「若い人の病気」「治らない」は間違い!?正しい【白血病】の話を専門家が解説

2025/04/15

「血液のがん」とも呼ばれる白血病。若い人に多いと思われがちですが、実はそうではありません。

白血病の詳しいお話を、血液やがん薬物療法などの専門医・指導医で、ひだまり内科クリニックの院長である伊藤公人氏に聞きました。

Q.白血病とはどのような病気ですか

血液中には、白血球、赤血球、血小板の3つの血球細胞が存在します。そのうち、白血球系の細胞ががん化して白血病細胞(病的な白血球系細胞)となり、増殖することで起こるのが白血病です。白血病は「血液のがん」とも呼ばれます。

白血病では、血液中の白血球数が増加するケースが多いです。しかし中には、白血病細胞が骨髄では増えていても血液には移行せず、血液中の白血球の数はとても少ない場合もあります。

白血病は、白血病細胞が急激に増える急性白血病と、比較的にゆっくりと増える慢性白血病に大きく分けられます。さらに増えている細胞の種類により、骨髄性白血病とリンパ性白血病に分けられます。それぞれの白血病で病状や治療、今後の見通しは異なります。

Q.白血病の原因や、なりやすい人の特徴にはどのようなものがありますか

白血病の原因については、まだ充分にはわかっていません。

発症されたかたの大部分において原因は不明ですが、以下の場合、白血病になるリスクが高くなるとわかっています。

・放射線の大量の被ばく
・化学療法や放射線療法を受けた
・ダウン症候群などの特定の遺伝性疾患がある
・特定のウィルス感染症(HTLV-1など)に罹患している

また喫煙者は、急性骨髄性白血病となるリスクが、非喫煙者に比べて1.6倍から2倍高まります。

慢性リンパ性白血病は、人種で発症のリスクが異なります。欧米人に多く、アジア人では稀な疾患で、人種による罹りやすさの違いがあると言えるでしょう。

「若者の疾患」と思われがちな白血病ですが、実際には高齢になるほど発症リスクは高くなります。

Q.白血病の自覚症状にはどのようなものがありますか

白血病では、血中の正常な血液細胞が減少することにより、さまざまな症状が出現します。

急性白血病の初期には、発熱、全身倦怠感、頭痛、関節痛など、風邪に似た症状が見られます。その後、貧血症状(動悸、息切れ、全身倦怠感など)、感染症状(高熱など)、出血症状(鼻出血、歯肉出血、紫斑など)が現れます。

白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤(しんじゅん:広がること)すると、肝臓・脾臓やリンパ節の腫脹、頭痛、吐き気などの症状が起こります。

一方、慢性白血病は、疾患の進行が緩徐で初期症状に乏しいです。そのため、健康診断などで白血球数の増加を指摘されて、見つかることが少なくありません。

Q.白血病を予防することはできますか

出典:写真AC

白血病の予防はむずかしいです。ただし、禁煙・栄養バランスの取れた食事・適度な運動により、発症リスクをできる限り減らすことが、一定の予防につながるでしょう。

特殊なケースですが、成人T細胞性白血病では、HTLV-1というウィルスへの感染が発症の原因となります。そのため人から人へのHTLV-1の感染を防止することで、予防的に白血病の発症リスクを低減化できます。

Q.白血病を早期発見することはできますか

発見に関して、症状の進展が早い急性白血病を早期に見つけることは困難です。一方、進行が緩やかな慢性白血病は、比較的早期の段階で発見できる可能性があります。

慢性骨髄性白血病では、数年の慢性期を経た後、移行期、急性転化期へと移行します。慢性期は自覚症状に乏しいですが、この時期に適切な治療を開始できれば、寿命にほぼ影響がない状態に病状をコントロールすることができます。しかし移行期や急性転化期となると、病状コントロールはむずかしくなります。

いずれにせよ、定期的に健康診断を受診し、血液検査を行って、早期発見・診断することが極めて重要となります。

Q.白血病は治療できますか

白血病は治療できます。現在では医学の進歩により、治癒が期待できるがんのひとつとなりました。

白血病に対する治療法は、白血病の種類や患者さんの体の状態、年齢などによって異なります。

急性白血病は発症が急激なので、可能な限り迅速に治療を開始する必要があります。治療の主体は抗がん剤による薬物療法です。他のがんと比較すると、急性白血病は薬物療法の効果が高いです。基本的には複数の薬物を組み合わせて、体内にある白血病細胞を減少させる治療を行います。

急性白血病は、寛解導入療法、地固め療法、維持療法の3段階で治療を進めます。病状によってはさらに治癒の確率を高めるため、造血幹細胞移植を行うケースがあります。

慢性骨髄性白血病に対しては、特定の遺伝子異常を標的とした、チロシンキナーゼ阻害薬という分子標的治療薬を用いることで、良好な病状コントロールが期待できます。

かつては難治性であった白血病も、治療の進歩により寛解や治癒が期待できるケースが増えてきています。一方で、治療にはさまざまな副作用を伴うことが多く、治療効果の限界についても知っておく必要があります。

教えてくれたのは・・・

伊藤 公人 院長

名古屋市立大学医学部卒、医学博士。2024年4月三重県四日市市に「ひだまり内科クリニック」(住所:三重県四日市市上海老町1633-140)を開院。日本内科学会総合内科専門医 日本血液学会血液専門医・指導医 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医。一般社団法人Sakura Network Japan理事。総合病院や大学病院の循環器内科や血液内科で研鑽を積み、その経験を生かし開業。患者様の表面に見える痛みやつらさだけでなくその奥にある隠れた問題にまで向き合っていきたいという信念のもとで日々の診療を行っている。

■ひだまり内科クリニック(https://www.hidamari-naika.com/)

取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部

関連するキーワード

 
 

PICK UP ピックアップ

TOPICS 人気トピックス

RECOMMEND