脳梗塞の前兆にはどんなものがある?「一時的なもの」と油断するのはNG!
2025/02/06
発見や治療が遅れると、重大な後遺症を引き起こし得る脳梗塞。一体どのような病気なのでしょうか。
脳梗塞が起こるメカニズムや前兆となる症状などについて、糖尿病・総合内科・甲状腺専門医である、たいや内科クリニックの加藤大也院長に聞きました。
Q.脳梗塞とはどのような病気ですか
脳梗塞とは、脳の血管が詰まることで血流が途絶え、その先の脳組織に酸素や栄養が十分に供給されず、脳の神経細胞がダメージを受ける病気です。
脳梗塞は、大きく3つのタイプに分けられます。 高血圧や動脈硬化が原因となって血管が狭くなり、そこに血栓ができて血流を遮断する「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓でできた血栓が脳の血管に流れて詰まる「心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)」、そして脳の深部にある細い血管が詰まり、小さな脳梗塞ができる「ラクナ梗塞」です。
特にラクナ梗塞は、長年の高血圧が原因で発症しやすいとされています。 全てのタイプに共通して、早期発見と適切な治療が回復の鍵となります。また、高血圧や糖尿病、脂質異常症がある場合は、定期的に医師の診察を受けて治療を継続することが重要です。
Q.脳梗塞になりやすい人の特徴にはどのようなものがありますか
脳梗塞になりやすい人の特徴として、いくつかのリスク因子が挙げられます。
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、動脈硬化を促進して脳梗塞のリスクを高めます。また、喫煙や過度の飲酒(1日アルコール60g以上、例: 日本酒約2.5合以上)、睡眠不足、強いストレス、運動不足も脳梗塞のリスクを高める要因となります。
さらに、心房細動などの不整脈では血栓が形成されやすくなり、心原性脳塞栓症に代表される塞栓性脳梗塞のリスクを特に高めます。
これらのリスク因子を把握し、早期に対策を講じることが重要です。
Q.脳梗塞の前兆や自覚症状にはどのようなものがありますか
脳梗塞の前兆や自覚症状としては、「一過性脳虚血発作(TIA)」が知られています。これは、短時間で症状が改善する一方で、重大な脳梗塞の前触れとなる可能性があります。
具体的な症状としては、片側の手や足が動かしにくくなる、顔の片側がゆがむ、片目が見えにくくなる、話そうとしてもうまく言葉が出ない、ろれつが回らないといった症状が特徴です。
これらの症状が一時的でも現れた場合、速やかに脳卒中専門医のいる医療機関を受診し、脳梗塞発症リスクの評価を受けることが重要です。
Q.脳梗塞を予防することはできますか
適切な生活習慣の改善と危険因子の管理が、脳梗塞の予防には重要です。危険因子である高血圧、糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患を管理し、血圧、血糖値、コレステロール値を適切な範囲に保つことが大切です。
また、バランスの取れた食事(野菜や魚を中心とした和食)を心がけ、1日30分程度のウォーキングや軽いジョギングを週5日以上行うことが理想的です。また、禁煙し、お酒も飲みすぎないようにしましょう。
こうした生活習慣が、脳梗塞を予防することにつながります。さらに、心房細動などのリスクがある場合には、医師の指導のもとで抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)を服用することも有効です。
Q.脳梗塞を治療することはできますか
脳梗塞の治療は、発症後の早期対応が極めて重要です。脳梗塞では発症から4時間半以内で、脳出血がないと診断された場合に、動脈に詰まった血栓を薬で溶かす「t-PA(血栓溶解療法)」の適応となる可能性があります。ただし、年齢や既往歴などにより適応外となる場合もあるため、医師の判断が必要です。
さらに、太い血管が詰まった場合には、カテーテルを使って血栓を取り除く「血栓回収療法」が行われることもあります。また再発を防ぐために、血栓ができにくくする薬を使います。
抗血小板薬(血小板の働きを抑えて血管の詰まりを防ぐ薬)は、アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞の予防に使われます。一方で、心房細動などが原因で心臓に血栓ができやすい人は、抗凝固薬が使われます。その後、リハビリテーションを通じて機能の回復を目指します。また、治療を受けるタイミングが早いほど、後遺症の軽減や、日常生活への早期復帰の可能性が高まります。
取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部