放置すればガンのリスク増も!大人→子どもへ感染の危険性もある要注意な細菌とは?
2024/12/26
胃がんなど病気の原因として知られる「ピロリ菌」。実は知らない間に感染していて、子どもに移してしまう危険性もあるんです。
ピロリ菌が原因で起こる病気や感染経路などついて、ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニックの粟田裕治院長に聞きました。
- Q.ピロリ菌とはどのようなものですか
- Q.ピロリ菌感染で引き起こされる健康トラブルにはどのようなものがありますか
- Q.自分がピロリ菌に感染しているかを知る方法はありますか
- Q.ピロリ菌に感染していても、症状がなければ放置してもいいですか
Q.ピロリ菌とはどのようなものですか
ピロリ菌は胃の中に生息する細菌で、「ヘリコバクター・ピロリ」が正式な名前です。アルカリ性のアンモニアを作ることで、強い酸性の胃の中でも生存し続けます。
多くの研究で、ピロリ菌が萎縮性胃炎(慢性胃炎)、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因になっていると報告されています。
ピロリ菌は口から感染すると言われています。ピロリ菌に感染している大人から赤ちゃんに口移しで食べ物を与えたり、糞便に汚染された食物・水(井戸水など)を摂取したりすることで感染します。
とくにピロリ菌に感染しやすいのは、4歳ごろまでの乳幼児期と考えられており、成人になってから感染することはまれです。
Q.ピロリ菌感染で引き起こされる健康トラブルにはどのようなものがありますか
ピロリ菌はさまざまな病気の発生に関与しています。代表的な例として、次のものが挙げられます。
・萎縮性胃炎:
ピロリ菌が作るウレアーゼという酵素が、胃の粘液に含まれている尿素を分解してアンモニアを作ります。このアンモニアが胃の粘膜を傷つけると炎症が起こります。
長期間にわたって胃の粘膜の炎症を繰り返すと、胃の粘膜が萎縮を起こし、萎縮性胃炎という胃炎が生じます。萎縮性胃炎の多くは無症状ですが、チクチクとした胃の痛み、腹部の膨満感、胃が重く感じられるなどの症状が出るケースもあります。
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍:
ピロリ菌感染で胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症することがあります。その際の症状は腹痛です。悪化すると出血を起こして、胃酸で血液が真っ黒になり、黒色便を認める場合もあります。
・胃がん:
胃がんの発症にもピロリ菌は関与しています。早期の胃がんは無症状ですが、進行してくると胃の痛み・不快感・違和感・胸やけ・胃もたれ・吐き気・嘔吐・吐血・黒色便・食欲不振・体重減少といった多様な症状を引き起こします。
Q.自分がピロリ菌に感染しているかを知る方法はありますか
ピロリ菌感染の検査方法は多数あります。主な検査方法は以下のとおりです。
・血液検査・尿検査:
ピロリ菌に対する抗体があるかどうかを血液や尿を用いて調べる方法です。簡便なので広く用いられていますが、ピロリ菌を除菌した後でも陽性が続くこともあるので注意が必要です。
・尿素呼気試験:
診断のための薬を服用する前後で、呼気(口から吐いた空気)を集めてピロリ菌の有無を調べる方法です。もっとも精度の高い検査方法で、感染しているかどうかの検査にも、除菌治療後の除菌判定(除菌できたかどうかの検査)にも推奨されています。
・便中抗原検査:
糞便中のピロリ菌を調べる精度の高い検査法です。現在ピロリ菌に感染しているかがわかるので、ピロリ菌の感染診断と除菌判定に有用です。しかし、便を提出するというところが簡便ではないため、それほど使用されていません。
・内視鏡検査(胃カメラ)で胃の粘膜を採取して診断する方法:
組織検体中のピロリ菌を顕微鏡で直接観察する鏡検法、粘膜を特殊な液と反応させて色の変化で判定する迅速ウレアーゼ法、粘膜に付着したピロリ菌を培養し確認する培養法の3つの方法があります。その場で結果がわかる迅速ウレアーゼ法がよく用いられます。
Q.ピロリ菌に感染していても、症状がなければ放置してもいいですか
ピロリ菌がいるとわかった場合は、放置せずすぐに除菌治療を受けるのがいいでしょう。
前述した萎縮性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がんの他、胃マルトリンパ腫、胃過形成性ポリープ、特発性血小板減少性紫斑病、機能性ディスペプシアなどの病気の発症にもピロリ菌が関与しているため、早期の除菌が望まれます。
胃がんに関しては、ピロリ菌の除菌により発生・再発の確率が1/2~1/3に減少します。また、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発はほぼ抑制すると報告されています。
また、ピロリ菌の早期の診断・治療(除菌)は、大人から子どもへの感染を防ぎ、次世代のピロリ菌感染予防にもつながります。
Q.ピロリ菌はどのように除去するのでしょうか
胃酸の分泌を抑える薬(ボノプラザン)と、2種類の抗生物質(アモキシシリン・クラリスロマイシン)の計3種類の薬を、1日2回(朝夕食後)7日間服用します(1次除菌)。
1週間薬を飲み終えて1カ月以上経ってから、尿素呼気試験や便中ピロリ抗原検査で除菌できたかどうか判定します。1次除菌により約90%のかたは除菌成功となりますが、薬の飲み忘れなどがあると除菌成功率は下がります。
1次除菌で除菌できなかった場合は、抗生物質の種類をクラリスロマイシンからメトロニダゾールに変更し、同様に1日2回7日間連続で服用して除菌を行います(2次除菌)。
2次除菌を失敗した場合には3次除菌が行えますが、3次除菌からは保険診療の適応範囲外であるため自費診療となります。
取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部