日本の部位別がん死亡者数、男性2位・女性1位のがんとは!?早期発見のためにやっておきたい検査を医師が解説

2025/04/21

「痛そう、怖そう」というイメージがある大腸カメラ。実は、痛みなどの負担を軽減するコツがあるとご存じでしたか。

大腸カメラの必要性と受け方のコツなどについて、胃・大腸内視鏡検査の専門家で、ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニックの院長である、粟田裕治氏に話を聞きました。

Q.大腸カメラとはどのような検査ですか

大腸カメラとは、肛門から内視鏡(先端にカメラのついた管)を挿入して、大腸内部を観察する検査です。

大腸カメラは、大腸の中を空っぽの状態にして行います。そのため、検査の3~5時間前から腸管洗浄剤といわれる液体の下剤を1.5~2L飲んで、大腸内の便を全て出しておく必要があります。

内視鏡に器具を通すことで、検査中に大腸の組織の一部を採取する(生検)こともできます。採取した組織は、顕微鏡で詳しく調べる検査(病理検査)に出します。別の器具をつければ、大腸にあるポリープの切除も行えます。

検査時間は10~15分程度のことが多いです。複数のポリープ切除があったり、内視鏡の挿入に時間がかかったりすると、20~30分程度要するケースもあります。

Q.大腸カメラで見つけられる病気には、どのようなものがありますか

大腸カメラで見つけられる病気には、大腸がん・大腸ポリープ・潰瘍性大腸炎・クローン病などがあります。

日本の部位別のがん死亡者数(2023年)では、大腸がんは男性で2位、女性で1位です。大腸がんになる人の数も男女ともに年々増えており、高齢化と食生活の欧米化が大腸がんの増加につながっているといわれています。

大腸がんは良性の大腸ポリープが徐々に大きくなって癌化するパターンと、正常な粘膜に突如がんの細胞が出現してくるパターンとがあります。大腸がんの多くは前者であるため、ポリープの段階で発見・治療して、大腸がんを予防するのが理想的です。

潰瘍性大腸炎やクローン病は、炎症性腸疾患といって、大腸粘膜に炎症を起こし、腹痛・下痢・血便などを起こす病気です。数ヶ月毎に繰り返す症状を自覚することで病院を受診し、大腸カメラの検査を受けて診断となるケースが多いです。

Q.大腸カメラを受けたほうがいいのはどんな人ですか

出典:写真AC

健康診断などの検便(便潜血検査)の結果が陽性だった方は、大腸がんや大腸ポリープなどの病気の可能性を疑い、必ず大腸カメラの検査を受けましょう。

血便・便が細い・便秘や下痢が続く・腹部の張り・腹痛などの症状がある方も、原因を調べるために大腸カメラの検査を受ける必要があります。

また、血縁者に大腸がんや多発の大腸ポリープを患った方がいる場合は、自覚症状がなくても、一度大腸カメラの検査を行っておくといいでしょう。

Q.便潜血検査(検便)で異常がなくても、大腸カメラを受けたほうがいいですか

出典:写真AC

便潜血検査(検便)が陰性でも、大腸がん・大腸ポリープがある可能性はあります。陰性の結果が出た方も、大腸カメラを受けたほうがいいでしょう。

健康診断などで行われる便潜血検査では、便に血液が混ざっていないかを調べます。しかし、大腸がんは常に出血しているわけではないため、大腸がんがあっても陰性の結果が出ることがあります。

便潜血検査には1日法と2日法があります。健康診断などでは、検査の精度が高まる2日法が用いられていることが多いです。

実際に大腸がんにかかっている人が、1回の便潜血検査で陽性になる確率は30~40%と低いです。2日法の場合、陽性となる確率は70%程度まで高まるといわれています。

それでも、2日法で陰性だったからといって、大腸がんが完全に否定されるわけではありません。便潜血検査だけでは、がんを見逃す可能性があるのです。

また、大腸がんのもとになるようなポリープは、小さい段階だと便潜血検査で陽性が出ることはほとんどありません。

上記の理由から、便潜血検査の結果が陰性でも、大腸ポリープができ始めるといわれる40歳を過ぎたタイミングで、一度は大腸カメラの検査を受けると良いといえます。

Q.大腸カメラは苦しかったり、痛かったりしませんか

大腸カメラ(内視鏡)という異物が、肛門から70~90cm程度入っていくのですから、不快感は伴います。また、カメラがお腹の中で円を描くように進み、腸を伸ばすような動きになるとき、痛みを感じるケースもあります。

大腸カメラの苦痛を軽減するためには、第一にカメラの挿入が上手い医師に検査してもらうことです。また、鎮静剤という眠くなる(ウトウトする)薬を点滴で投与した状態で検査を受けると、かなり苦痛は軽減されます。

大腸カメラでは、大腸を気体で膨らませて観察・検査を行います。大腸に入れた気体によって、検査中・検査後にお腹の張りや痛みを感じることがあります。

大腸に入れる気体は、空気の場合と炭酸ガスの場合があります。炭酸ガスは空気に比べて、腸管内に速やかに吸収されるのが特徴です。大腸内に入れる気体として、炭酸ガスを採用している医療機関で大腸カメラを受けると、検査後のお腹の張りや痛みなどを大幅に軽減できます。

教えてくれたのは・・・

粟田 裕治
医師(内科・内視鏡専門医・消化器病専門医)

コンパスメディカルグループ 医療法人社団CMG ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニック院長。日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医、日本内科学会 認定内科医、日本消化器病学会 消化器病専門医。2015年、日本医科大学卒業。救急医療・急性期医療に特化した川崎幸病院勤務で研鑽を積み、2022年、ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニックの院長に就任。「無症状でも油断禁物。内視鏡検査や健康診断で早期発見」を目指し、胃・大腸内視鏡検査において豊富な実績を持つエキスパート。

取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部

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