【連載】熟れすぎMANGO VOL.137
2018/01/10
ちはるの老眼鏡!?「ノンフィクション人生」
毎日がデビュー
私の世代で「高校デビュー」という言葉が生まれ広く 使われるようになっていったけど、最近では、ちょっと短縮されて、『高デ』『KD』と言うらしい。なんだか悪意度数が増しているような。要は、中学生の時は目立たない存在だった子が、急激なイメージチェンジを図り、あか抜けた格好や振る舞いをして、時には夜遊びや不良行為にまで手を染めたりすること、ですよね。
先日、息子と飲んでいたら「お母さんは三十路デビューだよね?」と、ちょっと小馬鹿にした感じで言われて、「はぁ?」となった。「だって、僕が小学生になるまではあんまり酒も飲まなかったし、夜遊びもしなかったじゃん」
確かに、こんなにお酒を飲むようになったり、カフェを開いたり、ママをお留守にして家を空けるようになったのは30代になった頃だったかもしれない…。息子が小学校に入学して、念願のマイホームを買い、切実にお金も必要になった。ママはこれからを生き抜くために必死で働き、社会や人間関係を学んでいたのだよ。でも、この子から見たら、私は完全なる「三十路デビュー」だったんですね。略して『30D』。
「大学デビューとか社会人デビューとか色々あるけどさ、遅咲きになればなるほど周りからすると痛々しくなるんだよね…」冷静に淡々と続ける息子、23歳。な、何なのよ?あのね、正確に言うとママの場合は、高校生で芸能界にデビューしているから、「三十路、再デビュー」だと思うんだけど。今更それがトラウマになったとか、恨み節でも言いたいのでしょうか?「いやさ、僕ってさ、あまりにも変わらずにきちゃったでしょ。外見とか。だから、髪型変えたり、メガネ換えたりするだけで、チャラくなったとか、必死な感じでイタいと思われないかなって、色々考え過ぎちゃうんだよ。だから、簡単に変われちゃう人がうらやましいと最近思うんだよね」
ちょっと照れくさそうにアゴの下をコシコシさすりながら語る息子。確かに、真剣に話す時のその癖すら、小さな頃から変わっていない。親からすると変わらないという事はどこか微笑ましいし、ずっと変われないというのも、それはそれで不器用過ぎまいかと不安になる。「毎日がデビューでいいんじゃない。天気と一緒で変わっていくのは当たり前なんだから。人に馬鹿にされても、迷惑さえかけなければいい。いくつになっても変わりたいなら変わるべき!」と、アッケラカンと返したら、「そうだね。そろそろデビューすっかなー」と苦笑いしていた。
翌日、「生まれて初のパツキンになりました!」とラインが届いた。まあ! なんて分かりやすいデビューの幕開けだこと。若かりし日の自分を思い出し、ちょっと小っ恥ずかしいような、でもワクワクする気持ちになった。挑戦や失敗は、若い時から繰り返した方がいい。さぁて、私も負けずに「五十路デビュー」の計画でもたてましょうかねぇ。
文/ちはる
ちはる/テレビ、CF、著書の企画などで活躍中。12年、14歳年下の旦那くんと再婚。目黒でカフェ「チャム・アパートメント」を経営。