それは妻から夫へのリベンジなのか?夫婦間で起きた「メシハラ」の実態を専門家に聞いた
2024/07/30
食事を通じた嫌がらせ行為、「メシハラ」をご存知でしょうか。たとえば食事強要ハラスメント。体育会系の集まりなどで、先輩が立場や権力の差を利用して、後輩に大量に食べることや嫌いなものを食べることを強制することなどが例として挙げられます。
上司が部下に対して、一緒に食事へ行くことを強制することも「メシハラ」の一種といわれています。そんな「メシハラ」ですが、じつは夫婦間でも発生しているんだとか。
実際に起きている例を、恋人・夫婦仲相談所の所長を務める三松真由美さんに教えてもらいます。
シュンスケさん(仮名 32歳)の場合
「僕としてはそんなに深い意味はなかったんですが、妻の地雷を踏んじゃったようです」と語るシュンスケさん。
彼の場合の「メシハラ」は「焦げた料理が出てくる」ことでした。きっかけはある日の夕食。
「妻は魚焼きグリルは掃除をするのが面倒だし、焼くと煙がでるから嫌だと言って魚を電子レンジで調理するんです。僕は富山出身で美味しい魚を食べて育ったので、レンジで調理すると魚がパサパサになることがちょっと不満だったんです。
それである時『魚はちゃんと焼いて焦げ目がある方がおいしいと思わない?』と妻にきいてみました。別に文句を言うつもりはなく、妻はどう思っているのかな?という軽い確認でした。
妻はめんどくさそうに僕の方をちらっと見て『あ、そう。焦げたのが好きなんだ』と、ひとこと言って台所を出ていきました。どうもそれが地雷だったようです」
翌日の晩に出てきたのは、真っ黒に焦げた焼きサバ。その次の日は焦げた豚肉の生姜焼き、その次の日は焦げた鶏のから揚げ…と、その日以降、シュンスケさんのお皿には焦げた食材が出てくるようになりました。
最初は「作り方を失敗したのかな」と思ったそうですが、妻や子どもたちは焦げていないおかずを食べていて、どう見てもシュンスケさんの分だけをわざと焦がしているとしか思えないのだとか。
結局、シュンスケさんが妻に謝り倒すことで、「焦げたメシハラ」から脱出したのだそうです。
マサキさん(仮名 43歳)の場合
「原因は自分のわがままだと思います。でも、まさかこんな形で影響が出るとは思ってもみませんでした」と語るマサキさん。彼の場合の「メシハラ」は「家族と一緒に食事ができない」こと。
きっかけは半年前のマサキさんの転職。
「我が家には小学校2年の長男を筆頭に3人の息子がいて、妻は毎日子育てに奮闘しています。自分はずっと食品メーカーの営業職だったのですが、いつか自分のカフェを経営したいという夢を実現したいと思っていました。ちょうど半年前に、勤めていた会社で上司といろいろあって、会社を辞めて起業することにしたんです」
「会社を辞めて起業したい」というマサキさんに対して、妻は「まだ子どもも小さいし、リスクを冒すのはやめてほしい」と大反対。何度も話し合ったものの、結局は妻を説得できないままマサキさんは会社を退職。退職金の約300万円でキッチンカーを購入して強引に「夢の実現への第一歩」に踏み出してしまったそうです。
「妻の反対を押し切って退職したことで、彼女は激怒。『あなたが自分勝手に人生を生きるなら、私も自分勝手に生きます』と宣言して、一切食事を一緒にしてくれません。自分が出かけているうちに妻と子どもたちでごはんを食べてしまって、家に帰っても何も残っていないことがよくあります。また、妻と子どもたちが妻の実家でごはんを済ませてくることも増えました。先日は運よく妻と子どもたちの食事中に家に戻ったので、食卓に一緒に就こうとしたら、『あなたはとなりの部屋で食べて』と言われてしまいました。
妻の同意を得ずに退職したのは自分勝手だったかもしれませんが、家族と一緒にごはんを食べられないのは辛いです…」
家族の同意を得ないまま退職した影響は、まだまだ尾を引きそうな様子です。
たかが食事、されど食事
美味しいものを食べることのよろこびや、誰かと一緒に食事をすることの楽しさを奪う「メシハラ」。妻たちにとっては夫へのリベンジの手段のひとつになっているのかもしれません。