「すい臓がん」の発生リスクが"非常に高い"人の共通点とは?注意すべき身体の症状も解説
2024/07/02
「すい臓」と聞いて、どのような臓器なのかすぐに思い浮かびますか。すい臓の機能や、自覚症状の少ないすい臓がんについて、四谷内科・内視鏡クリニック院長である高木謙太郎氏に聞きました。
- Q.すい臓がんとはどのようながんですか
- Q.すい臓がんになりやすい人には、どのような特徴がありますか
- Q.すい臓がんの自覚症状には、どのようなものがありますか
- Q.すい臓がんを早期発見することはできますか
Q.すい臓がんとはどのようながんですか
すい臓は胃の後ろ側、脊椎(せきずい)の前に位置する、成人で長さ約15~20cm、重さ約60~100gの臓器です。食べ物の消化に関与する消化酵素を分泌したり、血糖値を調節するホルモンを分泌したりしています。
すい臓がんは、すい臓細胞から発生するがんです。「腺がん」という組織型がほとんどで、多くは膵管(すいかん)に起こります。初期の段階からすい臓の周りのリンパ節や肝臓に転移しやすく、腹膜播種(ふくまくはしゅ:腹腔内(ふくくうない)にがん細胞が広がること)が生じる場合があります。
すい臓がんは初期段階では症状に乏しく、進行すると腹痛・背中の痛みなどが認められるようになります。
Q.すい臓がんになりやすい人には、どのような特徴がありますか
年齢別では、すい臓がんの発症者は40歳頃から見られ、その後年齢が上がれば上がるほど増えます。男女で比べた場合には、若干男性に多く発症しています。
糖尿病の方は、すい臓がんになる危険性が大きいです。糖尿病の急激な悪化は、すい臓がんの可能性が疑われるため検査をおこなった方がよいです。
また、喫煙者は非喫煙者と比較してすい臓がんになりやすい傾向があります。すい臓がんには肥満も関係しており、特に20歳代でBMIが30以上の肥満の男性は、発生リスクが非常に高いとされています。
その他、アルコールを多量に摂取し急性膵炎を繰り返した人や、自己免疫性膵炎が原因で慢性膵炎を起こした人、血縁者にすい臓がんの人がいる方はすい臓がんになりやすいと言えます。
Q.すい臓がんの自覚症状には、どのようなものがありますか
すい臓がんは、初期段階では自覚症状がないことが多いです。進行すると腹痛・食欲不振・腹部の膨満感・体重減少・下痢・黄疸(おうだん:皮膚や目が黄色くなること)・糖尿病の発症や急激な増悪・腰や背中の痛みなどの症状がでます。
Q.すい臓がんを早期発見することはできますか
すい臓がんを早期に発見するためには、以下の画像検査と腫瘍マーカーのチェックが有用です。
・腹部超音波検査(腹部エコー):
すい臓がんのスクリーニング検査として最初に受けるべき検査です。膵管の異常や膵嚢胞(すいのうほう)があるかを把握するのに役立ちます。
・腹部CT検査:
X線を用いてすい臓がん及び、他臓器への浸潤(しんじゅん)や転移の有無まで診断できます。造影剤を使用して撮影すると、より正確な診断が可能です。
・腹部MRI検査:
磁力を用いた検査装置で、病変や周辺臓器の状態を画像化します。
・超音波内視鏡検査(EUS):
胃カメラの先端に超音波装置が備わっており、胃からすい臓を観察することにより、正確にすい臓がんを観察するのに役立ちます。腹部エコー・CT・MRIですい臓がん疑われた場合の精密検査に用います。
・腫瘍マーカー検査:
すい臓の腫瘍マーカーとして、CA19-9・Span-1・DUPAN-2・CEAがありますが、初期のすい臓がんでは上昇しないことが多く、早期診断には不向きです。
すい臓がんは初期症状が現れにくいため、リスクがある方は定期的な検査を受けることをおすすめします。
Q.すい臓がんを治療することはできますか
すい臓がんの治療には以下のものがあります。
・手術(外科治療):
すい臓がんの治療で唯一根治可能な方法です。早期のステージのすい臓がんには手術が選択されますが、がんがすい臓周辺の大きな血管を巻き込んでいる場合や、転移している場合は手術が難しいことがあります。
・化学療法(抗がん剤治療):
手術ができない場合(局所進行すい臓がん)や再発した場合に適応されます。
・化学放射線療法:
化学療法と放射線療法を併用する治療方法で、主に転移性すい臓がんで適応されます。
すい臓がんの治療は、がんのステージ(病期)や患者さんの体の状態を考慮して選択されます。
取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部