喉を抑える女性

のどの痛みや声のかすれ…じつはがんの初期症状かも!?風邪と似ているため見過ごされることもあるがんを解説

2025/05/31

のどの痛みや声のかすれ…。風邪でよくある症状ですが、実は咽頭がんの初期サインかもしれません。

放置すると声を失う危険もある咽頭がんについて、消化器病専門医・内視鏡専門医で、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックの院長、安江千尋氏に聞きました。

Q.咽頭がんとはどのようなガンですか?

咽頭がんとは、「咽頭(いんとう)」と呼ばれる喉の奥にできるがんのことです。

咽頭は、鼻の奥から喉頭(声帯)や食道・気管へとつながる通り道で、呼吸・発声・飲み込みなどに関わる重要な場所です。

咽頭は大きく「上咽頭」「中咽頭」「下咽頭」の3つに分かれており、がんができる部位によって症状や治療法が異なります。

初期の咽頭がんでは、声のかすれやのどの痛みといった症状が引き起こされます。風邪と似ていることも多く、見過ごされやすい傾向があります。

進行すると呼吸や食事、発声に大きく影響するため、早期発見・早期治療がとても重要です。

Q.咽頭がんの原因やなりやすい人の特徴にはどのようなものがありますか?

咽頭がんの主な原因は、喫煙と飲酒です。特に両方の習慣がある人は、咽頭がんのリスクが大きく高まることが知られています。

中でも、飲酒すると顔が赤くなる「フラッシャー体質」の人は要注意です。この体質の人は、アルコールを分解する酵素の働きが弱く、アセトアルデヒドという発がん性のある物質が体内にたまりやすくなり、がんのリスクがさらに高くなります。

また、ウイルス感染も重要な原因のひとつです。上咽頭がんにはエプスタイン・バーウイルス(EBV)、中咽頭がんにはヒトパピローマウイルス(HPV)の関与が指摘されています。

これらの生活習慣やウイルス感染が複合的に関わり、咽頭がんの発症に影響を与えていると考えられています。

Q.咽頭がんの自覚症状にはどのようなものがありますか?

喉の診察
写真AC

咽頭がんの初期症状は、のどの違和感や軽い痛み、声のかすれ、飲み込みにくさなどです。風邪や声の使いすぎと間違われやすく、見過ごされるケースが少なくありません。

進行してくると、片側ののどの痛みが続く、耳の奥が痛む、血の混じった痰が出る、食べ物が引っかかる感じがする、首のしこりができるなどの症状が現れます。これらは、がんが広がったり、リンパ節へ転移したりしているサインの可能性があります。

Q.咽頭がんを予防・早期発見することはできますか?

白衣の女性医師
写真AC

咽頭がんは、生活習慣の見直しによって予防が期待できるがんです。まずは、たばこを吸わないこと、過度の飲酒を控えることが予防には非常に効果的です。

また、飲酒で顔が赤くなる「フラッシャー体質」の方は、少量の飲酒でも発がんリスクが高まるので、継続的な飲酒は控えるのが望ましいとされています。

中咽頭がんの一部はヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因とされているため、HPVワクチンの接種が予防に役立つと考えられています。

早期発見のために、「声のかすれ」「片側だけののどの痛み」「飲み込みづらさ」などの症状が2週間以上続く場合には、自己判断せずに耳鼻咽喉科を受診してください。症状が軽いうちに診断がつけば、治療の選択肢が増え、予後にも大きな差が生じる可能性があります。

Q.咽頭がんを治療することはできますか?

咽頭がんは、がんの位置(上咽頭・中咽頭・下咽頭)や進行度に応じて、治療できるがんです。早期であれば、放射線治療や手術により声や飲み込む機能を保つことも可能です。

特に上咽頭がんは放射線や抗がん剤によく反応しやすく、薬物療法と放射線治療の組み合わせが主な治療法となります。

中咽頭がんでは、早期であれば放射線や手術での治癒が見込まれます。HPV(ヒトパピローマウイルス)が関与するタイプは、放射線化学療法への反応が良いケースが多いです。

下咽頭がんは早期であれば内視鏡下切除や部分切除、放射線化学療法による根治を目指します。進行すると喉頭の摘出が必要になる場合もあります。

いずれのタイプも、がんの進行度や全身状態、ご本人の希望をふまえて専門医が治療法を決定します。

咽頭がんは早期発見が非常に大切ながんです。少しでも気になる症状が続くようであれば、耳鼻咽喉科や消化器内科などへの受診と相談が勧められます。

教えてくれたのは・・・

安江 千尋(やすえ ちひろ)院長

消化器病専門医・内視鏡専門医。がん専門病院であるがん研有明病院で豊富な臨床経験を積み、特に咽頭・食道・胃・十二指腸・大腸がんの早期発見・内視鏡治療を専門とする。大阪市にて「天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック」を開院し、すべての内視鏡検査を自ら担当。眠って受けられる苦痛の少ない検査や、患者に寄り添った丁寧な診療に定評がある。医療記事の監修や講演、地域への健康啓発活動にも積極的に取り組んでいる。

取材/文:山名美穂
編集:サンキュ!編集部

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