「たかが貧血」…と甘く見ないで!放置すると“輸血レベル”に進行することも

2025/07/05

「なんとなくだるい、めまいがする」…その不調、「貧血」のサインかもしれません。

重度になると輸血が必要になることもある貧血。その原因や予防法などについて、医療法人社団筑三会・筑波胃腸病院の鈴木隆二理事長に聞きました。

Q.貧血とはどのような状態のことですか

貧血とは、 血液中の 「酸素を運ぶ役目」 をしている赤血球の中のヘモグロビンが少なくなり、体のすみずみに酸素が届きにくくなっている状態のことです。

医療の世界では、 ヘモグロビンの量が女性で12.0g/dL未満、 男性で13.0g/dL未満になると貧血と診断されます。

貧血で酸素不足に陥ると、体が思うように動かなくなり、 「疲れやすい」 「めまいがする」 「息切れする」 といった不調が現れます。

なお、 「急に立ち上がるとクラッとする」 「目の前が暗くなる」 といった症状を 「脳貧血」 と呼ぶことがあります。これは医学的には 「起立性低血圧」 や一時的な脳血流の低下 (迷走神経反射に伴うもの)を指し、 血液の貧しさである「貧血」 とは全く別物です。

貧血と脳貧血は混同されがちですが、 原因も治療も異なりますので注意が必要です。

Q.貧血になりやすい人の特徴を教えてください

鉄分が 「摂れない(足りない)」 「吸収できない」 「失ってしまう」 のいずれかの状態にあると、 貧血リスクが高まります。

貧血は誰にでも起こり得ますが、 特に以下のような方は注意が必要です。

・月経のある女性:毎月の出血により、知らないうちに鉄分が不足しやすい
・妊娠中・授乳中の女性:胎児・乳児への栄養補給のため、必要な鉄が増える
・成長期の子ども・思春期の女子:体が発育に多くの鉄を必要とする
・偏食や過度なダイエットをしている方 :鉄分をはじめとする栄養素が不足しやすい
・胃や腸の病気・手術歴がある人、消化管からの出血(痔、 胃潰瘍など)がある人:鉄の吸収が悪くなったり、出血で鉄が失われやすくなったりする

Q.貧血の症状と、 起こり得る重大な健康トラブルについて教えてください

出典:写真AC

貧血の症状は、 非常に多様です。 代表的なものとしては、 疲れやすさ、 だるさ、 立ちくら み、 息切れ、 顔色の悪さなどが挙げられます。

軽度のうちは 「ちょっと体調が悪い」 程度のこともありますが、 放っておくと次第に症状は悪化していきます。 重度になると、 動悸、 集中力の低下、 失神、 胸の痛みなども現れ、 心不全のリスクまで出てきます。

特にヘモグロビン値が7.0g/dL以下と著しく下がった場合は、 輸血が必要となる場合があります。 ヘモグロビン値の大幅低下は、 体が酸素不足で命の危険にさらされている重大なサインとも言えるでしょう。

また、 婦人科疾患や痔・胃潰瘍などによる慢性的な出血によって、少しずつ貧血が進行しているケースも多いです。この場合、 症状があっても気づきにくいという落とし穴もあります。

Q.貧血を予防するためにどのようなことができますか

貧血予防のカギは、 鉄分のしっかりとした摂取です。 日々の食事で、 鉄分を多く含む食品を意識して取り入れましょう。

鉄を多く含む食品には、動物性食品であればレバー、 赤身肉、 あさりなど、植物性食品であれば小松菜、 大豆製品などが挙げられます。

特に 「ヘム鉄(動物性の鉄)」 は体に吸収されやすいため、 赤身の肉や貝類はおすすめです。 また、ビタミンCは鉄の吸収を助けます。ビタミンCを多く含むピーマンや柑橘類を一緒に摂ると効果的です。

反対に、 緑茶やコーヒーに含まれるタンニンは鉄の吸収を妨げます。鉄分を摂るタイミングで飲むのは控えめにしておきましょう。

Q.貧血の治療法にはどのようなものがありますか

出典:写真AC

貧血の治療は、 まず原因の特定から始まります。

貧血の中で最も多いのは鉄の不足が原因の「鉄欠乏性貧血」 で、 鉄剤の内服が基本的な治療法となります。通常、3~6カ月間かけてヘモグロビン値を改善させていきます。

鉄剤で吐き気が出るなどの副作用がある場合は、 「注射による鉄の補充(静注)」 も選択肢と なります。

ただし、鉄以外(葉酸やビタミンB12など)が不足して起こる貧血もあり、その場合は治療法が異なります。そのため、自己判断での鉄剤服用は避けましょう。

さらに、 重度の貧血や出血性疾患によって急激に貧血が進んだ場合は、 輸血による治療が必要になることもあります。

なお、根本的な原因の治療も重要です。例えば、 子宮筋腫による出血が続いている場合には婦人科での対応、 胃潰瘍が原因なら消化器の治療が必要となります。

教えてくれたのは・・・

鈴木隆二 理事長

医療法人社団筑三会理事長 消化器外科専門医(筑波胃腸病院、千葉柏駅前胃と大腸肛門の内視鏡日帰り手術クリニック・健診プラザ)。聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター助教を経て、筑波胃腸病院、千葉柏駅前胃と大腸肛門の内視鏡日帰り手術クリニック・健診プラザの理事長に就任。日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、茨城ヘルニア研究会世話人、麻酔科標榜医、産業医、難病指定医。

取材/文:山名美穂
編集:サンキュ!編集部

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