年代で変わる“太り方”。脂肪のつきやすい場所と体型維持のコツを医師が解説

2025/10/27

最近「若い頃と体型が変わった」「昔より痩せにくい」と感じていませんか?

年齢による体型の変化や太りやすい場所、体型維持のためにできることを、用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニックの菊池真大院長に伺いました。

子育て・心理分野を得意とするチャイルドコーチングアドバイザー、LABプロファイル(R)プラクティショナー。子...

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Q.年齢によって「太りやすい・脂肪のつきやすい場所」が変わるのは本当ですか

はい、年齢によって太りやすい・脂肪のつきやすい場所は変化します。これは主にホルモンの影響による性差が関係しており、男女別に考える必要があります。

女性の場合は、エストロゲンという女性ホルモンが影響します。エストロゲンには脂肪の蓄積を抑える働きがありますが、これが減少すると腹部肥満や代謝異常のリスクが高まり、脂肪のつきやすい位置が下半身中心から腹部中心へと変化します。

男性では、加齢に伴いテストステロンという男性ホルモンが低下し、筋肉量が減少することで内臓脂肪が蓄積しやすくなります。

Q.女性の場合、年代によってどのように脂肪のつきやすい場所が変わりますか

出典:写真AC

女性の年代別の脂肪のつき方の傾向を整理すると、次のようになります。

女性では、10〜20代にエストロゲンの分泌が増加し、女性らしい体をつくるための皮下脂肪が増加します。この時期は太もも・臀部・胸部に脂肪がつきやすくなりますが、成長ホルモンの作用で代謝は高く、内臓脂肪は少ない状態です。

30代になると基礎代謝が緩やかに低下し、余分な脂肪がつきやすくなります。二の腕・腹部外側・背部にも皮下脂肪が増加し、出産などによるホルモンの変化で脂肪のつき方が変化することもあります。

40〜50代ではエストロゲンが急激に低下し、脂肪のつき方が男性型に近づきます。内臓脂肪が増加し、腹部中心に脂肪が溜まりやすくなります。インスリン抵抗性の上昇により脂肪燃焼効率も低下します。

60代以降はサルコペニア(筋肉量の減少)に伴い、基礎代謝が著しく低下します。腹部・背部・顔面(頬・顎下)に脂肪がつきやすくなり、下半身の脂肪が減少して上半身に偏りやすくなるなど、脂肪のつく位置に変化が見られます。

Q.男性の場合、年代によってどのように脂肪のつきやすい場所が変わりますか

男性の場合、脂肪のつきやすい場所は以下のように変化します。

10〜20代はテストステロンの分泌が増加し、筋肉量が増える時期です。脂肪は比較的少なく、皮下脂肪よりも筋肉が優位になります。ただし、飲酒や食生活の乱れによって腹部内臓脂肪が蓄積し始める場合もあります。

30代ではテストステロンが緩やかに低下し始め、筋肉量が減少することで腹部・胸部・背部に脂肪がつきやすくなります。内臓脂肪が優位となり、メタボリックシンドロームのリスクが上昇し始めます。

40〜50代では内臓脂肪の蓄積が加速し、肝臓や腸間膜周囲(ちょうかんまくしゅうい:小腸を支える膜のまわりで、おへその奥あたりにあるお腹の中央部)にも脂肪が溜まりやすくなります。脂肪肝・高血圧・糖尿病などの生活習慣病リスクが高まる時期であり、皮下脂肪も顔面・首・背部に増えやすくなります。

60代以降は筋肉量の著しい減少により脂肪の割合が増加し、腹部・背部(肩甲間部)・顔面(頬・顎下)に脂肪がつきやすくなります。

また、これらの部位は脂肪の蓄積を促す働きのある、コルチゾールというストレスホルモンの影響を受けやすい場所でもあります。コルチゾールには脂肪を溜めこみやすくする作用があります。加齢によってコルチゾールの分泌が高い状態が続くことで、脂肪がどの部分に溜まりやすくなるかにも影響を及ぼすと考えられています。

Q.30代以降「何をしても痩せにくい」と感じるのはなぜですか

30代以降に痩せにくくなるのは、体の代謝やホルモン、生活習慣が少しずつ変化していくためです。

まず、加齢により筋肉量が減少し、基礎代謝(体が消費するエネルギー)が低下します。筋肉は体の中でも多くのエネルギーを消費するところです。筋肉が減ることで、消費エネルギーが減り、これまでと同じ食事や運動では脂肪が燃えにくくなります。

