「丁寧な歯磨き」は逆効果?!歯科医が教える「磨きすぎ」のリスクと正しいケア方法

2025/10/28

毎日の歯磨き、一生懸命磨いているつもりでも、実は歯や歯茎を傷つけているかもしれません。

今回は「歯の磨きすぎ」によるトラブルや対処法を、まつむら⻭科クリニックの松村賢院⻑に聞きました。

子育て・心理分野を得意とするチャイルドコーチングアドバイザー、LABプロファイル(R)プラクティショナー。子...

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Q.「歯の磨きすぎ」とは、どのような状態を指しますか

歯の磨きすぎは「オーバーブラッシング」と呼ばれ、ゴシゴシと力を入れすぎたり、磨く時間が長すぎたりして、歯や歯茎を傷つけてしまう状態を指します。

回数や時間について具体的な数字は定められていませんが、以下がオーバーブラッシングの目安とされています。

・1回10分以上磨く
・1日5回以上磨く
・ブラッシング圧が300g以上である

歯を失う主な原因とされている虫歯や歯周病を予防するためには、日々の歯磨きはとても大切です。しかし、間違った歯磨き方法により、逆にトラブルを招く場合もあるので注意が必要です。

Q.オーバーブラッシングで起こる口内トラブルはありますか

オーバーブラッシングが原因で、どのようなお口への影響があるのかをご紹介します。

・歯肉退縮(しにくたいしゅく):
過度な力を入れて歯磨きをすることで歯茎を傷つけると、歯茎が下がってしまいます(歯肉退縮)。

歯茎が下がると、間に食べかすが挟まったり、老けて見えたりします。また、知覚過敏や虫歯になりやすくなります。一度退縮してしまうと、歯茎は元には戻りません。そのため、正しい力加減や方法で歯を磨くことが大切です。

なお、歯肉退縮はオーバーブラッシングだけでなく、加齢や歯周病などによっても起こることがあります。

・知覚過敏:
力を入れた歯磨きにより、歯の表面のエナメル質が削られると、「冷たいものがしみる」などの知覚過敏の症状が出ます。

歯のエナメル質は、歯の一番外側にある硬い層です。熱いものや冷たいもの・酸性の食品など、「歯がしみる」と感じさせる、刺激が内部の敏感な層(象牙質)に触れないよう、保護する役割を果たしています。

このエナメル質が薄くなることで、内部の層が刺激を受けやすくなり、知覚過敏の症状が現れるのです。一度失われたエナメル質は完全には元の状態には戻らないため、歯磨きの力加減には注意が必要です。

・虫歯になりやすくなる:
歯肉退縮が起こった歯の根本や、傷ついたエナメル質の部分は、細菌から歯を守るバリア機能が弱まっているため、虫歯になりやすくなります。

また、知覚過敏の症状があると歯磨きがしづらくなり、汚れが残って虫歯につながることもあります。

Q.歯磨きに適切な力加減、磨き方のコツはありますか

出典:写真AC

歯磨きは、次のポイントを参考にして行いましょう。

・歯ブラシは鉛筆の持ち方で持つ:
歯ブラシは鉛筆を持つように優しく握ります。これにより過度な圧がかかりにくくなります。過度な圧がかかるのはいけませんが、反対に優しく磨きすぎるのも、汚れが残ってしまう場合があります。

・歯ブラシはそれぞれの歯に当てて小刻みに動かす:
歯ブラシは1本1本の歯に当てながら、小刻みに動かして磨きましょう。歯並びは人それぞれ違うので、一律の当て方・動かし方の正解はありません。ご自身の歯1本1本に、きちんと歯ブラシが当たるようにしましょう。

・適切な用具を使用する:
必要なケアや適した用具は人によって異なります。ご自身にあった歯ブラシや歯間ブラシ、フロスなどを使用することが大切です。

例えば、歯に食べかすが挟まっている、歯垢があるなど、視覚的にわかりやすい汚れがあると、その部分を磨くときに力が入りやすくなります。このような場合は、歯磨きの前にフロスを使用するのがおすすめです。フロスで歯に挟まった汚れも除去でき、その後の歯磨きの清掃率が上がります。

また、大きさや硬さが合わない歯ブラシを使用すると、汚れの除去率が下がったり、歯茎を傷つけたりする可能性があります。

ご自身のお口にあったデンタル用品や適切な使用方法が分からない場合は、歯科医院を受診して相談してみてください。

オーバーブラッシングになっている方の多くは、ご自身では「一生懸命磨いているつもり」です。しかし、間違った磨き方で歯や歯茎を傷つけたり、お口の中に汚れが残ったりしてしまっては歯磨きの効果が半減してしまいます。歯磨きを「している」のではなく「できている」状態にする為に、正しい歯磨き方法で磨くことが何よりも大切です。

Q.オーバーブラッシングが心配なときは、どうしたらいいですか

オーバーブラッシングが心配な場合は、正しい歯磨き方法を身につけるのが一番の解決方法です。一度歯科医院を受診し、ご自身のお口の状況にあった歯ブラシの当て方や、適切な歯科用品を選んでもらいましょう。

すでに知覚過敏と思われる症状が出ている場合も、できるだけ早く歯科医院を受診することをおすすめします。それが難しいときは、ご自宅で知覚過敏用の歯磨き粉を使用するといいでしょう。知覚過敏用の歯磨き粉には「硝酸カリウム」という成分が含まれています。歯の神経が刺激を感じにくくする働きがあるため、症状を緩和してくれる効果が期待できます。

実は「もしかしてオーバーブラッシングかな?」と気づく時点で、すでに歯肉退縮や知覚過敏の症状が進行しているケースがほとんどです。ただし、これらの症状は「オーバーブラッシング」だけでなく、歯軋り・食いしばり・虫歯が原因で出ていることもあります。

歯の磨きすぎで心配なことがある場合は、自己判断せず歯科医院を受診し、なにが原因なのかを歯科医師に判断してもらい、処置を受けることが大切です。

人生100年時代。なるべくご自身の歯を残し、「いつまでもおいしく食べる」ためにも、ご自身にあった正しい歯磨き方法を身につけ、お口の健康を守りましょう。

教えてくれたのは・・・

松村賢(まつむら・けん)院長

「いつまでもおいしく食べる」をモットーに、2015(平成27)年に地元である宮城県大崎市に「まつむら歯科クリニック」を開院。歯周病治療などの予防歯科を中心とし、保険診療・審美歯科・ホワイトニング・インプラント・義歯(入れ歯)・摂食嚥下リハビリテーション・訪問診療など、幅広い診療を行っている。奥羽大学⻭学部卒業(医師免許取得)。東北大学大学院⻭学研究科博士課程修了(⻭学博士)。

取材/文:山名美穂
編集:サンキュ!編集部

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