謝意を示しつつ、相手の誘いに乗らないこと。ときには演技も必要です。
NG5.涙や優しい笑顔に、つい許してしまう
モラハラ夫は「アメとムチ」を巧みに使い分けます。
たとえば散々罵詈雑言を投げつけておきながら、一転して相手を気遣って優しく接したりします。ときには涙を流して反省の弁を口にしたり、謝罪したりさえします。一時の「甘い顔」に騙されてはいけません。
相手は厳しい言葉や態度(=ムチ)だけでは、相手が疲弊しすぎて心が離れてしまうと知っているのです。そこで、優しい言葉や反省の態度(=アメ)も織り込みながら、支配下に置き続けようとします。甘い言葉や優しい態度、反省の神妙な面持ちは、支配するための「演技」だと割り切り、そこに期待をしては地獄から抜け出すことはできません。
どれも、モラハラ被害を加速させる「やってはいけない行為」です。最近では、公的支援も充実してきています。「あれ?これってモラハラかもしれない?」と感じたら、できるだけ早く、周囲に話をしてください。弁護士無料相談なども活用してください。