「ただの腹痛」と侮れないのが食中毒。季節を問わず起こり、ときに死につながる重い症状を引き起こすこともあります。
食中毒の原因や症状、正しい予防策について、消化器病専門医・内視鏡専門医で、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックの院長、安江千尋氏に聞きました。
Q.食中毒とはどのようなものですか
食中毒とは、細菌やウイルス、自然毒などがついた食べ物や飲み物を口にすることで、体調不良を引き起こす病気を指します。症状は、下痢・吐き気・嘔吐・腹痛・発熱などですが、原因によって症状の出方や重さは異なります。
夏のように温度や湿度が高い時期に多く発生するのが、カンピロバクターやサルモネラなどの細菌性の食中毒です。
一方、冬はノロウイルスなどによるウイルス性の食中毒が多くなります。
食中毒は正しい知識を持ち、毎日の衛生管理をしっかり行うことで防げる病気です。
Q.食中毒の原因にはどのようなものがありますか
食中毒の原因は、おもに、細菌・ウイルス・自然毒・化学物質に分けられます。
・細菌:
細菌が増殖しやすい高温多湿となる夏場は、細菌性の食中毒が多く起こります。有名な細菌として、カンピロバクターやサルモネラ、大腸菌(O157など)が挙げられます。これらの細菌は、生肉や卵、調理時の加熱が不十分な食品などが感染の原因となります。
・ウイルス:
冬場に多いのはウイルス性の食中毒です。代表的なものがノロウイルスです。ノロウイルスは少量でも人にうつる感染力の強いウイルスで、家庭内や学校など人が集まる場所で広がりやすい特徴があります。ノロウイルスに感染した人が、ウイルスのついた手で調理することで、食材やまな板などの調理器具を介して感染が広がるケースがあります。
・自然毒:
自然毒にはフグの毒や毒キノコ、貝毒などがあります。これらは、少し食べただけでも命にかかわる重い症状を引き起こします。
・化学物質:
農薬や洗剤などの化学物質が食品に混入することによって起こる食中毒です。
食中毒は原因によって対処法が異なるため、正確な診断が重要となります。
Q.食中毒にかかるとどのような症状が出ますか
食中毒になると、多くの場合はお腹の調子が悪くなります。おもな症状は、下痢や嘔吐、腹痛、発熱などです。
カンピロバクターやサルモネラといった細菌が原因の場合は、強い腹痛や下痢、発熱が数日間続くことがあります。
ノロウイルスに感染した場合は、突然の吐き気や嘔吐、軽い発熱などが出るケースが多いです。短期間で体調が回復することもありますが、症状が治まった後もしばらくはウイルスが継続して排出されます。その間は人にうつしやすい状況が続くので注意が必要です。
とくに子どもや高齢者は脱水になりやすいため、水分がとれないほどの症状があるときは、早めに病院を受診しましょう。
また、フグ毒やボツリヌス菌など一部の食中毒では、手足がしびれたり力が入らなくなったりするような神経の症状が出ることがあります。命にかかわるケースもありますので、適切に医療機関にかかりましょう。
Q.食中毒を予防するために、どのようなことができますか
食中毒を防ぐためには、「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つが大切になります。
・つけない:
食べ物に菌やウイルスをつけないようにすることです。調理や食事の前には石けんでしっかり手を洗い、生肉や魚を扱った後はまな板や包丁をきちんと洗浄しましょう。
・増やさない:
食べ物についた菌を増やさない工夫です。食中毒の原因となる菌が増殖しないように、買った食材はすぐに冷蔵庫に入れ、調理したら早めに食べるのが大切です。
・やっつける:
細菌やウイルスを加熱によって菌を殺すことです。75℃以上で1分以上の加熱を目安に、お肉や魚は中心までしっかり火をとおすようにします。
また、消費期限を守る、自分の体調が悪いときは調理を控えるなども、食中毒の防止につながります。こうした日ごろのちょっとした配慮で、家族みんなの健康を守ることができます。
取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部