妻はよかれと思ってやっているけど、じつは夫を不幸にしてしまっている…というケースは少なくないようです。恋人・夫婦仲相談所の所長である三松真由美さんに解説してもらいます。

男性はどんな女性と結婚したいと思うのか?
「ゼクシィ縁結びエージェント」の調査によると、20代~40代の男性に「結婚したい女性の行動の特徴」について聞いたアンケート結果は以下のとおりでした。
1位 気遣いができる 52.5%
2位 愛嬌(あいきょう)がある 51.1%
3位 すぐに感情的にならない 47.1%
4位 嘘(うそ)をつかない 45.7%
5位 話を聞いてくれる 44.9%
気遣い、気配りができるという、女性のこまやかな感性に基づく行動が「妻として望ましい」と思っていることがうかがえます。そんな、男性が望む「気遣いのできる妻」を持ったヒロトさん(39歳 仮名)の例をご紹介しましょう。筆者の知り合いもでもあります。
「結婚したい女性」のタイプナンバーワンと結婚した男性の実際の生活とは…?
気遣いできる姿に惹かれ交際、そして結婚、海外赴任でも助けられる
ヒロトさんが妻のリンカさん(仮名)を「いいな!」と思ったのは会社の部署で行われた忘年会の席上でのこと。男女半々で8人ぐらいで飲んでいたときに、出てきた料理をすぐに手際よく人数分に取り分けたり、グラスの空いている人がいると、その人の飲み物お代わりの注文をすぐに出したり、隣の人が飲み物をこぼしたときにさっとティッシュを出して渡したり、こまやかな気遣いと気配りをみせていたのがリンカさん。
他の女子がはしゃいで飲むだけのなか、ひたすらみんなのために気を配る姿に感動したそうです。
その後、ヒロトさんの猛プッシュでつき合い始めた2人。つき合っているときも彼女がいつも気を遣って、デートはいろいろ時間がかかりました、とヒロトさんは振り返ります。
「『どこで夕飯を食べようか』と僕がGoogle Mapで検索をして、『焼肉は?』っと聞くと『いいわねー』。『じゃあイタリアンは?』『いいわねー』。『ラーメンはどう?』『いいわねー』というので、彼女の気持ちがよくわからない。
『結局どれがいいの?決めていいよ』と言うと『あなたの決めたところでいいの』『僕も君の決めたところでいいよ』『いえいえ、あなたが決めたところがいいの』とかいうやりとりが、永遠に続くことがよくありました。
あとは、エスカレーターやドアの出入りの際、僕が『先にどうぞ』と言うと、『いえいえ、先にどうぞ』『え、いいよ。どうぞ』『いえいえ、ホントにいいから、あなたが先にどうぞ』とか2~3往復やりとりがあって、それからやっと降りる、みたいなことも毎回ありました。
ちょっとめんどくさいなぁと思うこともありましたが、いつも僕に気を遣ってくれているんだな、と悪い気はしませんでした」
そしてつき合って2カ月のときにヒロトさんに海外転勤の辞令がおり、赴任前に結婚をしてしまおうと交際半年で入籍をしたそうです。
「赴任先の中国では、現地の人々とのつながりの他に駐在員だけの日本人コミュニティーもあり、慣れない場所で新しい人間関係作りに苦労する点もありました。しかし彼女は『以前○○さんに××をいただいたから、今度会うときには△△をもっていってお返しをしなきゃ』など、さまざまな人との過去のやり取りをいつも詳細に記憶していて、完璧に対応していました。彼女の気配り、気遣いのおかげで無事に現地の人達とも馴染むことができたと思っています」
行き過ぎた気遣いに息苦しさを感じるように…
妻の気遣い、気配りのおかげで無事に2年間の赴任を終え、日本に戻ってきたヒロトさん夫婦。ただ、最近ヒロトさんはそんな妻の気遣いを息苦しく思うときが増えてきたと言います。
「たとえば、僕が地方へ出張するときは、その地域の天気を彼女はあらかじめ調べていて、『明後日は雨が降るみたいよ』と、折りたたみ傘を差しだします。まあ、言われなくても傘はいつも持っていますが、そういうと角が立つから『ありがとう』とカバンに入れます。
あるいは『東京駅が8:17の新幹線だったら、うちを6:30に出て、6:48分の快速に乗った方がいいわよ』と前日に乗換案内のスクショをLINEに送ってきます。東京駅への移動は初めてじゃないし、妻より僕のほうがたくさん行っています。別に48分の快速に乗らなくても、56分の特別快速に乗って、駅での乗り換えをダッシュすれば同じ時間に東京駅に着くことだって知っています。
でも、これもめんどくさいから“Thank you”のスタンプを押して黙っていました。
ところがこれが、2カ月で3回同じ出張があったときに、3回とも同じ乗換案内が送られてきたので、さすがに僕も『いちいち乗換案内を送らなくてもわかるから、いらないよ』と口頭で注意したところ、『気づかなくてごめんなさい、本当にごめんなさい』と何度も何度も過剰に謝罪されちゃいました。なんだかこっちが妻の親切を踏みにじって、ひどい言葉でいじめたみたいになって、ちょっと気まずくなっちゃいました。
また、妻は僕に気遣いしすぎて、僕より先に何かしようとして、いつも僕のことをみているんです。たとえば、ちょっと目を冷蔵庫に向けると『何か飲む?』と聞いてきたり、洗面所を見ただけで『そろそろお風呂にしたほうがいい?』と聞いてきたり。僕の行動がいちいち監視されているみたいで気味悪く感じることもあります。
一緒に週末に出かける予定があるときも、金曜日位に『ほんとに明日○○に行くことでいいの?無理してない?嫌だったら遠慮なく言ってね』とかLINEが来ます。嫌だったら…とか、勝手にこっちの気持ちを先回りしていろいろ言ってくるのは正直不快だし、言われなくたって、嫌ならちゃんと言いますよ。
僕はどっちかというとさばさばしたタイプで、だからこそこまやかな気遣いができる彼女を良いなと思ったのですが、何かを決めるのにも時間がかかるし、こっちのちょっとした動きに反応されるのも面倒。彼女の丁寧さ、気遣いがだんだん重荷になって、何かを相談したりするのが嫌になってきています。
彼女の気遣いはやさしさじゃなくて、自分は気遣いができるんですっていうアピールなのかと思えてきて、いろいろ言われるほど嫌な気分になります」
よかれと思っての行動は、逆効果になることも…
男性の理想の「気遣いができる妻」。
でも、過剰な気遣いが夫をイライラさせたり嫌な気分にさせたりしてしまうという、思わぬ逆効果に悩むヒロトさん。
本人はよかれと思っているのに、知らないうちに夫を不幸にしている妻。日本人は女性に気遣い、気配りを求めがちで、それに対応することが「素敵な女性」と思われがちですが、過剰な気遣い、気配りはかえって相手を苛立たせることもある。何事もToo muchは禁物ですね。