11月8日「いい歯の日」を前に10月中旬、オンラインシンポジウム「歯と口の健康シンポジウム 2022」が開催されました。全身疾患にもつながる歯周病の恐ろしさと女性ホルモンとの深〜い関係(!)、そして日々のケアの方法まで、内容充実のシンポジウムの模様をレポートします。
歯周病は歯と歯茎だけじゃない、骨の病気でもあるんです!
まずは、予防歯科が専門の大阪大学大学院歯学研究科教授・天野敦雄先生のお話から。歯茎が痩せ細り、歯並びも崩れてしまった口の中の様子が紹介され、歯周病がいかに恐ろしい病気なのかが語られます。
●歯周病は痛みがないまま進行し、ある日、ひどい口臭や歯のぐらつきで気づく「サイレント ディジーズ(静かなる病気)」との別名があること
●歯と歯茎だけの病気ではなく、骨の病気でもあり、重症化すると歯を支える骨が痩せてしまい、歯がグラグラしたり、抜けて食べ物を噛むことができなくなること
●歯周病と肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症、関節リウマチ、脳卒中、認知症などにかかわりがあること
「歯周病は全身疾患を引き起こす要因となります。口の健康は全身の健康を支えているんです」という先生の言葉が心に刺さります。
そして、もっとも興味深かったのが、女性ホルモンと歯周病の関係です。一見、無関係そうな女性ホルモンと歯の健康ですが、それが大アリだったのです!
女性の体を守ろうとする女性ホルモンが歯周病の悪化を招く!?
「女性ホルモンのエストロゲンは免疫にかかわっていて、女性の体を外敵から守る役割を果たしています。エストロゲンのバランスが崩れると、時として、過剰な免疫反応が起こってしまう。それが、炎症です」(天野先生)
歯周病の症状の一つである歯茎の腫れも炎症。食べかすに細菌が繁殖した歯垢(プラーク)や歯石を取り除こうとする体の免疫反応で、炎症が起こると、歯と歯茎の間に歯周ポケットができます。そこに血がたまったりして、歯周病菌が繁殖、悪化していくのです。
女性ホルモンの影響を受けやすい歯周病は、世代に応じてさまざまな形で現れてきます。
思春期に、生理の前に歯茎が腫れたりする「思春期・月経関連歯周病」。思春期から35歳くらいまでの間にかかりやすく、歯茎と骨が急速に壊れていく重度の「若年性(侵襲性)歯周病」。さらに、女性ホルモンの量が激増する妊娠中に発症し、早産や低体重児出産のリスクを高める「妊娠関連歯周病」。更年期に入り、女性ホルモンが枯渇して、もともとあった歯周病が悪化する「閉経後の歯周病」…。
「注意していただきたいのは、歯を磨いたときの出血です」と天野先生。なんでも、歯周病菌はたんぱく質と鉄が大好物で、歯茎から出血があると歯周病菌が元気になるのだそう。
「出血があったら、すぐに歯医者さんに行ってください」という天野先生の言葉に、シンポジウムの司会者も強くうなずいていました。
35歳前後発症の歯周病は重症化しやすい!出血があったら歯医者さんへ
第2部は、フリーアナウンサーの政井マヤさんが加わって、天野先生とのトークセッションです。更年期で気をつけるべきポイント、かかりつけ歯科医の重要性など、トークが盛り上がり、中でも、目から鱗(うろこ)だったのが、視聴者からの「歯周病の進行スピードは年齢によって差はありますか?」という質問。
なんと、歯周病の進行は「若い人ほど早い」とか! 35歳前後から歯周病を発症した人は重症化するリスクが非常に高いそうで、やはり、出血など異変があったら、早めに歯医者さんに行くのが大切なよう。
政井さんも、「今まで、誤った歯周病のイメージを持っていました。若い人は大丈夫かと思っていましたが違うんですね」といたく納得し、トークセッションは終了しました。
健康を守るために大切なこと
そして第3部は「歯科衛生士によるブラッシング講座」。
歯磨き方法には、歯と歯茎の境目に毛先を向けて斜め45度に歯ブラシを当てる「バス法」と、毛先を歯に対して90度に当てる「スクラビング法」がおすすめだそうですが、いずれも、注意点は同じ。小刻みに動かし、毛先が潰れない程度の力加減で磨くという2点です。
一方で、電動歯ブラシは逆に小刻みに手を動かさず、必要に応じて、45度か90度に当てるのがポイントだそうです。
「健康な口を守るためには、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアと、日々のセルフケアが重要です。自分自身も自分の歯の主治医ですよ」という天野先生の言葉を忘れずに、日々のケアを大切にしていきたいですね。
協力/パナソニック