ホルモンバランスも変化します。女性ではエストロゲン、男性ではテストステロンが徐々に減少し、脂肪がつきやすく筋肉が落ちやすい体質へと移行します。これにより、特に腹部や背中など脂肪がつきやすい部位が目立つようになります。

インスリン抵抗性が高まりやすくなることも一因です。血糖が脂肪に変換されやすくなり、内臓脂肪を蓄積しやすくなります。これは代謝効率の低下を示すサインでもあります。

生活習慣の変化も大きな要素です。年齢が上がると仕事や家庭の忙しさで運動量が減り、食事の時間や内容が不規則になりがちです。睡眠の質が低下すると、食欲を調整するホルモンのバランスが崩れ、過食や間食が増える傾向もあります。さらに、慢性的なストレスによってコルチゾールが高まり、脂肪が腹部や背部に溜まりやすくなることも知られています。

このように、加齢・ホルモン・代謝・生活習慣が複雑に絡み合うことで、若い頃と同じ方法では体重が落ちにくくなります。

Q.30代以降、体型維持のためにできる食事の工夫はありますか

30代以降、体型維持のためにできる食事の工夫を、年代別に説明します。

30代では代謝が緩やかに低下し始めるため、筋肉量の維持が重要です。毎食にたんぱく質を取り入れ、血糖値の急上昇を避けるために、食物繊維や低GI食品を選ぶ工夫をしましょう。また、忙しさによる不規則な食事や睡眠も脂肪の蓄積を助長するため、生活リズムを整えることが大切です。

40代はホルモン変化が始まり、脂肪がつきやすい時期です。女性ではエストロゲン、男性ではテストステロンが低下し、内臓脂肪が増えやすくなります。青魚・オリーブ油・発酵食品など抗炎症性の食材を積極的に取り入れ、夕食の量と時間を調整して脂肪蓄積を防ぎましょう。

50代以降は筋肉量の減少と代謝の低下が加速する世代です。サルコペニア予防のために、たんぱく質とビタミンD・カルシウムの摂取を意識することが重要です。腸内環境を整える食物繊維や発酵食品を取り入れ、免疫と代謝を支える食生活を心がけましょう。

Q.30代以降、体型維持のためにできる運動やトレーニングはありますか

出典:写真AC

体型維持のための運動やトレーニングも、年代別にポイントが異なります。

30代では基礎代謝が緩やかに低下し始めます。仕事や家庭で忙しくなる一方、運動量は減りがちです。週2〜3回の筋力トレーニング(自重・ダンベル)やウォーキング、軽いジョギングなどを取り入れ、筋肉量を維持することで代謝を保ち、脂肪がつきにくい体をつくりましょう。運動習慣を生活の一部として定着させるのが重要です。

40代では性ホルモンの低下により脂肪が腹部に集中しやすくなり、インスリン抵抗性も高まります。速歩(はやあし:普通の歩行よりも速いテンポで歩くこと)やサイクリングなどの有酸素運動に加え、週2回の筋力トレーニング(特に下半身)を組み合わせると効果的です。内臓脂肪の燃焼には、中強度の有酸素運動を20分以上継続することが推奨されます。抗重力筋(こうじゅうりょくきん:重力に逆らって姿勢を保つ筋肉。背中・お腹・太もも・ふくらはぎなど)を鍛えることで、加齢による体型の変化も抑えられます。

50代以降ではサルコペニアのリスクが高まり、体脂肪率が上昇しやすくなります。そのため、関節や骨への負担にも配慮が必要です。スクワットやヒップリフトなどの自重筋トレ、ストレッチ、片足立ちや太極拳などのバランス運動を取り入れて、筋肉を守りながら代謝を維持し、体型と健康の両立を目指します。フォームと頻度に注意し、関節に負担をかけないようにしましょう。運動後の栄養補給(特にたんぱく質)も忘れずに行うのが大切です。

年齢を重ねるにつれて、若い頃と同じ方法では、思うように結果が出ないこともあるでしょう。しかし、それは衰えではなく、体が新しいバランスを求めているサインです。食事も運動も、今の自分に合った方法を選び、無理なく続けるのが健康と体型を守る一番の近道です。

体の変化を知り、受け入れ、整える──その積み重ねが、未来の自分をつくっていきます。

教えてくれたのは・・・

用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック 菊池真大院長

慶應義塾大学医学部卒業。東海大学医学部客員准教授。米国ペンシルバニア大学消化器内科元博士研究員。日本アルコールアディクション医学会理事。日本総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本人間ドック健診専門医、日本病態栄養学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。2024年、メタボとロコモを同時予防管理する「用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック」を東京都世田谷区に開業。

取材/文:山名美穂
編集:サンキュ!編集部

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