コロナ禍によって生活が一変し、そのストレスから心身のバランスを崩す人が増えていると言われています。伊藤園ではこうした現状を受け、「第5回 伊藤園健康フォーラム」をオンライン開催。「感染症時代のストレス対処術と“茶の効用”」をテーマに、心身の健康にお茶がどのように役立つのかを有識者の先生方とともに探りました。お茶を活用したセルフケアの方法も紹介されたフォーラムの内容をご紹介します。
コロナ禍のメンタルヘルスにお茶はどう役立つのか?
フォーラムを主催したのは、伊藤園の研究機関である「伊藤園 中央研究所」。ここではお茶や各種飲料の成分などの安全性、健康性、おいしさなどに関する研究を行っており、長年、お茶が心身に与える影響や感染症予防効果などについても研究を進めてきました。
その中で、若者のうつ病の増加など、特にコロナ禍のメンタルヘルスの問題に注目。フォーラムでは現状と対処方法にお茶がどのように役に立つのかを、精神医学や歯学、社会学、栄養学などの専門家有識者の先生方と一緒に考えました。
ストレスで歯周病も増加!? 緑茶カテキンはお口のケアと新型コロナウイルス対策に効果という研究結果も!
最初に行われたのは、奥羽大学歯学部教授・山田嘉重氏によるオンライン基調講演。
コロナ禍によってストレスが続くと、口の中の免疫力も低下し、歯周病や虫歯が進行しやすくなるのだそうです。そしてその予防に、ポリフェノールの一種で主にお茶の苦渋味成分「緑茶カテキン」が大いに効果があるという研究結果が報告されました。
「緑茶カテキンには殺菌効果や抗炎症作用などがあり、歯垢の付着を抑え、虫歯や歯周病を予防・改善する効果が期待できます」(山田先生)
さらに、緑茶カテキンには抗ウイルス作用、免疫力向上作用、抗アレルギー作用、体重減少効果、抗酸化作用、抗がん作用、認知症予防など多くの働きがあり、なんと、新型コロナウイルス感染力低下および細胞進入抑制作用があるという研究結果も!
歯を磨いた後でお茶でよくうがいをする、緑茶を10秒程度口に含んだ後で飲む「含み飲み」をするなど、口のメンテナンスに役立つ飲み方も紹介されました。
専門家の研究・調査報告から見えた「コロナ禍の深刻なメンタルの問題」と「お茶の力」とは?

続いて、「感染症時代のストレス対処術と茶の効用」をテーマに、パネルディスカッションが行われました。
精神医学や歯学、社会学、栄養学などの各分野で活躍されている専門家の方々が登壇し、山田氏も引き続きリモートで参加。株式会社三菱総合研究所 キャリア・イノベーション本部主席研究員・奥村隆一氏がモデレーターを務めました。
コロナ禍で抑うつ状態の人が倍増し、特に若年層では「死にたい」願望も
まず初めに、徳島大学大学院社会産業理工学研究部准教授・山本哲也氏が、コロナ禍とうつ病の関係の調査結果が報告。それによると、コロナ禍が始まった2020年、抑うつ状態にある人の推定率が平時の2倍以上に増えたそうです。
しかしその後、人々がコロナ禍の生活に適応したため推定率は減少。しかし若年層だけは減少が見られず、逆に「死にたい」と願う希死念慮(きしねんりょ)の傾向が上がってきていると言います。
「人との交流が減り、孤独感が増大していることが大きな要因。この傾向は世界各国で見られていて、深刻な問題と言えます」(山本氏)
東京家政学院大学人間栄養学部教授・海野知紀氏からは、ストレスと食の関係の報告もされました。
「ストレスは食欲に非常に影響するということが分かっています。ステイホームで活動量が低下している中、ストレスで食事の量が増え、いわゆる“コロナ太り”の率も加速しています」(海野氏)
ストレスによって、心身ともに問題を抱えがちな私たち。パネルディスカッション後半では、こうしたストレスへの対処術が話し合われました。
お茶に含まれる緑茶カテキンやテアニンなどの成分が、腸から脳に働きかける!
医療法人社団TLC医療会ブレインケアクリニック名誉院長・今野裕之氏からは、「うつ病などの精神疾患は、神経の炎症が関わっていると言われていています。抗炎症作用や抗酸化作用を持つ緑茶カテキンを摂ることによって、神経の炎症も緩和できるのではないかと考えます」との見解が語られました。
茶に多く含まれるアミノ酸の1種「テアニン」には、脳波をリラックスさせる効果が報告されており、カテキンとテアニンの相乗効果で、気持ちを落ち着かせる作用が期待できると考えられるそうです。
「茶葉を丁寧に急須に入れるところから始まる“お茶を入れる”一連の作業も、心を集中して行うことで瞑想のような効果が得られます。お茶を皆で飲むことでコミュニケーションにもなりますから、お茶は非常にストレスの抑制・解消に役に立つと考えられます」(今野氏)
事実、緑茶の摂取量が多い高齢者ほど、抑うつ症状が抑えられているという調査結果もあると海野氏は言います。
「腸には脳に伝わる仕組み“脳腸相関”というものがあり、緑茶カテキンが腸を介して脳に影響しているのではと推測されています。まだ研究段階ですが、今後も緑茶カテキンには注目していきたいと思っています」(海野氏)
たしかに、お茶を飲んでホッとひと息ついたり、気持ちが穏やかになるなど、お茶がメンタルに働きかける力があることを、多くの人が体験しているのではないでしょうか。それをより効果的に活用する、毎日の習慣としてお茶を生活に組み込むのが理想だそうです。
伊藤園ではティーテイスターの資格を持つ社員が、お茶セミナーやお茶会などを全国各地で開催しています。現在はオンラインが中心ですが、このイベントに参加するのもお茶を通じてコミュニケーションを楽しむ1つの方法です。こうしたさまざまな機会を活用しながら、心と体を健康に保っていきたいですね。
協力/株式会社伊藤園