見た目年齢というとスキンケアやメイクに目が行きがちですが、実は「体の内側の老化」も深く関係しているとご存じでしたか。
今回は医療法人社団 沢岻美奈子女性医療クリニック理事長の沢岻美奈子氏に、体の内側から若さを保つヒントを伺いました。

- Q.見た目年齢に影響する「体内の老化」にはどのようなものがありますか
- Q.「老け見え」しやすい人の生活習慣には、どのようなものがありますか
- Q.「老けない体」を保つために、日常生活でどのようなことに気をつければいいですか
- Q.「体の内側の老化のサイン」を健康診断や検診で見つけることはできますか
Q.見た目年齢に影響する「体内の老化」にはどのようなものがありますか
見た目年齢に影響する体内の老化には、女性ホルモンが関わっています。
女性ホルモンは、肌のハリ・ツヤ、見た目に影響する筋肉や代謝など機能を支えています。女性ホルモンは20代をピークに徐々に低下し、更年期を迎える50歳前後で揺らぎながら大きく減少します。閉経後も全くなくなるわけではありませんが、女性ホルモンの減少により肌のハリ・ツヤといった若々しさは失われていきます。
女性ホルモンは体温を保つための基礎代謝や、筋肉の保持にも関係しています。年齢を重ねると「筋トレをしても、若い頃のように筋肉がつかない」「動かなくなるとすぐ筋肉が落ちてしまう」「風邪で数日寝込むと快復に時間がかかる」といったことが起こります。これらの症状も、女性ホルモンの低下が原因です。
また、女性ホルモンには、肌の弾力に関係する水分保持の作用もあります。そのため、女性ホルモンであるエストロゲンが減少する更年期以降の女性は、全身の皮膚が乾燥しやすくなります。乾燥した肌はシワなどの原因となり、「老け見え」につながります。
さらに、女性ホルモンの減少によって筋力が低下すると、姿勢が崩れて巻き肩や前傾姿勢が起こり、見た目年齢に影響します。「老け見え」は顔の印象だけでなく、歩く姿や後ろ姿からも感じられると知っておきましょう。
女性ホルモンの減少に加えて、加齢とともに顔の骨が痩せることも見た目に影響を与えます。顔の骨が痩せると、皮膚が余ってたるみやすくなり、老けて見えます。「老け見え」は顔の土台である骨の痩せが原因のこともあるのです。
Q.「老け見え」しやすい人の生活習慣には、どのようなものがありますか
鉄分が不足していたり、お酒を飲んだりする人は「老け見え」のリスクが上がります。
女性が気になるのがシミ・しわ・たるみといった肌のトラブルですよね。それらの肌トラブルの対策として、ビタミンCを摂られている方はとても多いのですが、実は皮膚のためには鉄という栄養素も欠かせません。
若い方のニキビ、年齢を重ねた女性のシミ、一見すると全く異なる肌の悩みですが、実はどちらも鉄の不足による貧血(鉄欠乏性貧血)が原因だったというケースは非常に多いです。
鉄欠乏性貧血は、「老け見え」の理由となる白髪や薄毛とも関係しています。鉄分が不足すると、毛根に十分な酸素や栄養が行き渡らず、髪が細く弱くなったり、抜け毛や白髪が増えやすくなり、健康な髪の毛が育ちません。
飲酒も「老け見え」と関係します。アルコールの分解にはビタミンB群を必要とします。過度な飲酒は、アルコール分解のために多くのビタミンB群を消費し、低ビタミン状態を引き起こし得ます。
せっかく食事に気を使っていても、飲酒量が多いと低栄養状態となり、結果として肌のハリがなくなって、見た目に影響することがあるのです。
Q.「老けない体」を保つために、日常生活でどのようなことに気をつければいいですか
老けない体を保つためには、たんぱく質をしっかりと摂ることが大切です。たんぱく質は、基礎代謝や筋肉など体を構成する多くの要素に必要不可欠です。毎食たんぱく質を摂れる、お肉やお魚を中心とした食事を心がけましょう。
肌のハリを保つコラーゲンも、たんぱく質の一種です。肌の健康のためにもたんぱく質は必要です。
たんぱく質をしっかり消化吸収するためには、よく噛んで食べることが大切です。唾液の分泌は胃液の分泌と関係しており、消化をスムーズにします。
五感を使って食事を楽しむと、唾液がしっかりと分泌されます。食べ物の見た目や香り、味、食感などをしっかり味わい、楽しみながら食べましょう。年齢を重ねると胃腸機能の低下により、少食になる女性は多いですが、体は食べるものからできていると普段から意識し、楽しんで食事ができるといいですね。
病気になりにくい若々しい体のためには、体温を上げることも大切です。昔から「冷えは女性の万病の元」と言われるように、体の冷えはさまざまな不調を引き起こす原因となります。
体を冷やさないようにするには、
・冷たいものを控え、体を温める食事を心がける
・適度な筋肉をつけて、基礎代謝を上げる
・十分な睡眠時間を取る
などに気をつけて、ホルモンバランスを整えることが重要です。
Q.「体の内側の老化のサイン」を健康診断や検診で見つけることはできますか
健康診断では「身長」の変化に注目するといいでしょう。
女性は、50歳頃から女性ホルモンの低下とともに、骨密度が低下して身長が縮むことがあります。身長は筋力の低下などでも1cm程度は変化しますが、2cmを超える身長低下は骨密度低下により、腰椎に圧迫骨折が起こっている可能性もあります。
「骨折をしたら自分でも分かるだろう」と思われるかもしれませんが、圧迫骨折は自覚症状に乏しく、気づかないうちに骨折していたというケースも少なくありません。
また、乳がん検診を長く行っている当院では、痛みなどの不調がない方にも骨粗しょう症の検査をお勧めしています。検査によって骨密度が減少していることや、腰椎圧迫骨折を起こしていることが判明することも少なくありません。
健康診断で身長の変化をチェックするとともに、骨粗しょう症の検査も受けるようにしましょう。
取材/文:山名美穂
編集:サンキュ!編集部