腰痛や骨盤の痛みが、じつは膀胱がんのサインかもしれないとご存じでしたか。
膀胱がんの意外な症状や詳しい治療法について、外科専門医の資格を持ち、浅草橋西口クリニックMo院長である頴川博芸氏に聞きました。
- Q.膀胱がんとはどのようなガンですか
- Q.膀胱がんの原因や、なりやすい人の特徴にはどのようなものがありますか
- Q.膀胱がんの自覚症状にはどのようなものがありますか
- Q.膀胱がんを予防・早期発見することはできますか
Q.膀胱がんとはどのようなガンですか
膀胱がんは、尿を貯めておく臓器である膀胱の内側の粘膜に発生する悪性腫瘍です。
初期には粘膜の表面にできることが多いですが、進行すると膀胱の壁の筋肉層へと深く浸潤(しんじゅん:まわりの組織へ広がっていくこと)していきます。さらに進行すると、膀胱の外の組織やリンパ節、ほかの臓器へと転移する可能性もあります。
組織型(がんの種類)としては、もっとも多いのが尿路上皮がん(移行上皮がん)です。尿路上皮がんは、膀胱の内側の尿路上皮細胞から発生します。そのほか、扁平上皮がんや腺がんなど、比較的まれな種類の膀胱がんも存在します。
膀胱がんは早期に発見されれば、治療によって良好な予後が期待できます。しかし、進行すると治療が難しくなるため、早期発見と適切な治療が重要となります。
Q.膀胱がんの原因や、なりやすい人の特徴にはどのようなものがありますか
膀胱がんの明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかのリスク因子が知られています。
もっとも重要なリスク因子が喫煙です。タバコに含まれる有害物質が尿の中に排出される際、膀胱粘膜に長期的な刺激を与え、それががん化を促進すると考えられています。
また、特定の化学物質(染料、ゴム、皮革産業などで使用される芳香族アミンなど)への職業的な曝露(ばくろ:さらされること)もリスクを高めるとわかっています。
そのほか、慢性的な膀胱炎や膀胱結石の既往、特定の遺伝的要因、放射線治療の既往などもリスク因子となります。
性別でいうと、膀胱がんは女性に比べて男性の発生率が高いです。そのほか、膀胱がんになりやすい人として、高齢者、喫煙者が挙げられます。
Q.膀胱がんの自覚症状にはどのようなものがありますか
膀胱がんの初期には、自覚症状がほとんどないケースが多いです。しかし、進行するにつれてさまざまな症状が現れるようになります。
もっとも一般的な症状は、無痛性の血尿です。肉眼で見てわかる赤い尿が出る場合もあれば、顕微鏡でしか確認できない程度の血尿の場合もあります。
血尿は、出たり止まったりを繰り返すことがあります。症状が止まると放置してしまう人もいますが、膀胱がんの可能性も否定できないので注意が必要です。
そのほかの症状としては、頻尿、排尿時の痛み、残尿感、尿意切迫感など、膀胱炎と似たような症状が出ます。進行すると、骨盤の痛みや腰痛、体重減少、食欲不振などの全身症状も起こり得ます。
これらの症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
Q.膀胱がんを予防・早期発見することはできますか
膀胱がんの完全な予防はむずかしいですが、いくつかの対策によってリスクを減らせます。
もっとも重要な予防策は禁煙です。喫煙は膀胱がんの最大の危険因子であるため、禁煙でリスクを大幅に下げられます。
また、特定の化学物質を扱う職業では、適切な保護具を使って暴露を避けることが重要です。
十分な水分摂取は尿の中の有害物質を希釈し、膀胱の粘膜への刺激を減らすと考えられています。そのため、しっかりと水分をとるようにするのも予防策のひとつと言えます。
膀胱がんの早期発見のためには、定期的な健康診断や人間ドックにおける尿検査が有効です。とくにリスクの高いかたは、定期的な検査が望ましいでしょう。
また、血尿などの自覚症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかに泌尿器科を受診してください。
Q.膀胱がんを治療することはできますか
膀胱がんは、早期に発見されれば比較的治療の効果が得られやすく、予後も良好ながんです。
おもな治療法としては、手術療法、放射線療法、化学療法、免疫療法があります。治療法は、患者さんの病期(がんの進行度)、組織型(種類)、全身状態などによって選択されます。
早期の表在性膀胱がん(がんが膀胱の表面に留まっている状態)に対しては、尿道から内視鏡を入れて腫瘍を切除する、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)が行われるのが一般的です。
浸潤がんに対しては、膀胱をすべて取り除く膀胱全摘術や、一部を切除する膀胱部分切除術などの手術が行われます。
放射線療法は、手術が困難な場合や、手術後の再発予防として用いられます。また、化学療法は進行がんや転移がんに対し、全身に効果をもたらす治療法として選択されます。
近年では、特定の進行がんに対して免疫チェックポイント阻害薬などの免疫療法も選択されるようになりました。
治療期間は、がんの進行度や治療法によって大きく異なります。根治を目指す場合は数カ月から年単位の治療が必要となるケースもあります。
取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部