乳がんは日本人女性がかかるがんの第1位。今や誰にとっても身近な病気です。2025年8月に乳がんを公表した梅宮アンナさんは、その後も闘病生活について様々なメディアで発信。治療にかかるお金のことも率直に語る彼女に乳がんのリスクに備えるためのヒントを伺いました。
乳がんなんて治る病気」と言われるのは、正直つらかった
――アンナさんが乳がんと分かった経緯を教えてください。
「去年の5月20日、右胸が急に小さくなったことに気づいて。カップでいうとCからAくらい。前年の夏に受けた人間ドックでは異常がなかったのだけれど、娘の強い勧めでかかりつけの病院を予約しました。10日後に受診して、がんを告知されたのが6月中旬です。
かかったのは『浸潤性小葉がん』という希少がんで、リンパ節への転移もあり、ステージⅢAでした。マンモグラフィでは見つけられず、病変の一部を採って詳しく調べた結果、分かったんです。セカンドオピニオンを求めて国立がん研究センターの病院を受診し、そこで7月末から治療を始めました。
――人間ドックでもがんを発見できないことってあるんですね……。
「だから皆さんも『あれ?』と思ったら小さなことでも後回しにせず、すぐ病院に行って欲しいです」
――心に留めておきます。がんを告知されたときのお気持ちは?
「実はさほど驚かなかったです。がん家系で父や祖父、叔母がかかったのを見てきたので、私もいつかなるだろうと小学生の頃から思っていました。告知から10日ほどたってやっと実感がわき、その後は希望と絶望が入り混じる日々でした」
――8月にがんを公表されてからは?
「励ましの声をたくさんいただく中で、『医学は進歩しているから大丈夫!』『乳がんは治る病気』という言葉は正直つらかったです。治るとしても胸と髪を失い、治療でどれほどの地獄を味わうか……それは軽いことではないのにと。
――励ますつもりが人を傷つけてしまうのは悲しい。がんやその向き合い方について知ることが必要ですね。
「そうですね。私が本音を話すことがその一助になればと思います。治療を始めた頃、主治医が『仕事がなくなるから公表はしないほうがいい』と心配してくれたことがあって。『それでも構わないです。これからはがんに関わる仕事がしたいから』と答えました。治療について発信することで、心の準備ができる人がいると思うから、これまでの仕事にとらわれず新しいことを始めようと決めたんです」

日本の医療システムに感謝。それでも1錠8600円の治療薬は痛い
――治療費はいくらかかりましたか?
「まず手術・抗がん剤・放射線の3大治療で約100万円。入院費やウィッグ代などほかにもいろいろと。今年4月に治療を終えるまでに、総額で数百万円かかりました。
だけど国民皆保険制度で自己負担額を抑えて治療できる日本は素晴らしい。私が受けた治療は、例えばアメリカなら1億円を超えるんじゃないかな。今年の夏、高額療養費の自己負担上限額の引き上げ案に怒りの声が飛び交ったけど、私はまず日本の医療システムに感謝したいです」
――確かに……。今のお話で日本の医療制度の有り難さを再確認しました。治療を終えた後も通院していますか?
「経過観察のために通院して再発防止の薬を飲んでいます。その中に一錠約8600円の薬があって、1日2錠を2年間飲むことになっていて。国保の3割負担で月約15万円、高額療養費制度を使っても一般的な収入の人で約8万円に!」
――治療後も結構なお金がかかり続けるとは、思い至りませんでした。
「がんの薬は高いです。保険適用でも安くはないから、治療を続けたいのに難しいケースも出てきますよね」
【乳がんQ&A】
Q 高額療養費制度とは
なんですか?
A ひと月に払う医療費が高額に
なったときに使える制度です
高額療養費制度は、医療費が高額になった場合に所得に応じた上限額を超えた分が払い戻される仕組み。健康保険に加入していれば誰でも利用でき、入院や手術などで費用がかさんでも月8万円程度(一般的な収入の場合)の負担ですみます。高額な医療費が続いた場合には「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽くなります
Q&Aマネー監修/深田晶恵(ファイナンシャル・プランナー)
Q 乳がんは
人によって違うのですか?
A 広がりやがん細胞の性質などにより
分類されます。治療法も異なります
乳がんは乳管や小葉など乳腺組織にできる悪性腫瘍。がん組織の構造は多くは乳管がんに分類されますが、希少な特殊型もあります。がん細胞の性質はサブタイプと言って「ルミナルA」「HER2」などの主に5つに分類されます。治療の基本は乳房に対する局所治療としての手術と場合によって放射線治療、全身治療としての薬物療法の組み合わせになります。
Q マンモグラフィは
受けないとダメですか?
A マンモグラフィでないと
発見できない場合があります
手で触っても分からない早期の乳がんを発見できる有効な方法です。ただ、特に乳腺が発達した女性は、マンモグラフィのみでは腫瘍の影が紛れて発見できないことも。重要なのは超音波検査などとそれぞれの画像検査の特徴を生かし、組み合わせで行うこと。定期的に継続すること、検診の合間のわずかな変化に気づけるよう普段からご自身の乳房を知っておくこと、変化に気づいたらすぐに受診することです。
Q&A医療監修/島田菜穂子(ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長)
撮影/菊地史
記事は「サンキュ!」2025年11月号(9月25日発売)に掲載されたものから抜粋しています。内容は25年8月現在のものです