全身の「かゆみ」はがんのサイン?!気づかないうちに進行する胆道がんの症状と早期発見のポイントとは

2025/10/27

胆道がんは、胆汁の通り道にできる比較的まれながんです。しかし、初期症状に乏しく、気づいたときには進行していることもあります。

今回は、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックの安江千尋先生に、胆道がんの特徴や検査・治療法について聞きました。

子育て・心理分野を得意とするチャイルドコーチングアドバイザー、LABプロファイル(R)プラクティショナー。子...

>>>山名美穂の記事をもっと見る

Q.胆道がんとはどのようながんですか

胆道がんは、肝臓で作られた胆汁の通り道(胆道)に生じるがんの総称です。部位により、胆のうにできる「胆のうがん」、肝臓の中や外の胆管にできる「胆管がん」、十二指腸への出口の「乳頭部がん」などに分かれます。

日本では比較的まれながんですが、高齢者に多いのが特徴です。初期は症状が乏しく、進行して腫瘍が胆汁の流れを妨げて、黄疸やかゆみといった症状が出てから見つかることも少なくありません。

診断には腹部超音波やCT/MRIなどの画像検査と、内視鏡を使った組織検査(ERCP(※1)、EUS(※2))を総合して確定します。部位・広がり・リンパ節や遠隔転移の有無が治療方針と予後を左右します。

※1.ERCP:内視鏡的逆行性胆管膵管造影。造影剤を使って胆管の中の様子をレントゲンで確認する検査
※2.EUS:超音波内視鏡。胃や十二指腸の内側から超音波を当てて胆のうや胆管を詳しく観察する検査

Q.胆道がんになりやすい人の特徴にはどのようなものがありますか

長期にわたる胆道の炎症や胆汁うっ滞(胆汁が流れにくくなって溜まる状態)が、胆道がんのリスクを高めます。これらの状態を引き起こす代表的な原因は、胆石症、胆のうポリープ(特に10mm以上や増大傾向にあるもの)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、膵・胆管合流異常、肝吸虫などの寄生虫感染です。

B型・C型肝炎や肝硬変が背景にある方もリスクが高まります。また、糖尿病・肥満、喫煙、飲酒習慣も関連が指摘されています。家族歴がある場合も注意が必要です。

胆道がんリスクの高い中高年の方は、症状がなくても腹部エコーなどの定期チェックを行うのが大切です。胆のうポリープは大きさや形により手術適応が検討されますので、経過観察の間隔や方針は専門医と相談しましょう。

Q.胆道がんの自覚症状には、どのようなものがありますか

出典:写真AC

胆道がんの初期は無症状のことが多い一方、進行すると「黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)」「濃い尿」「灰白色の便」「全身のかゆみ」といった症状が出ます。右上腹部の痛みや違和感、食欲低下、体重減少、だるさなどが出るケースもあります。

これらの自覚症状は、腫瘍や胆石による胆管閉塞(胆管が塞がったり狭くなったりすること)で胆汁が流れにくくなり、血中ビリルビンが上昇することで起こります。細菌感染を併発すると発熱や悪寒(急性胆管炎)を生じ、緊急対応が必要になる場合もあります。

上に書いた症状は胆道がん以外の病気でも起こりえます。しかし数日~数週間持続する場合や繰り返す場合は、早めに消化器内科を受診し、血液検査と画像検査で原因を確認することが大切です。

Q.胆道がんを早期発見することはできますか

出典:写真AC

胆道がんは自覚症状が乏しいため、早期の発見は容易ではありません。しかし胆道がんリスクの高い方では、定期的な検査が有効となります。

一次検査として腹部超音波(エコー)が行われます。これは胆のう・胆管の拡張や腫瘤(ふくらみ)、ポリープの検出に有用です。血液検査ではALP・γGTP・ビリルビンなどの胆道の異常を反映する酵素の上昇や、腫瘍マーカー(CA19-9・CEA)を測定します。これらの値の異常が発見の手がかりになります。ただし、腫瘍マーカーの値の異常は、胆道がんに特有のものではありません。

さらにCT、MRI/MRCP(※3)、EUSで詳しく調べ、必要に応じてERCPで胆汁・胆管の擦過細胞診(さっかさいぼうしん:内壁をこすり取る検査)や組織採取(粘膜の一部をつまんで取り出す検査、生検)、減黄処置(溜まった胆汁を外に出し、黄疸を改善するための処置)を行います。

PSCなど高リスク疾患がある人は、6~12か月ごとの画像追跡が推奨されます。胆のうポリープがある場合は、大きさ・形状・増大速度などから手術適応を判断します。

※3.MRCP:磁気共鳴胆管膵管撮影。MRIを使って、体の外から胆管や膵管の形や詰まりを詳しく調べる検査。造影剤や内視鏡を使わないため、体への負担が少ない

Q.胆道がんを治療することはできますか

治療は部位・進行度・全身状態によって異なります。

根治を目指せるのは外科切除が可能な場合です。具体的には、胆のう摘出、肝切除や胆管切除、膵頭十二指腸切除などを行います。

切除不能な場合や再発した場合には、全身化学療法(抗がん剤治療。使用される抗がん剤の例:ゲムシタビン+シスプラチン)に加え、症例により免疫療法や分子標的薬(がん細胞の遺伝子変化を狙う薬)が、特定の遺伝子変化(FGFR2融合、IDH1変異など)がある場合に選択肢となります。

また、黄疸や感染の予防・緩和のため、内視鏡的ステント留置(内視鏡で細い管を入れ、胆汁の流れを確保する処置)などの減黄・胆道ドレナージ(胆汁を外に出すために管を通す処置)も重要です。

手術前後の補助療法や支持療法を組み合わせて症状を緩和し、生活の質を保ちながら治療成績の向上を目指します。

胆道がんは早く見つけるほど治癒の可能性が高まるため、早期発見が非常に大切な病気です。

教えてくれたのは・・・

安江 千尋(やすえ ちひろ)院長

消化器病専門医・内視鏡専門医。がん専門病院であるがん研有明病院で豊富な臨床経験を積み、特に咽頭・食道・胃・十二指腸・大腸がんの早期発見・内視鏡治療を専門とする。大阪市にて「天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック」を開院し、すべての内視鏡検査を自ら担当。眠って受けられる苦痛の少ない検査や、患者に寄り添った丁寧な診療に定評がある。医療記事の監修や講演、地域への健康啓発活動にも積極的に取り組んでいる。

取材/文:山名美穂
編集:サンキュ!編集部

関連するキーワード

 
 

PICK UP ピックアップ

TOPICS 人気トピックス

RECOMMEND