バリウムでは見つからない!?胃がんリスクへの備えは「胃カメラ」が正解な理由とは

2025/04/24

「痛そう」「怖い」…、そんな理由で胃カメラを避けていませんか?実は、胃カメラでないと見つけられない胃炎やがんがあるんです。

胃カメラ検査の重要性や、痛みや不安を軽減する方法などについて、内視鏡・消化器の専門医で、ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニックの院長である粟田裕治氏に教えてもらいました。

Q.胃カメラとはどのような検査ですか

胃カメラとは、内視鏡(先端にカメラのついた管)を口または鼻から挿入し、咽頭・食道・胃・十二指腸の内部を観察する検査のことです。

検査当日の朝食を抜いて、午前中に検査を実施するケースが多いです。朝食を抜く以外に大きな事前準備はなく、大腸カメラの検査前のように下剤を飲む必要などもありません。多くの場合、検査時間は5~10分程度です。

内視鏡に器具を通して、検査中に胃の組織の一部を採取する(生検)ことができます。採取した組織は、顕微鏡で詳細を見る検査(病理検査)へ出します。

また、別のワイヤーでできた器具を内視鏡につければ、食道がん・胃がん・胃や十二指腸のポリープの切除も可能です。

しかし、内視鏡による上部消化管(食道・胃・十二指腸)のポリープや早期がんの切除は、病院に入院して行う必要があります。検査中にその場でポリープを切除することが多い大腸の内視鏡とは、この点において異なります。

Q.胃カメラで見つけられる病気には、どのようなものがありますか

咽頭がん・食道がん・胃がん・十二指腸がん・胃ポリープ・胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・粘膜下腫瘍など、胃カメラで見つけられる病気は多岐に渡ります。

特に胃がんは、2020年の日本の部位別がん罹患数で3位に入っている、日本人に多いがんです。

胃がんの早期発見・早期治療のためには、胃カメラの検査が重要となります。早期の段階で胃がんを発見すれば、内視鏡の先から治療器具を出してがんを切除でき(内視鏡手術)、従来のお腹を開いて行う外科手術を受けずに済みます。

また、胃カメラではピロリ菌に感染していると起こる、萎縮性胃炎を見つけられます。萎縮性胃炎を認められた場合、検査を追加して確定診断を行います。

胃がんはピロリ菌の感染が原因となることが多いため、早期の除菌が望ましいです。ピロリ菌の感染者数は年々減少傾向にありますが、若い人でも一度胃カメラの検査を受けて、感染の有無を確認しておくと良いでしょう。

Q.胃カメラとバリウム検査の違いはなんですか

バリウム検査とは、飲んだバリウムを食道・胃・十二指腸の中で広げながらレントゲン(X線)で撮影して、食道・胃・十二指腸の形状や、表面の凹凸を見る検査です。立体的な食道・胃・十二指腸を、レントゲン写真という平面で観察します。

胃カメラでは、内視鏡の先から空気を出して食道・胃・十二指腸を拡げて、隅々まで観察します。立体的なものを直接見るため、バリウム検査よりも圧倒的にたくさんの情報を得られます。

早期の胃がんの中には、粘膜の色のみが変化して、形状には変わりがないものもあります。粘膜の色の変化をバリウム検査で見ることは不可能です。色の違いまで分かる胃カメラであれば、こういったパターンの早期胃がんを見つけることができます。

上記の理由から、バリウム検査よりも胃カメラを受けることをおすすめしています。

Q.胃カメラを受けたほうがいいのはどんな人ですか

写真AC

健康診断のバリウム検査やピロリ菌検査で異常の指摘があった人は、必ず胃カメラを受けてください。

また、呑酸(どんさん:胃酸が口の中に上がってくる症状)・胸のつかえ感・胸やけ・胃の痛み・胃もたれ・黒色便(黒い便が出る)・嘔吐・食欲低下などは、食道がん・逆流性食道炎・胃がん・胃潰瘍・胃炎・十二指腸潰瘍などの病気が原因となっている可能性があります。このような症状がある場合にも、胃カメラの検査を受けるといいでしょう。

大量の吐血(血を吐く)や、黒色便が出てふらつき症状を伴うケースでは、食道・胃・十二指腸のどこかで持続的に出血をしている可能性があります。すぐに大きい病院を受診し、緊急で胃カメラを受ける必要があります。

Q.胃カメラは苦しかったり、痛かったりしませんか

胃カメラは口から挿入する場合と、鼻から挿入する場合があります。

一般的には、口から挿入する際に利用する経口内視鏡のほうが画質が良いというメリットがありますが、口から入れた胃カメラの管が、検査の間ずっと喉に挟まったままになるため、当然不快感が強く、オエッとなる咽頭反射で苦しい思いをする方が多いです。

後者の場合、口から入れるものより管の細い胃カメラ(経鼻内視鏡)が使用されます。そのため、口からに比べて咽頭反射が起こりにくくなり、負担は少し軽減されます。しかし、鼻の穴に薬やチューブを入れる準備段階が辛かったり、鼻血が出ることもあります。

経口、経鼻それぞれにメリット・デメリットがありますが、咽頭反射については鎮静剤という眠くなる(ウトウトする)薬を点滴投与した状態で検査をすることで、負担が軽減できます。ですので、万全な体制で検査をしたい場合は、鎮静剤投与による口からの胃カメラ挿入をおすすめします。

教えてくれたのは・・・

粟田 裕治
医師(内科・内視鏡専門医・消化器病専門医)

コンパスメディカルグループ 医療法人社団CMG ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニック院長。日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医、日本内科学会 認定内科医、日本消化器病学会 消化器病専門医。2015年、日本医科大学卒業。救急医療・急性期医療に特化した川崎幸病院勤務で研鑽を積み、2022年、ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニックの院長に就任。「無症状でも油断禁物。内視鏡検査や健康診断で早期発見」を目指し、胃・大腸内視鏡検査において豊富な実績を持つエキスパート。

取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部

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